がんに関わる要因

 がんに関わる要因として、「年齢」「喫煙」「肥満」「飲酒」「食生活」のほか、「がん家系」についてもお話をお伺いしました。

 

 

インタビュー:弘前大学大学院医学研究科 社会医学講座 教授 中路 重之 (2010/12/10)

 

 

インタビュー要約

 食事調査で塩分の量を調べるのですが、青森の今の食塩の摂取量は全国レベルに近くなっています。少し全国平均より高いぐらいだと思います。ただし、私は長崎の出身ですが、青森の味噌汁を飲んだりすると、まだ少し塩分が高いような気がします。もう少し意識的に減塩運動を進めた方がいいと思います。

 塩分と一番関係あるのが胃がんです。日本の胃がんが減ってきたのは日本人の塩分摂取量が減ってきたからであろうと言われています。

 それからアメリカは、今は日本の5分の1ぐらいしか胃がんの人はいないのですが、昔はすごく多かったのです。1950年から60年代にアメリカの胃がんがガクンと減りました。それは何故かと言いますと、冷蔵庫が出てきまして、それが日本よりも早かった。冷蔵庫のおかげで、ストックしておく、貯蔵しておくのに塩分を使わなくても良くなりました。冷蔵庫の普及により、食塩摂取量がガクンと減って胃がんも減ったのではないかと言われており、日本もそれを追随しているのだろうと思われます。

 

 そういうふうに貯蔵方法が変わったにも関わらず、例えば、おいしいからと言って漬け物などで塩分を摂りすぎたり、脂肪を多く摂りすぎたりすると、やはり危険になるわけです。よく言いますが、旨いものは毒の面もあります。脂肪や塩分はすごくおいしいです。おいしいものには、やはり注意しなくてはいけないということが言えると思います。

 

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インタビュー:弘前大学大学院医学研究科 社会医学講座 教授 中路 重之 (2010/12/10)

 

 

インタビュー要約

 運動は肥満と関係します。肥満の原因は何かと聞かれれば運動不足がまず挙げられ、青森の場合は雪が降るということ、寒いという点で不利なところがあります。あとは食べ過ぎで、この2つのバランスで肥満というのが出てきます。

 運動することによって新陳代謝がよくなり、細胞が活性化されることによって発がんが抑えられますので、運動不足というのは肥満を通してがんになりやすくなるということになります。

 

 メタボリック対策ががん対策につながっているということは非常に重要な視点です。がんを、脳卒中とか心筋梗塞、ああいう血管病と全く分けて考えるのではなくて、いわゆる肥満があって、糖尿病があって、コレステロール値が悪くて、そして血圧が高い、そういった中で動脈硬化がどんどん進んでくる、同じ60歳でも早く年を取ってしまう。その結果、結局は脳卒中になったり、がんができたり、そして心筋梗塞にもなるという、こういうふうに考えていけば非常に簡単で分かりやすいと思います。

 

インタビュー:弘前大学大学院医学研究科 社会医学講座 教授 中路 重之 (2010/12/10)

 

 

インタビュー要約

 一般の方の意識の中には、親がAというがんになったら自分も必ずAというがんになるという、宿命づけられたものがあるとお考えをお持ちの方がおられますが、そういったことはほとんどありません。確かに、ごく一部の家系の中には非常に根強く遺伝するがんがあるのですが、家系によるがんはほとんどないと言っていいです。

 その証拠に、アメリカのハワイには昔から日本人がずっと移住しています。その人達をずっと追跡していきますと2世、3世、4世となるにつれて、移住者と元々ハワイに住んでいた人達とは、がんのでき方がほとんど同じになってしまうのです。これを裏返せば、いかにがんというものが生活習慣に影響されているかということだと思います。

 

インタビュー:弘前大学大学院医学研究科 社会医学講座 教授 中路 重之 (2010/12/10)

 

 

インタビュー要約

 がんの原因として圧倒的なものは年齢です。次に挙げるのはタバコです。タバコほどがんに影響をもつものはありません。その次が、肥満や飲酒、塩分の摂りすぎなどがあります。また、ヒトパピローマウイルスを持っていると子宮頸がんになりやすい、肝炎ウイルスを持っていると肝臓がんになりやすい、アスベスト(石綿)を吸い込むと肺がんとか悪性中皮腫になりやすい、 ヘリコバクター・ピロリ 菌を持っていると胃がんができやすくなるなどが明らかになっているところです。

 

 昔、がんは成人病と言われていました。今は生活習慣病と言いますが、成人病というのは年齢を重ねるに従って病気が増えてくるという意味を持っています。毎年1年ずつ歳を取っていきますので、年齢というものはなかなか目標になりません。しかし、生活習慣はよくすることによってがんに罹る確率が低くなる。生活習慣が悪いと若い年齢でがんに罹ってしまう確率が高くなる。生活習慣は良くも悪しくも自分で何とかできるものである、だから生活習慣病という呼び名が出てきました。目標になるということです。

 生活習慣を良くするということはすごく大切なことです。長野県の方が青森県よりも圧倒的にがんの発生率、 死亡率 が低いのですが、これも結局は生活習慣の差です。喫煙率、肥満者の割合、それからお酒をたくさん飲む人の割合、こういったもの全て長野県の方が青森県よりも良いのです。

 

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インタビュー:弘前大学大学院医学研究科 社会医学講座 教授 中路 重之 (2010/12/10)

 

 

インタビュー要約

 お酒とがんとの因果関係については、実はよく分かっていませんが、ウォッカやウイスキーなどの強いお酒を飲むと食道がんなどが明らかに増えてくるということははっきりしています。それからタバコとお酒を一緒にやりますと、足された分以上にがんを発生させるということも分かっています。

 

 さて、量の問題について、欧米には、お酒は日本酒の換算で3合から2合くらい飲んだ方が一番がんができにくいというデータがあります。これをもって、少しのお酒はがんにいいのではないかという話になると思われるかもしれませんが、実は日本にはそういうデータがありません。日本人は体も小さいし、お酒に対する耐性、アルコールを分解する酵素の力の弱い人が多いので、この欧米のデータは日本人には通用しません。

 ただし、日本酒で毎日平均1合のお酒は何の問題もないと言われています。2合というのがなかなか難しくて、3合以上はもう明らかに悪いと言われていますが、どの辺が最適な量なのかというのはまだよく分かりません。例えば、1合で何ともなく、それがストレスの解消にもなるのであれば飲んでもいいと思います。やはり2合から3合のところを早く結論を出したいと思っています。

 また、お酒を飲める人とお酒を飲めない人を別々に分けてデータを出さないと、やはり正しい結論が出ないのではないかと思います。