胃がん(発症時:44歳)

収録時:57歳

男性

総時間:9'26"

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目次

00'03" がんとわかったきっかけ
01'21" がんと知った時の気持ち
02'29" 治療(手術や入院)について
02'53" 家族への思い・家族の思い
03'23" 支えとなったもの
04'30" 治療(手術や入院)について
05'49" 患者会、リレー・フォー・ライフ
07'21" がんを体験したからこそ伝えたい思い~メッセージ~


00'03" がんとわかったきっかけ

 

――医療機関にかかられて、ご自身の病気を発見されたと、その辺のいきさつから、お話いただけますか?

 

2003年なんですけど、私自身は体調は全然、すこぶる状態も良くてですね。かみさんがちょっと体調が、あまり優れないということで、かみさん、病院とか行かない人だったもので、一緒に付き合って、ついでに調べたら私が、ちょっとこう、悪いものが見つかったというのが。発端です。胃がんですね。

 

――胃の検診とかそういうのは普段は受けられていなかったんでしょうか?

 

前の年も受けてましたけども、前の年は全然そういうのはなくてですね、2年に1回くらいは検査受けていたんです。その年は行く予定じゃなかったんですけど、そこで検査しましたら、バリウムではちょっと影が出る位でわからないんですけどね、それで、胃潰瘍じゃないかと。それで一応、1週間後に検査しに行って、その結果を聞きに行ったら、検査の結果あまり芳しくないと。「今すぐ紹介状書くから」ということで、内視鏡科に行ったのがスタートですね。

 

――早期という形で発見されたわけですか?

 

まず、症状がほとんどなかったのと、別に痩せてもきてなかったし、体力的にもそんな気にするほどじゃなかったもんでね。だから、たまたま早期で見つかったんですね。



01'21" がんと知った時の気持ち

 

――検査結果を、お医者さんから告げられた時に、ご自身はきちっと受け止められましたでしょうか?

 

いやあ、それは現実を受け入れるには1週間位かかりましたけど。まずもう、本当にもう「まさか」だったんですよね。
 まずがんということはすぐ言われました。やっぱり、もう「頭が真っ白」って、初めてその時体験しました。「ああ、これが頭が真っ白なんだなあ」って思いましたね。

 

――治療方針が決まったのは?

 

当初、もしかすると、口から入れるカメラ飲んで、くりっ、と取れるぐらいかな、と思ってたんだけど、見たら深くは入っていないけど、広がってる、と。だから、外科手術になります、ということで、外科で診察して、そしたら、もう、混んでいると。入院も手術も。「ちょっと待ってください」連絡いくまで。と言われまして。

 

――それまでの期間は不安だったでしょうね。

 

不安で、不安で。当時若かったから、若いっていうことは、がんというのは、素人考えだけど、1か月位でどんどん進むんじゃないか、とか。そんなことも考えましたしね。



02'29" 治療(手術や入院)について

 

――結局はどういう治療になったんですか?

 

全身麻酔で、腹腔鏡という手術で、胃を3分の2切除しました。

 

――術後のケアというのは?

 

自分の場合は、本当にもう、放射線とか、抗がん剤治療とかは一切やらなくてもいい、と。「本当に手術したのかな」って思うくらい、手術した次の日の朝、回復室から、自分の病室まで自分で歩いて行けたんですよ。


02'53" 家族への思い・家族の思い

 

――がんだ、っていうのがはっきりわかった時に、ご家族はどういう反応でございました?

 

いやあ、そりゃあもう、うちのかみさんはもう、びっくりしましてですね。ただ、去年亡くなったうちの父親も、27年前に胃がん手術して、母親も、もうはるか昔ですね、乳がんもやってますので。それでも2人生きてて元気だったもので、心配ないよ、ってことで、親は意外と平然としてましたね。


03'23" 支えとなったもの

 

――ご自身の支えになったものというのは何ですか?

 

ああ、それはやっぱり家族ですね。あと周り、友達とか。『サバイバー』って、がんの経験者で元気にしてる人と、やっぱり繋がることで、ものすごいエネルギーをいただきます。普通の、確かに、励ましてくれるのは嬉しいんですけど、やっぱり、同情ですね。そこを超えて、がん経験者の人、『サバイバー』の人達っていうのは、同じく苦しむって書く、同苦できるところまでいくから、その人達の存在が一番助けられましたね。

 

――ご自身は『リレー・フォー・ライフ・ジャパン』の活動されているんですが、活動を通して、皆さんに知って欲しいということは何ですか?

 

やっぱり、一番は、検査ですね。どんな抗がん剤よりも、やっぱり、早期発見に勝るものはないから、だからこういう、常に、がんには2人に1人ががんになるんですよ、3人に1人はがんで亡くなるんですよ、っていう事実を、もっともっとこう、広めていかなきゃ。



04'30" 治療(手術や入院)について

 

――手術後は、がんの薬とかそういうのはお飲みにならなかった。

 

ええ。手術をしてですね、胃袋を3分の2取りました。周りにあるリンパ節っていうのも取るんですよ。それでリンパに転移をしていると、抗がん剤とか放射線とかの治療がまた始まりますよ、と。そうなると、私、料理の仕事をしてますけど、いろんな味覚障害とかですね、そういう副作用が出てきますよ、と言われていたんですよ、手術から1週間経ちまして、「全然、転移はなかった」と。「もう1年位遅れれば、もうやばかったかな」って先生は言われましたけどね。だから、あとは薬関係の治療は一切なしです。年に2回、当初は胃カメラの検査に来てください、と。今は年に1回になりました。

 

――その手術以降は、普通の生活を取り戻せた、と言えるわけですね。

 

はい。まるっきり普通の生活ですね。

 

――以後のご自身で変わったところはない、という?

 

そりゃあ、やっぱりね、「死」というものを思い知らされて、そこでまた、こう、助けられたということは、もう、なんか、深くなりますよ、人生が。失ったものもあるけど、得たものも多々ありますね。


05'49" 患者会、リレー・フォー・ライフ

 

――大勢の仲間の方との語らいから、今後はどういった活動をしていきたいというふうに思っておられますか?

 

とにかく『リレー・フォー・ライフ』っていうのは、長くやっていきたいんですよね。お店をやらさせていただいているじゃないですか。がんに携わった方とかそのご家族の方とかが、うちのお店にひょいっと来ることがあるんですけど、やっぱり落ち込んでいたりして。そこで「自分も胃がんを乗り越えてきた」って、「こうやって元気でやってる」って言えば、ものすごく喜ぶんですよ。ええ。ものすごいね、顔色が今まで暗かったのが、急に…なんかこう、希望、までいかないけど、持ち始めたりしてね。「ああ、自分の使命っていうのは、これになるのかなあ」って。もっともっと、じゃあ、そういう組織的なものをやりたいな、っていう時に、『リレー・フォー・ライフ・ジャパン』の話が、3年前にちょうど来ましてですね。「ぜひとも、サバイバーであるあなたにお願いしたい」ということで。当初、人の上に立ってやるの苦手だったんですけどね。まあでも、がんで悩んでる人に何かこう助けていけるんだったら、じゃあやろう、ということで、やらせていただきました。
 僕自身ががんになった時に、がんを乗り越えて元気に働いてる人とか、生き生きとしている人をみれば、やっぱり、一番勇気づけられましたしね。で、それが、誰かいないかな、同じ胃がんで、っていったら、うちの親父だったんですよね。家にいるじゃないか、って思ったりしてね。もうそれで、すごく励まされて。じゃあ、それを今度は、自分が提供していく方になろうと思ったんですけども。


07'21" がんを体験したからこそ伝えたい思い~メッセージ~

 

――そういうご病気を持たれた方、すごい孤独感を持つと?そういう方々にはどんな言葉をかけてさしあげたいですか?

 

やっぱり青森っていう土地柄なのか、どうしてもこの、がん=(イコール)死。「隠す」っていう風潮が、まだまだあるんです。特に女性の場合はね、婦人科系のがんとか、乳がんとかありますのでね。でも、それを誰にも言わずにこっそり手術して、悶々と再発に怯えている人生を送っている人も随分いますので。もうちょっと共有し合う部分があった方がいいんじゃないかなって。

 

――経済的な問題ですとか、大分不安に思われている方っていうのは沢山いらっしゃると思うんですよね。

 

そうですよね。いろんな高額医療の控除のこととかでもね、やっぱりみなさん、知らない人が多いですから。抗がん剤っていうのは月に8万とか、かかっちゃう人とかもいますからねそういう場合でも、数か月過ぎると半分になるんだよ、とか、そういうシステムも何もわからない人も随分いますので。

 

――相談はどういう所に行ったらいいのかわからない、という方が逆に多いと思うんですが、そういう場合には、どういうふうにしたらいいか、

 

今は、がん相談室。そこに行けば何でも説明してくれます。
誰でも行けます、はい。当事者じゃなくても、経済的な相談でもいくらでも行けます。

 

――がんを体験された今だからこそ、多くの人に伝えたい、ということは何でしょう?

 

そうですね。とにかく検診ですよね、うん。まめな検診。あとそれから、もっと深く突き進めていけば、がんになることも、きっとその、あなた本人にとって意味があることなんだよ…そう思えば気持ちが前向きになりますよ。だから、決して病気に負けるんじゃなくして、病気になることで希望を失うことが、一番だめなんではないかと思います。
 『リレー・フォー・ライフ』に皆さん、来ていただきたいということは言いたい。