乳がん(発症時:38歳)

収録時:40歳

女性

総時間:11'20"

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目次

00'03" がんとわかったきっかけ
02'37" がんと知った時の気持ち
03'48" 治療(手術や入院)について
06'36" 支えとなったもの
07'56" 職場や周囲の人との関わり
09'14" 患者会、リレー・フォー・ライフ
10'28" がんを体験したからこそ伝えたい思い~メッセージ~


00'03" がんとわかったきっかけ

 

――医療機関を受診したきっかけから、お話いただけます?

 

私はずっと検診とかも受けてたわけじゃなくて、しこりもだいぶ前から、もう自分で触って気付いてたんですけど放っておいて、痛みが出始めて初めて受診しました。
受診してその日は検査だけして。後日、病理の組織採る検査をしたんですよ、その場で。その結果が出る前に「次来る時は家族の人と来て下さい」って、こう言われたので、ああ、って。もう覚悟ができた感じになりました。しこりがあったのはもうずっと気が付いてたんですよ。最初本当に、触った時はちっちゃくて、あれ?っていうぐらいだったのに、急に大きくなったんですね、急激に。でもそれでも、ずっと放っておいて。夜中に眼覚めてしまう程の痛みで、初めて受診したんですよ。でもその間ってだいたい半年以上はあったんですね。で、その間ずっとこう、不安があったんですよ、どっかで。「もしかして、もしかして」って。

 

――自分でその、「もしかして、もしかして」と思いながらも、ずっと検査しなかったわけですよね。

 

それが、私、間違っていたところがあって。まず1つは「絶対自分は、私に限ってがんになる筈がない」って思っていたんですよ。で、2つ目は、今いろいろインターネットとか本とか情報がいっぱいあるじゃないですか。それで、中途半端な知識で、例えば、「乳がんになりやすい人」っていう項目あるじゃないですか。「初潮が早い」とか「出産経験がない」とか。そういうのに全部当てはまらなかったんですよ。それで「まさか私に限って」って。で、もう1つが、このぐらいで病院に行って先生に診てもらうなんて、ちょっとこう「申し訳ないかな、恥ずかしいかな」って思うところがあって。このぐらいで具合悪いっていうなんて「ちょっと根性ないな」みたいな感じがあって。

 

――結局検診を受けて、組織細胞診もやって。その時に先生は何とおっしゃいました。

 

やっぱりもうストレートに、まずその病名と、あと私の場合は、ステージも進んでいるということで、結局ステージ3Aだったんですけど、全摘、全部切ってしまわないといけない、って、抗がん剤も避けられない、って、とにかく、治療のことを、どっと言われた感じで。初期ではない、と。簡単な状態ではない、ということを、もう淡々と告げられた感じで。


02'37" がんと知った時の気持ち

 

――その時のお気持ちを。

 

かえってその時は、ショックとか悲壮感とか悲しさとかより、ずっと長い間不安抱えていたので、はっきりこう、これから何をやるべきか、かえってこうガッツが湧いたというか「これから、じゃあ病気に立ち向かっていこう」という、気持ちの前向きな感じが出てきて、そんなに大きいショックっていうのはなかったです。その時は。

 

――ご家族にお話をしなければいけないですよね。その時はどうでした。

 

主人は一緒に、先生の話を聞いてもらったんですけど、主人にも、私しこりがあることも、検査受けたっていうことも全然言ってなかったんですよ。で、突然、電話だったんですけど「病院に一緒に来てもらえる?」って。実を言うと、って。ていう話をして初めてその時に主人に伝えたんですね。で、やっぱり主人はショック受けていたけど、私も冷静だったし、冷静に受け止めてくれましたね。


03'48" 治療(手術や入院)について

 

――その後の治療方針とか、それはどういうふうな。

 

まず先生の方から、ここの病院でいいかどうか、セカンドオピニオンを求めるか、っていうところから始まって。で、もうその時はやっぱり、病気に立ち向かう元気はあるけど、冷静に自分の病気とか病状とか、その詳しいことを考える、冷静に考える頭が、その時は働いてないんですよね。だから、セカンドオピニオンどうするとか、治療方針もどうするとか聞かれても、説明されても、「もうお任せします、先生にもうお任せします」っていう、それだけで。私はそれに与えられるものに関しては頑張って何でもやりますよ、って。

 

――どういう治療経過を辿ったんですか。

 

まず、手術の前に化学療法、2種類の化学療法を全部で8回やりました。で、その後に全摘手術、右の胸なんですけど、全部摘出して、リンパも転移していたのでリンパも取って、その後にずっとホルモン療法。今も続けてるんですけど、5年から10年続けるということで。それで進めようっていうことだったんですけど、手術終わって1か月2か月、すぐ次の検査かな、その時で、もう腫瘍マーカーという数値が少しずつ、また上がり始めて。で、そこで放射線治療も追加しようということで、急遽放射線も。

 

――その治療の中で、特にご自身が辛いと思われたことは。

 

今抗がん剤、手術、ホルモン療法、放射線ってやってるんですけど、実際今、本当に辛いなと思ったのは、放射線とホルモン療法、今やってるホルモン療法が本当に辛いって思います。抗がん剤とかって、こう、派手なアクションがあるんですよ。髪の毛が抜けるとか、激しい吐き気とか、すごく強い、目に見えて大変だって周りもわかるし、本人もわかることなんですよ。でも、放射線とかホルモン療法って、大きい派手なアクションがない副作用なんですね。地味にずっと続いていくという感じで。放射線は、週5回毎日、25日間通う治療で。ホルモン療法は、3カ月に1回の注射と毎日の飲み薬なんですけど、生理も止まってしまうし、女性としての機能ももう止まってしまう。無理に止めてしまう。で、そのことによって気持ちのバランスも崩れてくるし、それですごく精神的に苦しむっていう感じですね。


06'36" 支えとなったもの

 

――治療を続けていらっしゃるわけですけども、支えてくれたものっていうのは何でしょう。

 

やっぱり人に話すことだったんですよ。私、最初病気がわかった時も治療中も、その抗がん剤の治療中と手術中も、人には「大したことないよ」って、「全然平気だよ」っていうことで、本当に仲いい友達には病気だっていうことは話したんですけど、周りにはもう内緒にして。とにかく自分で抱えてたんですよ。家族が周りで悲しんでるし、一生懸命やってくれてるのもわかるから、辛いとか痛いとか苦しいとかっていうのも敢えて話さないようにして。で、ホルモン療法とかって、やっぱり長いじゃないですか。手術、髪の毛が抜けて痩せてしまって、胸も無くなったのに、今でも治ってない状態じゃないですか。その時気持ちが崩れ始めて、1年半、2年近く経って初めて患者会に入って、同じ病気抱える人たちと、同じ悩みを聞いたり話したりすることで、初めてこう、前向きに、今、こう治療、また頑張ろう、と思えるようになりましたね。


07'56" 職場や周囲の人との関わり

 

――お仕事はされてたんですか。

 

最初仕事はずっとしてたんですけど、病気がわかった時点で、休職という形で1回お休みして。で、手術が終わって2週間ぐらいですぐ仕事復帰したんですね。でもその後、またすぐ1か月2か月で、放射線始まるんで、また休職して。またすぐ仕事復帰したんですけど、やっぱり体力とか、身体とか気持ちって、前と違うんですよ。疲れやすかったり、家のこともやらなきゃいけないし、って。それでこう、いっぱいいっぱいになってしまって、結局退職っていう形で辞めてしまって。

 

――職場の理解というのはありました?

 

ありました。職場は本当に理解してくれて、本当にみんなが支えてくれたんですよ、髪の毛なくてウィッグ被って行ってる時も、昼休みにご飯も食べれなくて、ずっと横になって休んでるとか、そういうのもみんな本当に温かく見守ってくれたんですよ。で、仕事も時間調節して短くしてもらったりとか、本当に職場の人には恵まれてて、みんなに助けられたという感じでした。


09'14" 患者会、リレー・フォー・ライフ

 

――がんにかかって、気持ちがなんか変わったということはあります?

 

大きく変わったのはやっぱり、治療してる時は、本当の手術とか抗がん剤の時は前向きだったんですよ。でも今、この長く闘病続けてる間に、だんだんそれが弱ってきて、前向きにはなれなくなってきました、私の場合。だんだんだんだん悩むようになってきたし。自分で、「もっと病気のことを調べなきゃ駄目だな」って思って勉強するようにもなったし、患者会にも入るようになったし。
 例えばよく「命助かったんだから胸ないのなんて平気でしょう」とか、「いいじゃない、今元気になったんだからそのぐらい」って、元気な人に言われるのが本当に辛いんですよ。で、それを、同じ病気を経験して同じような経験した人に、本当は辛くないよね、とか、大変だよね、って、こう話すだけでも気持ちが違うし。で、その人たちに「大丈夫だよ」って、「胸なくても今こんなに元気になったじゃん」って言われるのって、やっぱり全然違うんですね。だからやっぱ、患者会とかそういう繋がりって大事だな、って思います。


10'28" がんを体験したからこそ伝えたい思い~メッセージ~

 

――今多くの方々に言いたい、ということは何かございます?

 

誰かに相談すること。自分で抱えてしまわないで、とにかく誰かに話すことは大事だと思います。今テレビとか結構タレントさんでも、病気抱えてる人とかいて、公表したりしてるじゃないですか。で、みんな前向きにすごく立ち向かっていく、みたいな感じで、良い、ポジティブなコメント、こう出してると思うんですけど、そういう人ばっかりじゃないんだ、って。正直に悩んでる、って。苦しい、って。こんなの立ち向かえない、って。こう話すのも大事だし、そういうふうに思うのも全然悪いことではないっていうのを伝えて、伝えたいですね。