乳がん(発症時:44歳)

収録時:51歳

女性

総時間:10'18"

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目次

00'03" がんとわかったきっかけ
01'50" がんと知った時の気持ち
03'23" 職場や周囲の人との関わり
06'06" 支えとなったもの
07'23" がんを体験したからこそ伝えたい思い~メッセージ~


00'03" がんとわかったきっかけ

 

――どんなきっかけでがんを発見することになったんでしょうか。

 

お風呂に入ってた時に、入浴中に3センチぐらいのしこりを見つけまして「あ、これは何だろう」と思って、もしかしたらがんかも知れない、ということで、医療機関の方に受診をし、がんだっていうふうにわかりました。

 

――その時はどんなお気持ちだったんでしょうか。

 

「まさか私ががんになるとは」って、普段からとても元気で風邪なんかひいても1日2日で治ってしまったりとか、大きい病気はまず、したことがないっていう状況でしたので、自分が死に関わるような大きな病気に罹ってしまう、というふうには、想像もついていませんでした。

 

――自覚症状はありましたか。

 

具体的な自覚症状というのは無かったんですけれども、ただやはり、ちょっと疲れやすいということがありまして。いくら寝ても疲れがとれないな、いつまでもずっと疲れが続いている、っていうことがあったことと、生理の時にですね、ちょっと胸が張るような感じで、本当に直前になるまでしこりという形では発見できていなかったので。3センチくらいありましたので、これはおかしいぞ、っていうくらいの大きさだったんですね。職場にも乳がんの方がいらっしゃったので。経験者が。もしかしたらそうかも知れないということはお話しましたし。で、その人が「乳腺の所に行けばいいよ」というお話だったので。


01'50" がんと知った時の気持ち

 

――がんだとわかった時のお気持ちを教えていただけますか。

 

2年前にやっぱり姑が大腸がんで亡くなっておりまして、治療中のこともずっと見ておりましたので「私もああいうふうに、がんになったら死ぬんだな」と思いました。

 

――ご家族にはすぐにお話できましたか。

 

三男と一緒に暮らしていたんですけれども、すぐにはちょっと言えなかったっていうところはありますね。ただ、確定してしばらくしてから「実はお母さんは大変な病気なんだよ」っていうふうに言いましたところ、息子の方は「親がなんか、どうやらなんか変だぞ、おかしいぞ」という様子はわかっていたみたいで、乳がんだということはわかっていたようだったんですね。
自分としては精神的に頼るところがなかったので、息子に言わざるを得ないという精神状態だったんです。もう揺らいでしまって。逆に、そういう親の右往左往する姿を見ていて息子の方が、高校2年生だったんですけれども、非常に冷静で大人のように対応してくれたので、本当に私のことを受け止めてくれて、落ち着くことができたかな、と思ってます。


03'23" 職場や周囲の人との関わり

 

――職場にもその話はされたんでしょうか。

 

私、当時パートで仕事をしていたんですけれども、パートをしながら3人の息子の学費を払っているという状況でしたので、どうしても仕事を続けていかないと、この先暮らしていけないし、それに息子達も、学業を断念せざるを得ないということにもなりかねなかったので、まずはお話をして、仕事を続けるということを選択しました。抗がん剤治療なんですけれども、一回目の時は、しばらくお休みさせていただいて体調を見てたんですけれども、1日目抗がん剤治療、投与されて1日目と2日目くらいまではちょっと苦しくて、全然動けないような状況ではあったんですけれども、3日目くらいからだんだん回復していって、動けないこともない。だったら働けるんじゃないかな、と自分で感じましたので、抗がん剤を入れる日と次の日を休んで、その後は仕事をするという形にしました。私が「こうやりたい」ということだったので、上司の方では気持ちをくみ取ってくださって、私、7時間勤務だったんですけれども、7時間ずっと仕事をし続けるというほどの体力がちょっと無かったので、5時間勤務に変更していただいて、短い時間だけれども、ちゃんと働けるという形にしていただきました。

 

――ご自身の治療をしながらお仕事されている方って、たくさんいらっしゃるんですかね。

 

まだまだ少ないんじゃないかなと思います。私、今『ピアサポート活動』ということで、がんの患者さんのサポートをしていますけど、お話を聞きますと、がんになったときに「もう働けないわ」って言って辞めてしまったりとかっていう方が、非常に多いんですね。「続けられる」っていう、そういう想像ができないと思うんですよ。やっぱり私みたいに「治療しながら仕事をしていけるんだよ」っていうことも、たくさんお伝えしていけると。せっかくお仕事がんばってらっしゃるのに辞める必要はないんだよ、辞めずに続けられるんじゃないかな、と思います。


06'06" 支えとなったもの

 

――不安もたくさんあったと思うんですが、どなたかに相談することはできましたか。

 

抗がん剤治療して、その苦しさであるとか、髪の毛が抜けてしまったりとか、あと、がんであるということで死んでしまうんじゃないかという気持ちに囚われてしまうんですよね。そういった気持ちっていうのを、やっぱり共有できないんですよね。で、お友達には打ち明けられずにいて、同じがん患者さん、その方に打ち明けながら、アドバイスをもらいながら「大丈夫だよ」って。「元気になれるからね」っていうふうに励ましていただきながら治療を続けていました。

 

――ご家族の支えは。

 

すぐ傍にいる三男がですね、気持ちが揺らいでしまう私のことを本当に支えてくれて。それに、離れて暮らしている息子、長男なんですけど、「乳がんってね」って、今はね、治療法があって一番がんの中では治りやすいがんなんだよ、ということも教えてくれましたし、そういった形で知識としてサポートもしてくれました。


07'23" がんを体験したからこそ伝えたい思い~メッセージ~

 

――がんを体験されて今だから言えること、どうでしょうか。

 

がんになりましたけれども、こうやって元気になりまして仕事もして暮らしております。なので、ぜひですね、がんを知らない方にはがんというのは確かに亡くなる方もいらっしゃいます。そういう方の報道が非常に多いと思うんですけれども、本当は元気になってこうやって、私のように仕事をしながら暮らしている人もたくさんいるということは知って欲しいな、と思います。
 がんになったからといって悪いことばっかりじゃないな、というのがありまして。がんを通してたくさんの仲間と出会うことができました。お医者さんであるとか看護師さんであるとか薬剤師さんであるとか、あと、がん患者さん、いろんながんの部位の方がいらっしゃるんですけど、そういった方と出会うこともできましたし。これはがんにならなければ出会えなかった「出会い」だよね、っていうことで、本当に、この出会いにはとても感謝しています。
 がんになっても仕事をしながら治療もできますし、諦めずに生きていくことができますので、ぜひ、諦めずにいろんな支援を受けながら治療をしていっていただければなと思います。
 仕事をする上では事業所というかですね、やっぱり会社側の方では理解をしていただきたいと思います。私は会社に対して仕事がしたいです、それから時間を短くしてくださいということは自分から言うことができたんですね。だけど、実は言えずにいる人がたくさんいまして、どうしても「会社に迷惑をかけてしまうんじゃないか」とか。そういうふうに思ってしまって、仕事を辞めてしまうとかいうことがありますので、せっかく働いてる方の能力がありますので、それを生かすためにも治療中とかのサポートを会社側の方でしていただけるといいかな、と思います。
がん自体が本当に普通の病気と同じなんだ、って皆さんに思っていただけると一番いいのかな、と思いますね。どうしても、がんだと死に直結すると皆さんが思ってしまいますので、いろんな病気が世の中にはたくさんあると思うんですけど、その中の一部でしかないと思っていただけると特別視をしなくなるんじゃないかな、と思います。