胃がん(発症時:55歳)

収録時:67歳

女性

総時間:8'53"

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目次

00'03" がんとわかったきっかけ
01'15" がんと知った時の気持ち
02'05" 治療(手術や入院)について
06'22" 職場や周囲の人との関わり
07'21" 患者会、リレー・フォー・ライフ
08'03" がんを体験したからこそ伝えたい思い~メッセージ~


00'03" がんとわかったきっかけ

 

――がんだとわかったのは?

 

12年前の職場の定期検診。それで毎年職場では定期検診は受けていたんですけども、それまではなんにもなかったんですけど、その、見つかった時に初めて、なんか隆起物がある、っていうことで、精査が必要っていう、検診結果の用紙が来たのでね、これはちょっと、普通の胃潰瘍とは違うのかな、って。そう思って、それでまず、発見できたということですね。

 

――何のがんなんですか。

 

胃がんなんですよ。

 

――それまで、自覚症状みたいなものはあったんですか?

 

私は若い頃に、十二指腸潰瘍とか、そういうのも患っていたので、胃の調子は普段から、ちょっとこう、心配事があったりとか、そういった時には、ちょっと胃が痛いな、とかそういうのは感じていたんですけども。でも、何回も定期検診はしていて、バリウム飲んでいても、なんの結果もなかったのでね。安心していたんですけど。



01'15" がんと知った時の気持ち

 

――がんだとわかった時、どんなお気持ちでした?

 

その頃はまだ、がん、といったら、イコール死、っていうイメージがもう、頭にきますよね。で、うちの中もちょっといろんなアクシデントがあって、解決しなきゃなんない問題がいろいろあったので、ああ、これ、死んでいられないな、っていうことがまず、頭にきましたね。

最寄りの先生のところに、検診の結果がこういうふうにきました、って言ったら、胃の検査したんですけど。「やっぱり薬だけでは治らない、手術が必要だな」って言われたので、たぶん悪性じゃないかな、って。



02'05" 治療(手術や入院)について

 

――がんだとわかって、そのあと病院側とはどういうお話になったんでしょうか。

 

紹介状を持って、即入院という。準備して、事前の検査やいろいろありますよね。だいたいレベルがどれくらいだとかっていう、いろんなインフォームドコンセントっていうんですか、主治医の先生からいろいろ話があったり、手術当日の前日とかね、こういうふうに治療していきますよ、治療のプランというのをいろいろ説明されて。その時は、始めのうちはね、しっかり、ちゃんと聞いておこうと思って、そばだてて、一字一句聞き逃さないように、と思ってしていたんですけど、だんだんだんだん恐ろしくなってきてね。ただただもう、今ここにいるみたいに体が震えて…震えて、全身が震えて汗だくになってね。最後の方には先生が何言っているか、ちょっと覚えてないくらいの恐怖感というかな。そういう感じでしたね。

一番最初は進行がんの初期っていうことで、ステージが1とか、あと、2くらいまでだったのかな。でも、手術して、その病理組織の結果を見ると、ステージが上がってステージが4までいったんですよ。初期だった筈が、ステージ4といえば、抗がん剤を使える最後のレベル、それでも、リンパ節とか周りに転移しそうな、していそうなのは全部取り除いたから大丈夫ですよ、って言われて。

 

――手術当日はいかがでした。

 

もう、まな板の鯉で。成るようにしか成らないんじゃないか、って。自分の身を、先生に信頼して任せよう、っていう安心感は、ちょっとそこでは得られてきたような気がします。恐怖感よりも。先の事を考えていてもしょうがないしね。今あるこの現実を、一つ一つクリアしていかなきゃなんないな、っていう感じで。

 

――手術では結構、切除されたんですか。

 

全摘ではないんですよ。4分の1はまだ残っていると。

 

――手術の後も入院はしばらく続いたんですよね。

 

その手術そのものよりも、そのあとの方が、私、すごく苦しんだんですよ。手術はまず、傷が治れば、傷の痛みさえ治れば、まずそれでいいんだけども、そのあとの抗がん剤。抗がん剤の使用で、2度、一度退院したのをまた再入院したり。
 まず、もちろん吐き気とか、脱力感。皮膚という皮膚、手のひらでも、内側だけ剥けるんですよ。口内炎ももちろんできて、ものも食べられないし。で、足も同じように、足の裏、剥けたりしてね。もちろん髪の毛、全部抜けますし。

 

――抗がん剤の治療と言うのは入院中だけ。

 

そうそう、入院中だけ。抗がん剤っていうのが、すごくこう、やっぱりイメージが、情報、事前に持っているイメージからして、すごく苦しい、とかね、いろんな症状も出る、っていうのね、そういうのがあったから「この先生に私の命、委ねても大丈夫かな」とか。それまでは、信頼しきって手術してもらったはずなのに。なんか今度、抗がん剤を入れられる、ということにすごく恐怖を持ちましたね。
まず一端、退院したんだけども、痛みと吐き気が家に帰ってからも、何度か発作的な感じで起きて、救急に何回も来たんですよ。また、再度入院したっていうのが…。食べ物、食べられなかったし。吐くしね。



06'22" 職場や周囲の人との関わり

 

――治療のあとも、お仕事はずっと続けられていたんですか。

休業補償が三か月とかってあるんですけども、ある程度、自分で体力つけて、これなら周りの人たちにも職員にもあまり迷惑かけないでできそうだな、というところまで、余分に一ヵ月休んで四か月。で、そこからまた復帰しましたね。

 

――職場の方のサポートはどうでしたか。

 

ええ。もう、みんなやっぱり、気遣ってもらって。ちょっと体力的にね、大変だから、退職する3年くらい前は、デスクワークの方に、ちょっと、就かせてもらって。

 

――お仕事は最後まで辞めずに続けられたと。

 

はい。定年まで勤めました。でも、それもやっぱりね、職場の人たちが配慮してくださったおかげと、まあ、家族の協力もあっただろうしね。



07'21" 患者会、リレー・フォー・ライフ

 

――『よろこびの会』って、そういう会があるんですね。

 

その会の集まりに行くと。みんな卑屈なというか、そんな感じじゃなく、大声で笑ったりとかね、「ああだよね、こうだよね」っていう。だから「ええ?これが、がんやった人たちの集まりかな」と思うくらい、活気ある会なんですよね。自分と同じ経験をした人がね、たくさんいて、こんなに生き生きと前向きに生きているっていう、そういうのでね、勇気をもらえる場所なんですよ。もう、男女の差別も、それこそ、年寄りも若いのもないし。


08'03" がんを体験したからこそ伝えたい思い~メッセージ~

 

――がんを体験した今だからこそ一番伝えたいことって。

 

がんというのは即、死ではない。例え、死が宣告されても、それまで生きる時間っていうのがありますよね。即、死じゃないから。だから、まだまだ、生きていくための自分の生き様というのが見つけられる病気だと、そう思っています。「笑うことはすごく良いこと」だって。どんなマイナスな面でもプラスの方向に持っていくように、気持ちを切り替える。そういうふうに生きていきたいと思います。自分でも。