インタビュー:青森県病院事業管理者(青森県立中央病院長) 吉田 茂昭 (2011/2/14)

 

 

インタビュー要約

がんの5年生存率がよくなってきましたが、治療法でいうと、まず外科治療の成績が上がりました。これは早期診断ができて、昔はステージⅣやステージⅢぐらいで見つかっていたものが、ステージⅡ、ステージⅠで見つかるようになり、それで外科の治療成績が上がったんです。

次に化学療法が非常に進歩しました。新しい薬ができてきて、例えば大腸がんで言うと、20世紀中頃の成績と比べると、5年生きられない人の生存期間というのが3倍以上に伸びています。有効な化学療法剤というのが増えて、全体の生存率が上がっているというのは間違いないでしょうね。

放射線治療も、昔はかけすぎたり健康な部分にまでかかっていたが、今はもう3次元、3Dでもって治療計画を立てられ、できるだけ健康な組織に当てないような新しい照射法ができて、副作用なくできるようになったり、さらに陽子線治療とか重粒子線治療とか新しい治療法もできてきています。

さらに、内視鏡治療というのが行われてきて、極めて早期のがんではもう内視鏡でとるだけでおしましということがあります。だから、早期診断をやればやるほどがんの侵襲が少なくて、例えば入院も2日間ぐらいで終わってしまうとか、胃袋を温存できるとか、大腸が温存されるとか、非常に質の高い手術ができるようになりました。

逆に進行がんの手術だと、今までは手術をしてそのまま術後を診ていくということだったんですが、いろいろな薬が開発されたことによって、手術をやった後、化学療法をやった方が優位に生存期間が延びるというデータが次々に出ています。胃がん、大腸がん、肺がん、すい臓がんでそういったデータがでてきています。さらに食道がんの場合は、化学療法を術前にやった場合と術後にやった場合で、術前にやった方がいいという結果が出ています。

非常に良く効くようになってきた化学療法と手術をどうやって組み合わせていくか。今いろいろなチャレンジがされている。手術も昔は取るだけだったんですけれど、取るのはできるだけ少なくして、効果を上げる方向に進んできているというのが今の状況だと思いますね。ですから、今はやっぱりがんに携わるのは外科も内科も一緒にいろんな情報を集合させて患者さんにあたっていくという、いわゆる集学的な治療というものが基本になっているわけですね。