診断時:50歳代後半 インタビュー時:診断から5年(2009年) 性別:女性 保健医療圏:八戸地域 世帯状況:義姉夫婦と同居 備考: |
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婦長さんが「もう抜けますので、下の理容師さんに行って坊主にして来たら?」と、いとも簡単に言うんですよ。(笑)
でも、向こうはいろいろな患者さんに慣れているから事務的に、髪の毛が長いと、抜けると汚れがひどいから「坊主にしてきたほうがいいと思いますよ」と言ったんだと思いますが、でも、女性じゃないですか、やっぱり。(笑)いとも簡単に坊主になったほうがいいというのは、職業柄、こういうことを患者さんに言うことには慣れているだろうけども、私は初めて聞くことで、すごくショックな言葉だと思いました。
でも、坊主にはしたくなかったので、坊主にはしなかったですけども、髪の毛が抜けて、本当に、手をこうやるとパサパサと……。
――手に髪がついてくる。
そう。こうやるとパサパサと抜けて、病衣の肩にも枕にも、もちろん抜けたりしました。だから、カーペットなんかお掃除するときのコロコロを持って来てもらって、背中とかベッドの周りとかやって、掃除のおばさんが来て毎日掃除してくれるんですが、抜けた髪の毛を屑かごに入れておくと、その抜けているのを知られたくなくて、自分ががんで髪の毛が抜けているんだよということを、やっぱり他人には知られたくないものなんですよ。よその人はどうかわからないけども。
病院関係者の方々は何人もそういう方を見ていていると思いますけども、患者にすればすべてが初体験じゃないですか。慣れている光景かもしれないけども、患者にしてみれば初めてのことで、これはどこまで抜けるんだろうと思って、お父さんが来ると、涙がポロポロ流して、「今日もこんなに抜けた」とお父さんに愚痴をこぼしていました。そんな感じでしたね。