発見 / 診断のための検査
前立腺がんの検査には、PSA検査、直腸診、超音波検査、前立腺生検などがあります。生検の結果、がんであることが確定すると、転移の有無や広がり具合などを調べるために、CT検査、MRI検査や骨シンチグラフィーなどが行なわれます※1。
ここでは、前立腺がんと診断されるまでに受けた検査の中で、PSA検査と前立腺生検についての体験談を中心にご紹介します。(こちらの体験談は、どれも貴重なものですが、すべての前立腺がんの方にあてはまるとは限りません。)
前立腺がんを発見するためのきっかけとなっている検査の1つに、血清PSA(前立腺特異抗原)測定があり、がんの可能性を探るスクリーニング(ふるいわけ)の役割を果たしています※2。年齢や前立腺の状態にもよりますが、一般的に、このPSAの値が4ng/mlを超えると、前立腺がんの心配があるとされています※2。しかし、前立腺肥大症や前立腺炎などでも、高値になることがあるため、前立腺の組織の一部を採って顕微鏡で調べる前立腺生検を行なって確定診断をします※3。最近では、超音波を発する器具を肛門から挿入して、画像上で位置を確認しながら、6~10ヶ所以上から組織を採取する検査方法(系統的生検)が多く行なわれています※1。
前立腺がんの検査についての詳しい説明は、がんを学ぶ-前立腺がん-診断のコーナーや、全国のがん拠点病院の相談支援センターなどで配布されているがんの冊子※1等をご覧ください。また、PSAについての語りは、治療-PSA値の推移と再発・転移でもご紹介しております。
検診で受けたPSA検査の結果が、前年度から1ポイント上がって、基準値といわれている4ng/mlを超えたため、紹介された病院で生検を行なったところ、がんが見つかった方がいました。
●PSA検査の数値が上がってきたので、生検を受けた。12か所から採った細胞の1つにがんが見つかった(70歳代前半・男性)(テキストのみ)
前立腺生検は、比較的安全な検査といわれていますが、まれに感染や直腸出血、血尿などが出現することもあります※3, ※4。今回の体験談では、11人中1人の方から、生検後におしっこに血が混じったというお話を伺いました。
●エコーの器具を入れて生検を行なった。検査の後、おしっこと一緒に血液が出たが、医師からはだんだん薄くなって治るといわれた(70歳代後半・男性)
前立腺生検でがん細胞が検出されない場合でも、がんが完全に否定されるわけではないので、専門医の定期的な診察が必要です※3。次の方は、1回目の生検でがんが否定されてから、5年後に、がんが発見されたそうです。
●PSAの値が上昇した1回目の生検では、がんは見つからず、2回目の生検で、がんが見つかった(70歳代後半・男性)
生検で前立腺がんであることが確定すると、多くの場合、転移や臓器への広がり具合などに関して、更に正確な診断をするために、CT、MRI、骨シンチグラフィーなどの画像検査を行ないます※5。次の方は、前立腺肥大症の治療中にPSAの値がグレーゾーン(注1)に上昇したため、生検を受けたら、がんがみつかり、その後に画像検査を受けられていました。
●CTや骨シンチの検査で転移はないことがわかった(50歳代後半・男性)
(注1) 血清PSAの値が4~10ng/mlの領域は、グレーゾーンと呼ばれており、陽性率は一般に25~30%といわれています※6。
中には、直腸診(触診)を行なっただけで、いきなり、がんであることを告げられ、生検は、入院後に、手術前の検査と一緒に行なっていた方もいました。
●触診をしただけで、がんであることを告げられた(60歳代前半・男性)
【参考資料】
※1. 国立がん研究センターがん対策情報センター編集:がんの冊子 各種がんシリーズ 前立腺がん. 2012年5月 第2版
※2. 武藤智(監修):前立腺がん、どんな検査でどう診断するか? がんサポート. 2012;110
※3. 日本泌尿器科学会編:前立腺癌診療ガイドライン(2012年版)
※4. 日本泌尿器科学会編:前立腺がん検診ガイドライン(2010年増補版)
※5. 高山幸久,西江昭弘ほか:前立腺癌の画像診断 -CT,MRI,骨シンチグラフィ-.臨牀と研究. 2011;88(11)
※6. 川村幸治,坂本信一ほか:前立腺がんの腫瘍マーカー.臨牀と研究. 2011;88(11)