発見 / 症状と受診のきっかけ
早期の前立腺がんでは、特有の症状が現れることは、ほとんどありませんが、がんが大きくなってくると尿道を刺激したり圧迫したりして、尿が近い、出にくい、尿に血が混じるなどの、さまざまな症状が出てくることもあります※1。しかし、尿にかかわる症状があったからといって、必ずしも、その全てが、がんに結びつくわけではなく、多くの場合は、前立腺肥大症などの良性疾患によるものです※1。症状については、がんを学ぶ-前立腺がんの症状のコーナーで、医師が詳しく説明しておりますのでご覧ください。
ここでは、前立腺がんと診断される前に経験されていた症状と受診のきっかけ、そして、受診後の成り行きについての語りをご紹介します。今回のインタビューでは、11人中8人の方が、前立腺がんが発見される以前に、何らかの症状を自覚されていました。中でも、尿にかかわる症状について語られていた方が7人いました。症状としては、尿が近い、夜間にトイレに起きる回数が多い、尿が出にくい、出そうとしても勢いよく出ない、そして、尿に血が混じっているなどが挙げられていました。(こちらの体験談は、どれも貴重なものですが、すべての前立腺がんの方にあてはまるとは限りません。)
おしっこが近くなったと感じて、すぐに、専門医を受診した方がいる一方で、単に加齢のせいであると思って、そのままにしていた方もいました。
●昼間だけでなく、夜中のトイレも異常に近かった。町の泌尿器科を受診したら、血液検査のために大きな病院を紹介された(60歳代前半・男性)
●おしっこが我慢できなくなったが、年のせいだと思って、そのままにしていた。検診でPSA検査の数値が、昨年と比べて上昇したため、病院を紹介された(70歳代前半・男性)(テキストのみ)
早期の前立腺がんでは、特徴的な症状が現れることはなく、排尿などの自覚症状があるとしても、その多くは、たまたま同時に存在していた前立腺肥大症などによるものです※1。今回の体験談では、尿にかかわる自覚症状があって医療機関を受診されてから、最終的にがんが発見されるまでに、前立腺肥大症や前立腺炎などの良性疾患の治療を受けていた方がいました。中には、15年間に渡って前立腺肥大症の治療や経過観察を行なう中で、がんが見つかった方もいました。
次の方々も、尿にかかわる症状が出て、受診した当初は、病院からもらった前立腺肥大症や炎症の薬を飲んでいました。
●お酒を飲むとおしっこが近くなるのに、チョロチョロしか出ない。薬を飲んだが症状は改善されず、暫く)放っておいたが友人の話に触発されて再受診した(60歳代前半・男性)
●血が混じったおしっこが出た。泌尿器科を受診して、炎症の薬を服用したが、血液検査の数値は高いままだった(50歳代前半・男性)(テキストのみ)
尿にかかわるものとは別の症状で、泌尿器科を受診したことがきっかけで、PSA検査を受けることになり、がんの発見につながった方もいました。前立腺がんの症状とは、直接、関係があるとは言えませんが、貴重な体験談の1つとしてご紹介します。
●陰部がかゆくなった。塗り薬をもらおうと泌尿器科を受診した時、たまたま、待合室でPSA検査の情報を見て、検査を受けてみた(50歳代後半・男性)
思い当たる症状が全くないのに、がんと診断された方もいました。偶然に見つかった前立腺肥大症の治療をしている間に、定期的に受けていたPSA検査の数値が上昇してきたのがきっかけで、がんが発見された方や、次の方のように、健康診断で要精密検査という結果が出て、医療機関を受診することになった方もいました。
●自覚症状は全くなかった。健康診断に導入された前立腺のがん検診を受けたら、要精密検査という結果が出た(60歳代後半・男性)
【参考資料】
※1. 国立がん研究センターがん対策情報センター編集:がんの冊子 各種がんシリーズ 前立腺がん. 2012年5月 第2版