結局、「最悪の状態です」って言われたのね。手術して、退院して２０日目に（外来に）行ったら、「だれかお家の方は一緒に来ましたか」と。「いえ。子供たちはみんな遠く離れていて、関西方面にいるから、一応は連絡するけど、私一人で結構ですから言ってください」って言ったら、「最悪の状態です」って言われて。

そして、いや、どの程度にあれだったのかと思って、「播種(はしゅ)の状態でしたか」と聞いたら、それと同等だって。

――播種(はしゅ)？

「播種(はしゅ)」、飛び散っちゃったということね。粘液がんがね。結局、小腸とか骨盤の中にも入ってて、それが取れなかったと。結局、ゼリー状だから、手術してもすくえないんじゃない？全部ミクロの世界を取るということは。だから、無理だったっていうことね。

ただ、原発（部分の腫瘍）だけは取ったから、腫瘍マーカーは３点いくつだかまですごく下がったの。でも、予約を取って東京に行くまでに、どうしても、また上がってくるのね。待っている間、周りの者は心配したけど。行ったら、案の定、「助けられない」って言われましたね、はっきりとね。もっと初期のほうだったらば何とかあれしたんでしょうけど、こっちからの紹介状を持って見ただけでわかるんでない？

私もＰＥＴ^※注１みたいな知識がなかったし、この辺ではＰＥＴでの診断ができないから、「受けられるんですか」と（聞いたら）、そしたら、「ＰＥＴなんて撮る必要ない」って言われて、必要ないと言われたら、そこまででしょ。細かいものが映らないんだってね。ＰＥＴもあまりにも小さいものはね。

放射線も、標的がないから治療できない。固まるものじゃないから、粘液のあれだからね。

だから、結局、化学療法しかない。でも、それもある程度あちこち行ってるからということだったんじゃない？緩和ケアを勧められた状態ね、結局は。妹や息子も一緒に診察室に入って聞いて、「近くから通ってもいいから何とかなりませんか」と言ったら、「終末は長く暮らしたところで過ごすのが一番いい」とまで言われて。

※（注１）PET（ポジトロン・エミッション・トモグラフィー検査）：ブドウ糖に似た、がん細胞が取り込みやすい特性を持つ薬剤を注射し、それを取り込んだがんの様子を特殊なカメラで撮影し、がん細胞を画像化する検査^※６。