治療 / 外科手術
大腸がんの手術は、出来る限り排便、排尿、性機能などを保ちつつ、がんが治ることを目指して行なわれます(「がんとどう付き合うか(大腸がん)」:がん研究振興財団 監修/国立がんセンター)。
結腸や直腸といった、がんが出来ている位置によっても、切り取る範囲が違ってきます。また、病状や手術の方法によっては、ストーマ(人工肛門)と呼ばれる便の排出口をお腹に造ることもあります。外科手術の詳しい内容については、当サイトの「がんを学ぶ」をご覧ください。
国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報サービスによると、大腸がんの治療は、手術による切除が基本であるといわれています。
今回のインタビューでは、11人全員の方が外科手術を受けられていました。ここでは、診断されてから手術を受けるまでにどの位の時間を、どのような気持ちで過ごされていたのか、そして、手術の内容、術後の経過、更には退院に向けての準備について、外科手術にかかわるお話をご紹介します。
手術までの待機時間
今回のインタビューでは、受診してから手術を受けるまでの期間に、即日から約2カ月といった開きがありました。待機入院をしていたり、検査や抗がん剤の治療を受けながら手術の日を待っていた方がおられる一方で、受診した当日に緊急手術を受けることになった方もいました。
・手術が決まるまで別の病院で1カ月待ち、手術を受ける病院で、更に約1カ月の間、検査を受けながら待っていた。(60歳代前半・男性)
・麻酔科医が不足していたため、一ヶ月間、待機していた。その間に、抗がん剤治療を受けた。(50歳代前半・女性)
中には、手術の日が予定よりも早まった方もいました。
・250番目と言われて、まだまだと思っていたら、急に手術日が早まった。心の準備ができていなかったが、今思えば、早まって良かったと思う。(60歳代後半・男性)
受診した日に、すぐに手術を受けていた方もいました。走るような痛みを感じて受診したところ、検査後の点滴を受けている最中に緊急手術をすることになった方や、救急外来を受診した時点で思ったより病状が進んでおり、そのまま入院して手術を受けた方もいました。
・救急外来を受診した時には、腹膜炎の状態になっており、そのまま入院して手術を受けた。(50歳代前半・男性)
手術を受ける前の気持ち
手術を受ける前には、不安と同時に覚悟や期待などといった、さまざまな思いを抱かれていました。
「体力的には乗り切れるだろう」という、手術前に医師からの説明を受けた時の気持ちをはじめ、手術の朝や手術室に向かっている時に湧き上がってきた思いが語られていました。
・悪いところを取れば回復するんだからという気持ちでいたので、恐くはなかった。(60歳代前半・男性)
・不安はあったが、やるしかない、うまくいけばいいなと思って手術室に向かった。(50歳代後半・男性)
手術の実際
ここでは、どのような手術を受けたのか、そして、手術が終わった後の気持ちも併せてご紹介します。
手術時間に関しては、早く終わったほうだといわれた2時間の方から、4~5時間、そして、早朝から夕方6時頃までかかった方とさまざまでした。
手術の様子については、複数の方が、まず手術直後にご家族だけが呼ばれて摘出したものを見せられ、ご本人より前に医師からの説明を受けたと語っておられました。
ご本人は麻酔で眠っていたため、後日、医師に説明してもらっていました。切り取った範囲や、つなぎ合わせた場所などを、レントゲン写真を見ながら説明してもらっている方もいました。
目で見た限りのがんは全て取ったことを説明され、後は、血液やリンパの中に入っている可能性があるかもしれないがんについての抗がん剤治療を勧められていた方もいました。
・やぶれた腸から汚物が散らばるのを盲腸が食い止めていたことが、手術後にわかった。(50歳代前半・男性)
大腸がんの発見と同時に肝臓への転移と胆石がみつかった方がいました。手術では、数が多いので難しいといわれた肝臓には触れずに、大腸がんと胆のうを切除されていました。
・大腸の手術の時に、医師に頼んで胆石の治療もしてもらった。(60歳代後半・女性)
今回のインタビューでは、11人中2人の方がストーマ(人工肛門)を造られていました。大腸がんの切除に加えて、ストーマの着脱に関する手術も受けられており、中には、合併症の治療や転移したがんの切除も含めると、4回の手術を経験されていた方もいました。
・大腸がんの手術、3日後に再手術、更に合併症のための手術、そして約1年後にストーマ閉鎖と転移したがんの治療で4度目の手術を行った。(50歳代前半・男性)
ご自分の手術後の状態を知った時のお気持ちも語られていました。手術前には、ストーマ(人工肛門)をつける可能性があることを説明されていたため、麻酔から覚めた時に、一番先に手をやって確かめたら付いていなかったので、ホッとしたという方もいました。一方で、歩けるようになった頃に医師から受けた、がんの進行度についての説明を聴いて、ショックを受けられていた方もいました。
・がんを取ったから、もう治ったと思っていたのに、残念ながら進行がんだったといわれてショックだった。(60歳代前半・女性)
大腸内視鏡で切り取ったポリープが、病理検査の結果、がんと診断された方がいました。
温泉に行った後、再度、PET(陽電子断層検査法)などの検査を受けたところ、その時はがんは見つかりませんでした。がんがないなら手術は受けたくないと訴えましたが、医師に説得されて手術を受け、人工肛門も造りました。結局、摘出した臓器からも、がんはみつかりませんでした。
ご本人は温泉ががんに効いたと考えておられるようですが、温泉のせいなのか、内視鏡で採りきってしまったからなのか、がんが見つからない明確な理由はわかりません。しかし、病理検査の結果ががんではなかったということに対しては、喜んでおられました。
手術後の経過
手術後の回復の状態には個人差があり、さまざまな経過をたどられていました。
順調に回復されたと語られる方がいる一方で、合併症などの症状が現れた方もいました。
抗がん剤の治療もなく、手術してから1カ月後に退院し、自分では完全に治ったという気持ちでいたけれど、普通の生活に戻るまでに約6カ月かかったという方もいました。
また、手術後、吐き気以外は特にトラブルもなく、1カ月後には大腸がんが発見された時に既に転移が見つかっていた肝臓の治療のために消化器科へ移ったという方もいました。
・手術後は貧血もなくなり、体がすごく楽になった。(60歳代前半・女性)
中には、術後に、いろいろな症状が現れた方がいました。ICU(集中治療室)にいる時に合併症が発見され、緊急手術を行った方もいました。
・術後心筋梗塞になり、緊急手術を行なった。人工呼吸器のために話すことができなかった。回復して歩けるようになり話ができるようになった。(50歳代前半・男性)
手術後に、記憶がうすれている中で、幻想のようなものを見た方もいました。
意識がもうろうとする中で思考が乱れたり、幻想といって存在しないものが見えたり、現実的にあり得ないような事柄を事実であると確信してしまう妄想などの症状が出現する、一過性の精神状態で術後せん妄といわれるものがあります。
・合併症の手術の後、幻想みたいなものを感じたが、1週間ぐらいで消えた。(50歳代前半・男性)
退院後、1度だけ緊急で受診したことがあるけれど、それ以外の症状は落ち着いていたという方もいました。
・夜間にお腹が痛くなり、緊急受診をした。腸が詰まり気味だったが腸閉塞にはならなかった。(50歳代前半・男性)
術後の早期離床
手術後、横になっている状態が続くと合併症が起こりやすくなったり、起き上がることが困難になってしまうこともあります。そのような状況を予防して、少しでも早く日常生活に戻ることができるように、手術後の早いうちから座ったり、立ち上がったり、歩いたりする動作を行うことを早期離床といいます。
お腹を切った直後は、体に管がたくさん入っているため、歩くことはおろか、なかなか動くこともできない状態であったことを、数名の方が話されていました。インタビューでは、起き上がって、1回目の便を出す時のご苦労や、歩く練習をしている時のご様子が語られていました。
・開腹手術の直後は、起き上がることができず、1回目の便を出す時は、精神的にも大変だった。(60歳代前半・男性)
今回のインタビューでは、手術後のつらい状態の中でも、早いうちから歩く練習をされていた方が複数いました。術後3~4日で歩き始めて、約2週間で退院された方、また、2回目の手術で段取りがわかっていたこともあり、ご自分の体調に合わせて無理をせずにマイペースで歩かれて、約1カ月後に退院された方もいました。
・歩かないと治らないからといわれて、管を付けたまま、点滴を持って、手術後3~4日目から歩く練習を始め、約2週間後に退院した。(50歳代後半・男性)