生活 / 家族・親戚との関わり
ここでは、がんと診断された後、家族・親戚とどのように関わってきたか、インタビューで語られた体験をご紹介したいと思います。
家族・親戚への思い
がんという診断を聞いて、家族も大きなショックを受けていました。ショックを受ける家族の様子を見て、ご本人も心を痛めていました。自分よりもショックを受けている家族を見て、家族に病名を伝えない方が負担をかけずにすむと感じたという方がいらっしゃいました。(診断を聞いた時の家族の反応については、<がんと診断された時>に詳しくご紹介していますので、そちらもあわせてご覧ください。)
・自分よりも家族がかなりショックを受けていたので、自分が分かっていれば、周りの人にはあまり細かく教えなくてもいいなとも思う。(60歳代後半・女性)
また、治療中、家族がどれほど心配しているかを想像し、心配をかけないように自分の言動に気をつけるようになったと、複数の方が語っていらっしゃいました。家族が好きなことを楽しめなくなった様子から、家族の気持ちを想像したという方や、家族に心配をかけないようにあまり苦しそうな表情をしないようにふるまっているという方がいました。
・海も山も好きな夫が、友達に誘われても全然出かけなくなってしまった。自分だけ騒いでいられないなと思った。(60歳代前半・女性)
・自宅で点滴をしているときも、妻に心配をかけないようにふるまっている。(50歳代後半・男性)
複数の方が、がんと診断されたことで、自分の命を意識し、自分がいなくなった後の家族のことを考えていました。自分がいなくなった後の財産分与のことを考えたという方や、大腸がんの治療後に肝転移が発見された際、家族への思いを手紙に書いたという方がいました。これが最後かもしれないとの思いから、体調の悪い中、親戚の結婚式に出たという方もいました。
・これが最後かもしれないと思って姪の結婚式に頑張って出た。みんなが優しくしてくれたことが、本当はありがたいのに、嫌だと思う自分もいた。(60歳代前半・女性)
また、子どもさんから、遺伝を考え、治療法を書いて残しておいてと言われたという方もいました。
・子どもから、同じDNAを持っているんだから、治療方法を記録して残してほしいと言われた。(60歳代前半・女性)
家族・親戚との関係
がんという困難を体験する中で、家族や親戚との関係について、改めて認識することもあるようです。配偶者がいる方にとって、夫や妻の存在が大きな支えになっていたということが、インタビューからうかがえました。一方で、女性の体験者の中には、一番の相談相手として子どもの存在を挙げる方もいました。
・夫とは病気のことはあまり話さないようにしている。一番に相談するのは娘。(60歳代後半・女性)
きょうだいも大きな支えになっていました。一人暮らしの方は、地元にいるきょうだいが実際的なサポートを担ってくれたそうです。また、親戚にどの程度まで話すかということは、それぞれの事情によって異なるようです。
・母方の親戚、兄弟には話しているが、内緒にしている親戚もいる。入院中は、地元にいる妹が身の回りの世話をしてくれていた。(50歳代前半・女性)
インタビューでは、夫婦生活についてもうかがいました。手術の傷跡を見られることを気にするかどうかという質問に対して、60代の女性の方は、年齢的に全然考えていないと答えておられました。
・年齢的に、夫婦関係を持つことや傷を見られることは全然考えなかった。(60歳代前半・女性)
治療や生活の中での関わり
受診、治療、退院後の生活の中での、家族・親戚の実際の関わりについて、インタビューで語られた体験をご紹介します。
最初の受診のとき、娘や息子が受診を勧めてくれたり、病院に一緒に行ってくれたという体験が複数の方から語られていました。また、治療の選択に関して、家族が積極的に関わってくれたり自分の選択を支持してくれたことが語られていました。医師から治療の説明を受ける際に家族が同席し、医師に「先生の家族ならどうしますか」と積極的に質問をしてくれたという方がいらっしゃいました。また、抗がん剤治療を受けることについて、子どもが背中を押してくれたという方がいました。
・娘は、抗がん剤治療について、お母さんがやってみたいなら、と背中を押してくれた。(60歳代後半・女性)
手術のときに、配偶者やきょうだいが付き添ってくれたり、遠方に住む子どもが駆けつけてくれたりしたことで、心強くいられたということが、複数の方から語られていました。また、入院中、家族がお見舞いに来て顔を見せてくれたことは、多くの人にとって励みになっていたようです。
・3番目の娘が会社が終われば必ず毎日寄ってくれた。妻は毎日来てくれて一番世話になった。(60歳代後半・男性)
入院したことで、疎遠だった家族と交流を深める機会になったという方もいました。
お見舞いは、複数の方が励みになったと語る一方、体調が優れない時のお見舞いは負担になることを語った方もいました。負担ではあるが断ることも難しい、という思いも語られていました。
・体調が落ち着くまでは、見舞いは遠慮してほしいが「来るな」とも言えない。(60歳代後半・男性)
退院後の生活では、特に女性にとって、家事が問題になります。ある方は、慣れない夫が家事をやってくれて助かっていることを話されていました。一方で、夫に家事をまかせられなくて退院を急いだという女性もいました。
・家事を何もやらなかった夫が、いざとなればご飯や洗濯をやってくれるようになった。(60歳代後半・女性)
・家事は夫にまかせられず、退院を早めて帰ってきた。(60歳代前半・女性)
同居していない家族・親戚からの気遣いやサポートについても語られていました。子どもが孫の顔を見せに来てくれたという方は、「孫を見ると一番体にいい」と語っておられました。ほかにも、家族・親戚が、食事に関する本を送ってくれた、閉じこもらないように習い事の先生を紹介してくれた、という体験が語られていました。
・娘の姑が、本屋で食事療法の本を見つけたといって送ってくれた。(60歳代後半・女性)
・家に閉じこもらないように、妹が大正琴や絵手紙の先生を紹介してくれてありがたかった。(60歳代前半・女性)