治療 / 病院・医師・治療法の選択
病気になったとき、どの病院に行くか、いい医師に出会えるか、治療法をどのように選ぶか、ということは重要な問題だと思われます。ここでは、病院や医師、および治療法をどのように選択したかについて、インタビューで語られた体験をご紹介します。
病院・医師の選択
今回のインタビューでは、複数の方が、最初にかかりつけ医や近所の病院を受診し、その後、総合病院やがん専門病院などを紹介されて転院したことを語っていました。
・はじめに受診した病院で大きい病院を紹介された。はじめの病院で検査を受け、検査結果を持たせてくれたのが、負担がなくてよかった。(60歳代後半・男性)
治療のための抗がん剤が国で使用が認められた病院でしか使えないため、転院したという方もいました。また、最初に受診した病院で、2つの総合病院を紹介されたという方もいました。どちらの病院にするか選ぶとき、この方は、受診したことがあってなじみがある病院の方を選んだそうです。
大きな病院である程度の治療が進んだ後、経過観察のために個人病院を紹介されたという方もいらっしゃいました。この方は、ご自分で転院を希望したわけではありませんでしたが、個人病院は土日もやっていて待ち時間が短くなったことなど、転院したメリットを感じていることを話されていました。
治療法の選択
大腸がんの治療は外科手術が中心といわれています。がんが外科手術で切除しきれないときや、あるいは、再発や転移の予防のために、抗がん剤や放射線の治療が行われる場合もあります。
今回のインタビューにご協力くださった方たちは、全員外科手術を受けておられました。ある方は、医師から手術について説明を受け、不安を感じましたが、どうしようもない、やるしかないと思って手術を受けることに決めたと語っておられました。
・手術中の容態悪化や転移の可能性をきいた。手術は避けられないし、やった方がいいと思った。(50歳代後半・男性)
ある方は、内視鏡で切り取ったポリープが、がんと診断されましたが、その後のPET(陽電子断層検査法)などの検査では、がんはみつからなかったそうです。ご本人は手術を受けたくないことを訴えましたが、医師に将来体が衰弱してから手術をするより体力のある今手術をするように説明され、親族にも手術を勧められて、手術を受けることを決めたと語っておられました。
外科手術の後、抗がん剤治療を受けていた方も複数いらっしゃいました。進行がんなので抗がん剤をやった方がいいと勧められ、どうしようかと迷った末、結局、医師と家族の会話を聞いて、抗がん剤治療をやることに決めたという方がいました。この方は、あとから本を読んで他の治療法があることを知ったそうですが、実際に治療を受けたときは、そうするしかないと思って応じたという心情を語っていました。
・進行がんは抗がん剤をやった方がいいと言われた。やったほうがいいのであればしなければならないな、死ぬよりはいいかなと思った。(60歳代前半・女性)
他に治療法がないために、抗がん剤治療を受けることを決めたという方もいました。大腸がんと同時に肝臓への転移を発見されたという方は、大腸がんを手術で切除した後、肝臓の腫瘍への治療として、抗がん剤治療を行う決断をしていました。
・延命はやってみなければ分からないと言われ、抗がん剤治療に応じた。(60歳代後半・女性)
また、再発や転移の予防のために抗がん剤治療を勧められ、粉薬か点滴にするかを選んだという方もいらっしゃいました。この方は、薬だと一生飲まなければならないという説明を受け、半年間、月2回抗がん剤を点滴で行う治療の方を選んだそうです。
治療法を選択することについて、医師に任せるほかないという思いを語っておられた方もいました。
・医師に任せるよりない。予算さえ合えば治療をしたい。(60歳代後半・男性)
一方、医師から勧められた治療でも、説明を聞いて応じなかったという体験も語られていました。医師に新薬を提案されたが選択しなかったという方がいらっしゃいました。
・新薬による治療を勧められたが、100人に1人は死ぬ可能性があるといわれ怖いのでやめた。(50歳代後半・男性)
セカンドオピニオン
セカンドオピニオンとは、患者が納得のいく治療法を選択することができるように、現在診療を受けている担当医とは別に、ちがう医療機関の医師に「第2の意見」を求めることです。国立がん研究センターがん対策情報センターでは、セカンドオピニオンとは担当医を替えたり、転院したり、治療を受けたりすることだと思っている方もいますが、そうではなく、ほかの医師に意見を聞くことがセカンドオピニオンであると説明しています。(国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報サービス「がんに関する用語集」より)
今回のインタビューでは、セカンドオピニオンという言葉を、転院することや医師を替えることだと捉えている方も中にはいらっしゃいました。ここでは、インタビューにご協力くださった方が「セカンドオピニオン」と捉えておられる体験を、そのままご紹介したいと思います。
虫垂がんと診断された方は、インターネットや家族の知り合いの医師を通して治療法を調べた結果、まだ治療法が確立されていないということが分かったそうです。東京に行けば症例があるのではないかと考え、東京の病院でセカンドオピニオンを受けていました。また中には、最初に受診した病院で、抗がん剤か人工肛門かと言われましたが、紹介状を書いてもらい受診した病院で、一時的ストーマ(人工肛門)と言われた人もいらっしゃいました。
・播種で、手術で全部切除できなかった。紹介状を持って東京の病院に行ったが、結局、化学療法しかなかった。(60歳代後半・女性)
セカンドオピニオンを求めなかった方からは、いくつかの理由が語られていました。
発見が遅れたため、セカンドオピニオンを受ける時間の余裕がなかったという方がいました。
・病院に行くのが遅過ぎた。セカンドオピニオンは考えたが、もう暇がなかった。(60歳代前半・女性)
一方、医師と相談したり自分なりに考えた上で、セカンドオピニオンを受けないと決めたという方もいらっしゃいました。受診した病院を全面的に信頼していたという方や、どこに行っても受けられる標準的な治療だと聞いて今の病院に決めたという方がいました。
・受診した病院を全面的に信頼していた。(60歳代前半・男性)
・医師と相談して、「どこにいっても同じですよ。」といわれたので今の病院に決めた。(50歳代前半・男性)
また、セカンドオピニオンを受けても、結局最初の医師に戻る可能性があるからセカンドオピニオンは考えなかったという方もいらっしゃいました。
・どこに行っても受けられる治療だから、結局最初の医師のところに戻る可能性が高いのでセカンドオピニオンは考えなかった。(60歳代後半・女性)
セカンドオピニオンを受けなかったという方の中には、主治医が自ら、他の医師に治療について意見を聞いてくれているという方がいました。医師同士でやりとりしてもらう方が、自分でセカンドオピニオンを求めるよりも効率がよいと感じているそうです。
・素人の私が聞き回るよりも、医師に任せていろいろ聞いてもらったほうが効率がいいと思った。(50歳代前半・女性)
セカンドオピニオンを受けることを考えなかった方の中には、機会があれば受けたかもしれないと語る方もいました。行きやすい病院が増えたり、セカンドオピニオンを受けることがより一般的になれば、希望する人がさらに受けやすくなるのかもしれません。
・セカンドオピニオンは全然考えなかった。そういう説明があったら行ったかもしれない。(60歳代後半・男性)