治療 / 医療者との関わり
がんの治療を受ける中で、患者は医療者(医師や看護師など)と日常的に関わっていくことになります。ここでは、医療者との関わりについて、インタビューで語られたお話をご紹介します。
治療について説明を聞く
病院で治療を受けるとき、患者は、医師や看護師から治療についての説明を聞き、納得した上で治療を受けることになります。説明を理解するために、患者が自分から質問をして、やりとりをすることが時に必要だと考えられます。インタビューでは、自分の質問に対し、医療者がていねいに答えてくれたことを「ありがたかった」と語っておられた方が複数いました。自分からはなかなか質問しづらいと感じていた方も複数いらっしゃいました。その方々は、医療者が、こちらから聞く前に説明してくれたり、こちらが質問しやすい雰囲気をつくってくれていたことがありがたかったという思いを語っていました。
・何かあったら聞いてと言われてありがたいと思った。無知なので何を聞けばいいんだか分からなかった。(60歳代前半・女性)
一方、インタビューに協力してくださった人の中には、治療の方法や予後に関して十分な説明をしてもらえなかったと感じている方がいらっしゃいました。外科手術を全身麻酔で行うことを聞いておらず、手術の直前に知ってショックを受けたことや、治療についての基礎的な情報を事前に説明してほしかったという思いが語られていました。また、手術後にトイレが近くなり、困って医師に話したら、年齢的に完全に回復することは難しいと、そこで初めて説明された人もいらっしゃいました。
・抗がん剤の期間や副作用などについて、基礎的なことを教えてもらえた方がよかった。全部はじめての体験だった。(50歳代前半・男性)
医療者の説明に対し、不満を感じた体験も語られていました。転移が発見されて受診した呼吸器科の医師の言葉に「ムカムカときた」ことや、医師に質問をしたときの対応に不満を感じたことが語られていました。
・「がんを取ってどうするの?またすぐ出たらどうするの?」などと言われてムカムカときた。(60歳代前半・男性)
・同じ治療をして金額が違うようだったので質問したが、「どうなのかね」と言うだけだった。医療者が足を運んだり聞いてみてほしかった。(60歳代前半・男性)
入院・通院中のやりとり
入院中、医師が顔を見せてくれたことが励みになったと、複数の方が語っていらっしゃいました。1日1回医師が回ってきてくれたという方や、朝・昼・晩と医師が顔を出してくれたという方など、頻度や回数は人によって異なっていましたが、忙しい医師への感謝の気持ちが語られていました。
・執刀医が朝、昼、晩と私のところに来てくれたのが、励みになった。(60歳代後半・男性)
治療中に気になることや症状に関する医療者とのやりとりについても語られていました。入院中、それほど強い痛みでなくても痛み止めを頼むなど、自分の「わがまま」に医療者が応じてくれたことや、ストーマについての相談に看護師が応じてくれたこと、抗がん剤治療の副作用への対処を医師がさりげなく見てくれていたことなどが、感謝の気持ちとともに語られていました。
・みんな良くしてくれて家族に近いようなあんばいで、結構わがままも聞いてくれた。(60歳代後半・男性)
・抗がん剤の副作用への対処の仕方について、医師がさりげなく気をつけて見ていてくれた。(60歳代後半・女性)
治療の経過がよいとき、医師がほめたり喜んでくれることが励みになったという方が複数いらっしゃいました。医師が検査結果を見て「すごくおだてるのでその気になった」と語る方や、結果を見た医師の笑顔が励みになったという方もいました。
・医師も告知をするのはつらかっただろうが、最近、がんが小さくなったことを笑顔で喜んでくれたのを見て、これで良かったと思っている。(60歳代後半・女性)
医師や看護師が声をかけてくれたり、優しく接してくれたことが、「治さなければ」という気力につながっていたと語る方もいました。
・声を掛けてもらうとか、やさしい人たちに接したら、治さなければだめだという気力が沸き起こってくる。(60歳代後半・男性)
がんの治療では、入院や通院などが長期にわたる場合があります。インタビューでは、医師や看護師とのつきあいが長くなってくると、お互いの理解が深まっていくことが語られていました。
・1年も通うと、緊張感がなくなり医師と話がしやすくなった。(60歳代前半・男性)
・最初はとっつき悪かったが、ジョークを言ったり、からかったりできる関係になった。(50歳代前半・女性)
診察について、複数の方が、患者の話をもっと聞いてほしいという思いを語っていらっしゃいました。患者としては、検査の結果に表れない症状や気になっていることを話したいと思っているとのことです。医師が、検査結果だけを診て大丈夫だと言ったり、積極的に治療のことを説明したりするだけで診察が終わってしまうことへの不満の気持ちが語られていました。
また、入院生活の中で、医療者のアドバイス(指導)が一貫しておらず、とまどった体験も語られていました。
・医師と看護師のアドバイスが違っていて、とまどったことがあった。(50歳代前半・女性)
また、入院中の医療者の何気ない言葉に嫌な思いをしたという体験も語られていました。ある方は、携帯電話を使用できるか質問したとき、看護師から「あ、だめだめ」と言われ、看護師の口調や態度がそっけなく感じ、嫌な気持ちになったそうです。言われていることがたとえ正くても、伝える側の口調や態度などが、受けとる側の気持ちに影響を与えてしまうこともあるようです。
医師に対して気を遣うというお話もありました。主治医に何か言うと自分が粗末にされるのではないか、転院したことで気分を害してしまったのではないか、と不安を感じていることが語られていました。
・主治医に何だかんだ言ったら自分が粗末にされるのではないかと不安で、気を遣う。(60歳代前半・男性)