生活 / ストーマ・排泄
ここでは、大腸がんに特有の問題である、ストーマや排泄に関する体験をご紹介します。
ストーマ(人工肛門)
大腸がんでは、外科手術でがんを切り取った後、ストーマ(人工肛門)を造る場合があります。ストーマには、「永久的ストーマ」と、あとで閉鎖する予定の「一時的ストーマ」とがあります。インタビューに参加してくださった体験者の中で、永久的ストーマを造った方はいらっしゃいませんでした。今回のインタビューでは、一時的ストーマを経験された方が11人中2名いらっしゃいましたので、ここでは、一時的ストーマを造った方々のお話から、ストーマに関する体験の一部をご紹介したいと思います。
ストーマを造ったことに対して、手術後にストーマが造られたことを知ってショックだったという方や、いずれは取れる、という思いから強く気にすることはなかったという方がいました。
・集中治療室を出てきてから、自分にストーマが造られたことを知った。(50歳代前半・男性)
ストーマを造った場合、自宅に戻る前に、病院でストーマ管理の練習をすることになります。インタビューでは、ストーマが造られてから、痛みを感じたり、皮膚のトラブルがあったり、装置が合わなくて便が漏れたり、といった体験が語られていました。ストーマ管理に慣れるまで、一定の時間と労力を要することがうかがえました。
・気圧の変化のような、押されたり縮まったりでストーマに痛みがあった。(50歳代前半・男性)
ストーマを閉じた後、軟便になったり排便回数が増えるなど、排泄で苦労されていましたが、ストーマについては、「慣れてからは楽だった」「さほど苦にならなかった」ということが語られていました。
・装置や形が合うものと合わないものがあり、慣れるまで大変だった。いろいろあったが、コツをつかんで慣れてからは楽だった。(50歳代前半・男性)
2つのストーマを造った方は、両方の管理をしなければならないことが時に負担となったことを語っておられました。
・ストーマは小腸と大腸に2つで、下の方がたくさん出た。2つもつけているとちょっと疲れることもあった。(50歳代前半・男性)
排泄のコントロール
大腸がんの手術をした場合、大腸のどの部分を切除したかによって、術後に排泄のコントロールが難しくなるという問題が生じます※1。結腸を切除した場合は、排泄のコントロールは以前と同じ程度に保たれ、問題はほとんど残らないことが多いようです※1。一方、直腸を切除した場合には、便をためる能力と押し出す能力が低下し、排泄のコントロールに問題をきたすことになります※1。
インタビューでは、複数の方が、手術後、排便の回数が増え、軟便になったことを語っておられました。一時的ストーマを造られた方も、ストーマを閉じた後、排泄コントロールで苦労されていました。排泄のコントロールがどの程度難しいのかは、人によって異なっていました。
排泄のコントロールに問題があると、長時間の外出が難しくなったり、不安や気遣いが増すといった影響が出ていました。
時間が経つにつれ、排泄のコントロールは徐々に改善がみられるようです。どの程度改善するかについて、医師からの説明では、1年かかると言われている方や、2年が目安だが完全に治らないということを告げられた方もいました。
・手術後、トイレの回数が増えて軟便になったが、3ヶ月経って改善してきた。医師から1年くらいかかると言われている。(50歳代前半・男性)
時間が経過すると、ご本人が経験的にコツをつかんで対応が上達してくることもうかがえました。排便のタイミングが分かってきたり、軟便になりやすい食べ物が分かってそれを避けられるようになったことが語られていました。
・長い外出はまだ無理はできないなと思うが、こうなってくるなというのが分かってきた。(60歳代後半・男性)
参考文献
1.大腸癌研究会:大腸癌治療ガイドラインの解説(2009年度版)