生活 / 病気や治療による外見の変化
大腸がんの治療のなかで、手術の傷跡や脱毛、むくみなど、外見の変化が生じることがあります。治療の合併症や副作用のなかでも、そのような外見の変化は、医療的な対応がなされないことが多いようです。しかし、実際に生活を送るうえでは、外見の変化によってさまざまな影響があると思われます。
インタビューでは、体重の減少、脱毛、手術の傷跡、爪や皮膚の変化・むくみについて語られていました。ここでは、そうした外見の変化が、生活の中でどのように体験され、対処されているのかをご紹介したいと思います。
合併症や副作用の症状については<抗がん剤治療>、<外科手術>にもご紹介していますので、あわせてご覧ください。
体重の減少
インタビューに協力してくださった方のなかには、手術や抗がん剤治療の過程で、大幅な体重減少を体験している方がいました。入院中あまり食事をとれず、2週間で20キロ以上やせたという方、退院後に10キロ以上減ったという方がいました。体重減少は、周りの人から一見してわかる外見の変化といえます。いいダイエットになった、と肯定的に語る方もいました。一方、やせたことに周囲が驚き、その周囲の反応を見て不安を感じ、急きょ受診したという方もいました。
・入院したときは69キロあった体重が43キロになり、自分でも驚いた。(50歳代前半・男性)
・入院中は食事をしていなかったが、点滴をしている間は体重は減らなかった。退院後に自分で食べるようになってから12〜13キロ減った。(60歳代後半・男性)
・抗がん剤の副作用で味覚が変化し、食欲がなくなった。体重がどんどん落ちて、しわだらけになった。味覚が戻ったら、体重が戻ってきた。(60歳代前半・女性)
脱毛
抗がん剤治療を受けた方のなかで、複数の方が脱毛を体験していました。男性は脱毛してもそのままにしていた方が多いようでしたが、女性はかつらを使ったという方が複数いらっしゃいました。治療の始まる前にかつらを準備して2年以上使っているという方や、かつらを作ったものの1回しかかぶらなかったため、自分にとっては必要なかったという方がいました。
・抗がん剤の副作用で髪の毛が薄くなり、頭皮のただれもあった。副作用が出る前からかつらを準備していた。(50歳代前半・女性)
自分に合ったかつらがいいと思って高額だったが型をとって作った。結局1回しかかぶらず、自分にとっては必要なかった。(60歳代後半・女性)
◆ 手術の傷跡
体に残った手術の傷跡を気にするかどうかには、個人差があるようでした。傷跡を気にせずに銭湯や温泉に入っている方もいれば、公共のお風呂を避けるという方もいました。時間が経つにつれて、傷跡の色や形がおちついてきて、気にならなくなってくることが多いようです。
・温泉や銭湯が好きで、大きな傷跡も気にせずに通った。周りの人もあっけらかんと接してくれた。(60歳代前半・女性)
・傷があると温泉などに行きにくい感覚があった。(50歳代前半・男性)
また、配偶者との関係で、傷跡がどのくらい気になるかについてもうかがいました。今回のインタビューでは、傷跡の影響が大きいというお話は聞かれませんでした。このことは、大腸がんの罹患(りかん)年齢が比較的高いことが関係しているのかもしれません。
・夫に傷を見られる時は、この年だから全然考えなかった。婦人科の病気ではないので、夫婦関係を持つときも気にならなかった。(60歳代前半・女性)
爪や皮膚の変化・むくみ
抗がん剤治療の副作用で、爪の色が変わったり、爪の表面が波打ったという方が複数いらっしゃいました。爪の変色は、治療が終わった後も1年ほど残ることがあるようです。テープで巻いて爪が割れるのを予防したり、爪や皮膚が日光に当たって黒ずむのを防ぐため、手袋や長袖を着て対策しているというお話が聞かれました。顔に発疹やむくみが強く出て、以前の写真と比べて顔の印象が大きく変わってしまったという方もいました。
・副作用で爪が細かい波を打って生えてきた。爪が弱くなり、洋服のボタンをかける時にも爪が割れてしまい、一つずつ爪にテープを巻いていた。(60歳代後半・女性)
・日光に当たると爪が黒くなるので、手袋をして外出している。皮膚に日光が当たらないように、長袖を着たり、日焼け止めを塗ったりしている。(60歳代後半・女性)