生活 / 病気になってからの生活習慣や気晴らし
インタビューに協力してくださった方は、大腸がんと診断されたことをきっかけに、これまでの生活を振り返り、食事や運動などの生活習慣に気をつけるようになっていました。また、退院後の日常生活で、気晴らしや気分転換として、趣味や外出などの余暇活動も大切なものだと考えられているようでした。
ここでは、大腸がんを経験された方たちの、生活習慣の工夫や余暇活動についてのお話をご紹介したいと思います。
食生活
大腸がんの術後は、腸の運動が十分に回復していないこともあり,食物繊維の多い食べ物や、消化しにくいものは避ける必要があります※1。手術後半年〜1年経てば、特に制限はなくなることが多いようです※1。
食事にどの程度気をつけているかは人によって差があるようでしたが、それには、術後の経過時間や、排泄のコントロールがどの程度保たれているか、また、再発・転移の状態などが関係しているようです。便がゆるくならないことを意識して食事に気をつけているという方もいました。このことに関しては、<ストーマ・排泄>をあわせてご覧ください。
食生活についての情報は、医師や看護師から聞いたという方もいれば、自分でインターネットや本を調べたという方もいました。食事の制限により、好きな物を食べられなくなることがストレスになる場合もあるようです。
・手術後、食物繊維の多い食べ物はあまり食べるなと言われている。好きなきのこや天ぷらが食べられない。(60歳代後半・男性)
肉や魚を控え、大豆食品や野菜を多く摂る、感染の可能性のある生ものやカビを避ける、ショウガや唐辛子などで体の冷え対策をしている、というお話が聞かれました。
・手術後、消化に悪いものは食べないようにし、今もなるべく食べないようにしている。妻と二人で本やインターネットで調べた。(50歳代後半・男性)
・娘が送ってくれた食事療法の情報を参考に、肉や魚(小魚は除く)を減らし、野菜を多く摂るように心がけている。(60歳代前半・女性)
・食事療法の本を読んで、四つ足のお肉を控え、鶏肉や卵、大豆食品をとるようにしている。生ものやカビなどからの感染にも気をつけている。(60歳代後半・女性)
その他の生活習慣(体重管理、運動、お酒など)
大腸がんと診断されたことをきっかけに、運動や体重管理を心がけたり、お酒やタバコをやめるなど、食事以外の生活習慣を気をつけているという方もいました。高血圧や心筋梗塞など、がん以外の病気も持っている方は、がんと併せて注意しなければならないと語っていました。また、体調管理のために、血圧などを自分で記録する習慣が身についたという方もいました。
・自分の健康について気にするようになった。検査結果をはじめ、体調や行動を記録して、受診のときに医師に見せている。(60歳代後半・男性)
大腸がんを経験して以降、健康診断に行くという習慣が身についたという方もいました。
・手術後は、がんに対する意識が高まり、毎年検診に行くように心がけている。(60歳代前半・女性)
術後5年経過後の生活習慣の変化
ここまで、食事や体重管理、運動などの生活習慣に、意識して取り組んでいるというお話をご紹介しました。一方で、手術から時間が経つと、生活習慣への意識が薄れてくることもあるようです。特に、術後の経過が順調だった場合、生活習慣への意識が薄れやすいようです。ウォーキングに熱心に取り組んでいたという方は、術後5年経過して「卒業」した途端に、ウォーキングをやめたことを語っていました。
・術後、5年目の検査まではせっせか歩いたが、検査結果が大丈夫だと分かったら、だんだん病気の怖さを忘れて運動しなくなった。(60歳代前半・女性)
気晴らしや気分転換
趣味や外出など、気晴らしや気分転換となる余暇活動についてのお話をご紹介します。
家にいるといろいろ考え過ぎてしまうから、できるだけ外に出るようにしているという方がいました。また、笑いががんにいいと聞き、落語を聴きに出かけるという方もいました。
・がんには笑いが一番いいと知り、落語を聞きにいく。(50歳代後半・男性)
他に、ペットの犬と過ごす時間が一番癒されるという方もいました。
複数の方が、がんになる前から続けていた趣味(ゴルフや山歩き、家庭菜園、陶芸、歌、編み物など)を楽しむようにしているということを語っていました。病気になった後に、新たな趣味や習い事を始めたという方もいました。趣味の活動の中で、話し相手ができたり仲間と一緒に過ごせたりすることも、よい気晴らしや気分転換になっているようです。
・趣味や習い事などの仲間と過ごすなど、家に閉じこもらないで過ごせたのがよかったと思う。(60歳代前半・女性)
病気によって体力が落ちたり、排便のコントロールの問題から、余暇活動が制限される場合もあるようです。温泉につかるのが楽しみだったという方は、排便がコントロールできるか不安があるため、温泉に行くことができなくなったことを語っていました。
余暇活動に関して、これからどんなことをしていきたいか、希望や期待についてもインタビューでおききしました。体力が回復したら趣味の活動範囲を広げていきたいという方や、排便のコントロールが改善したら旅行など遠出したいという思いを語る方がいました。好きな料理を活かしてお店を持ちたいという夢や、寺を管理したいという夢を語ってくださった方もいました。今後の夢や期待を持つことは、病気と向き合うためのエネルギーにつながっているようです。
・好きな料理をこれから続けていって、お店をやれたらいいなという夢がある。(50歳代後半・男性)
参考文献
1.大腸癌研究会:大腸癌治療ガイドラインの解説(2009年度版)