生活 / 体験者からのメッセージ
がん体験者達は、がんの告知から治療、そして現在に至るまでの間、多くの不安や苦しみを経験してきたと語ります。それと同時に、周りからの支えや病気の好転などによる励ましや嬉しさをも経験したと語る人も多く存在しています。多くのがん体験者は、そのような経験の中で、がんになる前とは違う考え方や思いを持つようになり、またそのような経験を一つの教訓として自分の中に位置づけ、人々に伝えていきたいと語る人もいました。そして、自分達の語りが役立つと嬉しいという言葉が多く語られています。ここでは、女性特有のがんを体験したからこそ、すべての女性に伝えたいという子宮がん体験者達のメッセージを紹介します。
中には、他の人は自分のような体験をしてほしくないとの思いから、自分の失敗を教訓として伝えたいと語る人もいます。
・とにかく病気をした人が病気をしていない人に検診を受けるということを伝えていかなければいけないし(50歳代後半・女性)
がんを告知されたときというのは、その部位にかかわらず、本人や周りにとってなかなか受け入れがたいものです。インタビューに協力してくださったがん体験者達も、かつては自分のがんを受け入れることができず、何度も人生をあきらめようとしたと語ります。しかし、今になっては、抗がん剤治療による副作用で髪の毛が抜け、手術によって子宮をなくしたとしても本当の自分は変わりなく、そこに存在していることを認めるのが重要であると語っていました。また、そのような辛さや苦しみを肯定的に捉えることで乗り越えることができ、だからこそ今の自分が存在していると自分を誇らしく語る人もいました。
・つらさを乗り越えると、気持ちから何から違ってくると思います(50歳代前半・女性)
多くの人が、「自分はがんになることはない」という考えから定期健診やがん検診を受けないでいます。特に、女性特有のがんである子宮がん検診の場合、女性達は婦人科に行かなければいけないという事実に不安や迷いを感じることが多いです。がん体験者達は、告知される前の自分達もそのような安易な考え方や迷いを感じていたせいで、更なる手遅れをもたらしてしまったとの後悔の気持ちを語っています。また、多くの人々が自分たちのような後悔を他の人が経験しないためにも自ら検診を受けること、そして自分の体調管理に気をつけてほしいとのメッセージを伝えていました。
・自分の病気がどの程度のものか、そして、自分の現在の状態はどうなのかを知らないとだめだと私は思っています(40歳代後半・女性)
・早く検査して、早く治療したほうが日にちはかからないから、検診だけは受けたほうがいいとつくづく思います(50歳代前半・女性)
・規則正しい食事とか、軽い運動とか、大事だと思います(音声なし)
だから、年配の方たちはふくよかな方が多いので、やっぱり少し体重を減らしたほうがいいんじゃないかなと思うんですよね。だから、規則正しい食事とか、軽い運動とか、大事だと思います。
“定期検診や体調管理を怠けず、また手遅れさせず”といった「自ら自分の身体を守る」という考え方は、がんになった後も同じく重要であるように考えられます。ある人は、がんの治療にあたって、すべての決定を医師に任せっぱなしの患者にはなってほしくないと語ります。その代り、たとえば、自分のがんについてもっと勉強する、自分に合うがんの治療方法や体調管理法を工夫するなど、患者自身がより積極的に自分のがんと正面から向き合ってほしいとのメッセージを伝える人もいました。
・正しい情報を得ていかなければいけないと私は思います(50歳代後半・女性)
・患者さんがもう少し勉強してほしいなというのが願いです(40歳代後半・女性)
がんの告知を受けた際、周りに心配かけまいと、自分ががんになったことを秘密にしたがる人は少なくありません。インタビューに協力したがん体験者達も、最初はそのような考え方から、自ら自分を孤立してしまっていたとのことを語ります。がん体験者達は、自分たちもそうであったからこそ、周りに知らせたくない気持ちは共感できるとも語っています。しかし、がんとの闘いを自分一人で続けるのは、とてもさびしくて辛いことであり、むしろ、がんに勝つための助けにはならないとの語りもありました。また、自分のがんを周りに知らせることによって、周りとの新しい関係や援助をもらうことができたため、がんとの闘いの中で多くの励ましや力を得ることができたと語る人もいました。
・悩みは一人では解決できない場合もありますから(40歳代後半・女性)