生活 / 経済的負担
子宮がん治療を受けることによる経済的負担についてご紹介します。
がん体験者の就労状況調査では、がん体験者の3人に1人は、転職・離職・失職、4割は減収という厳しい就労環境が浮き彫りになっています(がん患者の就労・雇用支援に関する提言,桜井なおみ他.2010)。
インタビュ-でも、治療により仕事との両立が困難となり、収入が減るのに、治療による高額な支出が増えていることが語られました。また、抗がん剤治療の影響により脱毛が起こることからかつら代、リンパ浮腫予防のための費用、がんと闘うための体調管理、維持などにお金がかかることが語られました。
・仕事をしている身としては、仕事は休まなければならないし、収入はない、挙げ句の果てに支出はあるという状況に置かれます。(40歳代後半・女性)
・本当に抗がん剤とか、高いお金がかかるでしょ。何とかならないのかなと思います。なぜ、がんだけ別なのかしらと思います。(40歳代後半・女性)
・美容院のかつらは3万円くらいだからよかったけど。(音声なし)
美容院の(かつら)は3万円くらいだからよかったけども、あっち(デパ-ト)のはちょっと(高くて・・。)。取っておいて、うちの娘が、髪が抜けたという患者さんにあげるって1個持って行ったの。1個は家にある。「あんた、かぶる?」って言ったら、いらないって。
・がんをすればお金がかかります。あれも食べなきゃだめ、これも食べなきゃだめと言えば、お金に関係なく栄養をつけていました。(30歳代後半・女性)
手記では、このように多くのお金が必要となりますが、医療者から治療費に関する詳細な説明がなかったため、戸惑いがあったことが記されていました。
・パンフレットには費用のことが書いてありますが、自分の入院や治療がどれだけの金額になるのかは、分からないのです。(手記より)
看護師から、入院に関する説明もありましたが、費用のことには、全く触れませんでした。パンフレットには費用のことが書いてありますが、自分の入院や治療がどれだけの金額になるのかは、分からないのです。いくら健康保険限度額認定の手続きをするとは言え、入院にかかる期間・費用の問題は、その日暮らしのサラリーマンには一番大きな問題なのです。
お金を支払うアテがなければ、治療拒否だってありうるのです。安心して治療を受けるには、まずお金が必要なのです。怒りつつ、費用の質問をしたところ、目安となる金額を示してくれました。お金を払えない人にも治療を施す方針なのかもしれませんが、「この程度の費用がかかりますが大丈夫ですか?」程度の確認が必要だと思います。
一方で、インタビュ-では高額療養費制度や民間の医療保険を活用していることが語られました。
手術治療を受けた場合は高額療養費制度の適応となりますが、外来通院による抗がん剤治療の場合では、一定額に達せず、生活費や貯蓄を切り崩して治療費に充てていた人がいました。
高額療養費制度については下記(厚生労働省HP)をご参照下さい。http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/100714.html
・退院してしまえば高額医療費までいかないけども、月に医療費が2万円、3万円と出るのが一番きついですね。(30歳代後半・女性)
在職中の人は傷病手当金、他の人は民間の医療保険に加入しており、お金の面で家族に迷惑をかけないで済んだ、あるいはさほどお金に困らなかったと話していました。
しかし、民間の医療保険への加入タイミング、歳をとることや病気既往に伴なう、保険料増額から、民間の医療保険を維持することが負担、あるいは見直したと語る人もいました。
また、歳をとることにより公的医療保険が老人保健法の適応※となり、従来の自己負担額が軽減され、民間の医療保険を解約した人もいました。
※現在は、平成20年より高齢者の医療の確保に関する法律が導入され、長寿医療制度が変更になっています。
・入院費はそんなにね、自分でそういうのを掛けていたからそんなに苦にならなかった。(50歳代後半・女性)
・入っていた保険が68歳になったら保険料がグンと高くなったんですよ。倍くらい払わなければならないもので、ちょっと馬鹿らしいなと思ってやめちゃった。(40歳代前半・女性)
・自分が病気したもので家族全部の、(民間の医療)保険を見直ししなければと思って、ただ無駄に掛けてもと思ったりしています。だからみんな直しました。(50歳代前半・女性)
がんの進行度によって、治療内容が異なるため医療費にも違いが生じます。なかには、命はお金に代えられないと話す人もいました。
手記からは、がんにより仕事を失なうことで、収入源だけではなく、社会的な自分の居場所がなくなることに危機や不安を感じていたことが記されていました。
・お金で命が買えるんだったら、何ぼでも出してもいいなとだれでも思いますものね(60歳代前半・女性)
・一人世帯なので、仕事を失うと収入源を失うだけでなく、社会的な自分の居場所も無くなることになり、退院しても気持ちが晴れやかではありませんでした。(手記より)
私の場合は一人世帯なので、仕事を失うと収入源を失うだけでなく、社会的な自分の居場所も無くなることになり、退院しても気持ちが晴れやかではありませんでした。このときばかりは、主婦という立場のある人が少々羨ましく感じました。この不況の嵐の中、青森という土地で、病気を隠さないで就職できるのか、正直不安です。