生活 / 病気と仕事の関わり
がん治療は、生活に大きな支障をきたします。さらに、仕事にも大きく影響することが考えられます。ここでは仕事との関わりに関する語りをご紹介します。
治療を優先すると、仕事を休まざるを得なくなります。今回のインタビューを受けて下さった方々は、職場の上司から休むように言われたり、自分自身から休んだりするなどして、治療に専念するために仕事を調整されていました。中には、調整ができず治療に入れなかった人もいらっしゃいました。多くの方が、治療に専念するまでの過程だけでなく治療後も、仕事の調整や仕事との関わり方に悩み、辛い思いをされていらっしゃいます。
治療前に生じた戸惑い
以下の方々は、職場から理解を得られた方たちでした。治療にむけて会社の上司からは仕事を休むように勧められたようです。
・手術・退院後は、仕事欲はあるも会社から休むように言われた。(60歳代前半・男性)
次の方は、治療しながら仕事ができるように職場が配慮をしてくれました。例えば、抗がん剤治療時、治療の次の日は仕事をやすむ必要があったため、職場は週の後半を休めるよう柔軟な対応をしてくれたようです。
・上司に定時で帰ることをすすめられるなど、職場の支えは本当に助かった。一方で職場に負担をかけてしまったと思う。(50歳代前半・男性)
一方、次の方は治療に専念するために自分で休むことを決断されました。
・大学で地理学を教えていたが、治療に専念するためやめた。学生に教えるのを楽しみにしていたので残念。(60歳代後半・男性)
中には、自営業のため、仕事の調整が難しい方もいらっしゃいました。
・仕事があるので、すぐに入院できなかった。(70歳代後半・女性)
治療後に生じる葛藤
仕事を調整しながら治療されていても、困難や不具合が生じてやむを得ず退職せざるを得ない場合もあります。職場を長期間休むことが出来ず、仕事をやめざるを得なくてつらいこともあるようです。さらに、治療終了後でも仕事を再開することへの恐れが生じたようでした。
・抗がん剤の治療後、合併症の危険性のため絶対安静で仕事を3ヶ月休んだ。これ以上迷惑をかけられないのでやむを得ず退職をした。(60歳代前半・女性)
・仕事を失ってからうつ状態に陥った。周りがみんなはたらいていることに、罪悪感を感じた。(60歳代前半・女性)
・もし、がんのことを隠して働いたとしても、肺炎や感染症にかかって相手に迷惑がかかる、と考えたら、働けない。(60歳代前半・女性)
中には、治療のほうを優先して仕事をされる方もいらっしゃいました。次の方は、健康を優先され仕事は無理のない程度にする選択をされています。
・仕事は午前中やれば午後休む感じで、無理せず控えめに。あまり疲れない程度に。(70歳代前半・男性)
この方の場合は、仕事を部分的に続けられる環境だったようです。
あるいは、職場の仲間に仕事面で配慮してもらえたという語りも聴くことがみられました。
・まわりに「無理はしないでね」と配慮してもらった。(50歳代後半・男性)
一方、本人に仕事をさせたくないと家族が気を遣い、仕事を一切辞めたという方もいらっしゃいました。次の方は、周りから病人として扱われることが重なり、仕事の機会を失ったという体験をされていらっしゃいます。
・がん経験が周囲に悪い印象を与え、農作業の話がこなくなってしまった。(60歳代前半・女性)