発見 / 治療法の選択・意志決定
ここでは、がんを治療していくための具体的な方法を、インタビュー協力者がどのような状況で決断したのかについてご紹介します。
本来は、医師から治療法の選択肢について詳しく説明を受け、自分自身も時間をかけて治療法について調べたうえで選択をするのが望ましいかたちです。しかし、実際は十分な情報や時間が得られないままに、やむを得ず限られた状況で決断を迫られる例が多く見られます。
今回インタビューに協力してくださった皆さんも、決断に際してさまざまな制約があったことを話しています。
外科手術による摘出には、病巣を含めたより大きな部位を切除しなければならない場合が多く、厳しい決断を迫られることになります。肺は大きく上葉、中葉、下葉の3つに分かれており、がんの発生する場所によっては、次の方の場合のように一枚分の肺すべてを摘出することもあります。
●患部が気管支に近く、手術には左肺下葉すべての摘出が必要と言われた(50歳代前半・男性)
インタビュー協力者のなかには、担当の医師を信頼しており、決断を任せた方もいれば、自分の意見を言えないまま手術を実施することになったという人もいました。
小さながんを取るのに大きく肺が切り取られてしまうことに疑問を持ちつつ、自分の考え方は素人意見だからと、疑問を引っ込めてしまったことを後悔していた方もいました。
また次の方も、治療法の選択の時間が与えられないうちに手術が決まってしまったことに不満を持っていました。
●がんは肺の端のほうにあり、大きな部位切除の説明に疑問を持ったが、自分の意見を言えなかった(70歳代前半・女性)
●手術を迫られ、考えがまとまらないうちに実施(60歳代前半・女性)
次の方は、担当の先生との面談の際に病気のことで動揺してしまい、治療法の判断をすべて医師任せにしてしまったことが良くなかったと話していました。
●先生に「はい」「お任せします」ばかりで、選択肢について質問しなかった(50歳代後半・男性)
ご家族や同室の患者さんなど、周囲の方々の意見を聞いて決断をしたというお話も、今回のインタビューでは聞かれました。自分では手術を受けるつもりでいた次の方は、息子さんたちを交えて主治医と話し合った結果、合併症の危険を考え、放射線治療に変更したそうです。
●手術を考えていたが、息子たちと話し合い、合併症の危険の少ない放射線治療を選んだ(70歳代後半・女性)
次の方の場合は、同室の人や同病者の経験や意見を聞く機会にめぐまれ、そのことが自分の治療法の決定にとても役立ったと話していました。
●抗がん剤治療を経験した知人の話を参考にして、手術を選択(50歳代後半・男性)