関係 / 同病者
通院や入院の際、同病者であるがん患者に出会うことがあります。そのとき、同じ治療を行っている患者や入院時の同室の患者は、おたがいに気になる存在になるようです。ここでは、同病者に関する語りをご紹介します。
同病者の悪化と死
同室の同病者の症状の悪化や死は、ときに非常に不安な体験になります。今回のインタビューでは実際に同室のがん患者の死に直面した方はいらっしゃいませんでした。しかし、自分よりも先に退院をした同室の方が亡くなったという知らせを聞き、驚いたという方がいらっしゃいました。
・同じ部屋の先に手術した同病者が亡くなったことでびっくりした。いい気分はしなかった。自分より元気で手術も早かったのにすぐに逝ってしまった。(60歳代前半・男性)
また、同病者が短期間で容態が急変したことを間接的に聞き、驚いたという体験をされた方もいらっしゃいます。
・全員がん患者の大部屋で、周りの人から他の患者の悪化した話を聞いた。 (50歳代後半・男性)
その他、退院後は年賀状などで連絡をとりあっていた方もいらっしゃいます。しかし、その後しばらくして連絡が途絶えてしまったと無念に思ったともお話してくださいました。
共感と励まし・連帯感
一方で、同病者からの共感や励ましで勇気付けられたという方もいらっしゃいました。
・退院後、治療中の同病の同僚から「絶対職場復帰してみせますから」という手紙をもらい、逆に勇気付けられた。(50歳代前半・男性)
中には、「病気になったもの同士でないと理解し合えない。お互いの悩みは元気な人に全然通じない」と語った方もいらっしゃいました。
また、同病者との連帯感を体感されたという語りもみられました。
例えば、治療中に偶然同級生と出会い、お互いに仲間意識が生まれたとお話された方と部屋が一緒になった方がいらっしゃいました。このような連帯感が安心を与えてくれ、闘病の力になることがあります。
・同病者同士の連帯意識に勇気付けられた。(50歳代前半・男性)
しかし逆に、この方は、特に同病者との治療方法や症状の違いに遭遇し、そのたびに一喜一憂してしまった体験も語られました。
・内視鏡手術が多い中で、自分は外科手術だったため、不安だった。(50歳代前半・男性)
治療方法において外科手術ができるかできないかは、現在の進行の程度を推測でき、同病者間で比較されやすくなるようです。手術ができることはポジティブに捉えられ、手術ができない方との間に遠慮や距離がうまれることもあったようです。
具体的には、外科手術でがん細胞を取ることができた方は、同病者から「手術できればいいよな、おれは手術できないんだよ」と言われてしまい、複雑な心境になったとおっしゃっていました。他にも、手術ができない方へは気を遣い、話しができなくなってしまった、という体験をされた方がいらっしゃいます。
話題への気遣い
手術ができない方との間で距離感が生じる体験以外にも、話題に気をつかうことがあるようです。例えば、闘病により退職をせざるを得なかった方に仕事の話をしてしまい、後悔したという方もいらっしゃいました。
・同室の人仕事について聞いたときに、「辞めた」と言われ、悪いことを聞いたなと思ってしまった。(70歳代前半・男性)