治療 / 手術後の経過
肺がんを摘出した後、その副作用として息苦しさ・手術の傷の痛み、のどの痛みなどが主な症状として現れることがあります。
ここでは、手術の後、みなさんがどのように過ごされているのか、その気持ちを含めた語りを紹介します。
退院までの日数
今回お話くださった方は、全員が手術後に退院された方々でした。
手術のために入院されてから退院されるまでの日数は、1週間から40日間まで、幅がありました。1週間から10日間で退院された方は、術後の経過が軽いと思われる方も多かったようです。
インタビューにお応えくださった方の中には、比較的初期の段階で異変が発見され、がんという確定の診断を受けたのはかなり時間が経ってからで、ご自分の肺がん体験をさほど重くとらえているわけではないような方もおられました。
手術後3日目には病院内を歩き、退院も9日と早かったうえに、退院の日にすぐ草むしりができるなど、すぐに日常に戻れたことは、ご本人がご自身の経験を「軽かった」と思われる一つの理由だと言えそうです。
なかには、手術後長く入院させない方針の病院にいたのですぐ退院したという語りも見られました。また、手術の直後は、他の人に比べて長く管を付けていなければならないなど、医療者側も慎重に対処する必要があったものの、比較的早くに退院したという方もいらっしゃいました。
早めに退院する場合、再発を防ぐために、抗がん剤治療を勧められ、一時的に投与したという選択をした方もいらっしゃいましたが、他方で、退院前の検査の結果、医師と相談して、抗がん剤治療を施さない決定をした方もいらっしゃいます。
●管を長くつけていたものの、それが取れたらすぐ退院でき、抗がん剤治療も選択しなかった(50歳代後半・男性)
日数に関わらず、入院しているだけで体力が落ちてしまう、という声が聞かれました。
次に紹介する方さんは、手術後は1週間から10日と早めに退院できたのですが、入院してから手術するまでが長く、その間に体力が落ちたとおっしゃっていました。
●入院したら歩けないので、体力が落ちてしまい、手術後のリハビリも大変だった(70歳代前半・男性)
手術後の不具合と、そのときの気持ち
肺がんの部位を摘出した直後は、息苦しさや傷のうずきなど、さまざまな不具合が見られ、またそれぞれの状況に対しても思いも幅が見られました。
今回の語りの中には、手術後の傷のうずきや息苦しさを感じ、今でもときどき咳こんだりしていますが、そのことに対しては、「多分これからもつづくのだろう」と、ご自身のなかで折り合いをつけているような語りが見られました。
一方で、声が出なくなるという体験をした方の中には、その説明を事前に医師から聞いていたものの、やはり悲しい気分になったと感じた方もいらっしゃいました。
●手術後に声が出なくなり、悲しくなって涙が出たこともある(50歳代前半・男性)
ほかにも、以前に体験した胃がんの手術の体験と比べて、夜うずく以外はさほど変わりがなかった、とおっしゃる方や、手術後の痛みよりも、ギブスをつけて身動きが取れなかったことがとても辛かったと話されている方、さらに、手術後の見た目を気にして、「人さまには見せられない」と話している方もいらっしゃいました。
手術後に行ったこと
手術後は退院に向けて、歩く訓練など、さまざまなリハビリが行われていました。
「外科療法」のところでもご紹介したように、次の方は手術前から、息を吹き込む器具を用いて肺を鍛えるように言われていました。しかしご本人はもともと肺が強かったようで、手術後もその器具に息を難なく吹き込むことができていたようです。
●階段の上り下りと、息を吹き込む練習はすぐクリアできた(70歳代前半・女性)
他にも、一日45分ほど、リハビリ室での訓練と、階段の上り下りによる歩行訓練を退院までの間にこなしていた方もいらっしゃいました。この方は特に、リハビリ室での指導の下の訓練のおかげで動けるようになり、ご自身はそれがよかったと話されていました。
また退院後も、ご自身の体力低下を心配して、意識的に家の回りを歩いたり自転車で出かけたりしていたと話されていました。