生活 / がんと生きる姿勢
ここでは、がんとわかって治療を経たあと、日々どのように感じ、考えながら毎日を過ごされているか、ということに関する語りをご紹介します。がんを抱えている事への不安を語られた方がいらっしゃる一方で、逆に、がんの経験によって生まれた意気込みや自分なりの生き方をお話しされた方もいらっしゃいました。
不安・意気込み
治療を終えた後も、転移や合併症・副作用に対する不安を抱える、という語りは、多くみられます。たとえば、「もしがんが出やすい体質ならば、現在治療中のがんが治っても不安」「治療をやめて一ヶ月経ったが、これから合併症や副作用の症状が強く出ないか心配」というような語りがみられました。
また、不利な情報を知ることで不安が生じるのを避けるために、とくべつ治療法について調べたりしないという方もいらっしゃいました。
・たまたま取ったリンパ節の一カ所に転移があったので、ほかにもっと転移がひろがっているのでは、と不安になった。(60歳代後半・男性)
・診察を受けに行く度に、何を言われるかいまだに緊張する。異常なしと言われるとまた元気が出る。(70歳代前半・男性)
このように不安がある一方で、不安を抱えながら生きていく上での、様々な覚悟や意気込みについて語られた方もいらっしゃいました。
覚悟の具体的な内容としては、「不安もあるが、再発した時は一生懸命やる。」「リンパ節じゃこれはもう生涯の付き合いだろうなと、ある程度自分で覚悟をした。」といった声がありました。髪が薄くなっても、やはり治すためには我慢して打たなければならないと思ったという方もいらっしゃいました。
また、日々の生活雑務が、病気の不安を忘れさせてくれる大切なものだという方や、前向きに生きることの大切さを語られた方がいらっしゃいました。ただし、積極的に前向きに生きようという声がある一方で、前向きに考えないと生きていけないという声も聞かれました。
死ぬこと・生きることに対して(がんの捉え方)
今回のインタビューでは、自分の生や死、あるいは自らの病気に対してどのように考えながら日々生きていらっしゃるかを語って下さった方がおられました。
死ぬこと・生きることに関しては、自分は生かされていると感じている方が複数いらっしゃいました。同時に、生かされている分、できることは何でもやろうという決意を語られていました。ただ、その結論に至るまでは様々な葛藤を経験されたようでした。
・合併症などにかかって終止符を打ってしまった方がいいのかと思うこともある。しかし、これも人生の修行だと思っている。(60歳代前半・女性)
またこの方は、「正しいか間違っているか分からないけれども、自分で自分を守っていくことが周りにこたえていくことと思っている。自分が生かされている意味を知りたい。」ともおっしゃっていました。
・自分の命は親からもらったものであり、自分は生かされている存在。何をやっても運命だから、何でもやってやろうと納得している。(50歳代前半・男性)
年齢と死に関しては、自分は死んでもおかしくない年と考える方がいらっしゃいました。一方で、若いときはいつ死んでもいいと思っていたが、年をとる程に死にたくなくなってきた、という正反対の意見をお持ちの方もいらっしゃいました。
・平均寿命を過ぎると、死んで当たり前の年だから、癌で死のうが何で死のうが関係ない。(60歳代後半・男性)
がんの捉え方に関しては、病気を「もうそんなに無理して働くことはない」という自分の体からのメッセージとして捉える方がいらっしゃる一方で、「この世における修行」と捉えている方もいらっしゃいました。また、「病気との共存」という捉え方もありました。
・無理をしてきた自分に対するメッセージとして病気を捉える。(60歳代前半・女性)
・病気と仲良く付き合う、「共存」する。趣味をたくさん持って、どうせなら笑って生きる。(60歳代前半・男性)
この方は、病状が悪化した場合、再び手術して自由に動けなくなってしまうよりは、自然体で生活したいともおっしゃっていました。