診断時:30歳代後半 インタビュー時:診断から40年(2009年) 性別:女性 保健医療圏:上十三地域 世帯状況: 備考: |
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筋肉も取ってるから、上げれなかったの。頭のほうが先に下がってね。これ、洗濯したいなと。家にみんなやるよりと思って、バケツで小さいもの、ハンカチとかタオルとか洗ってるでしょ。そうすると、よその人が来て、「あんた何、手術したの?」って聞くんですよ。そうすれば、しゃべりたくなくて「盲腸手術したの」って。ここ手術したって言いたくないもの。「私、盲腸手術した」って嘘ついてさ。
――そうですか。盲腸と人には言って。
人には盲腸手術したのって。今一回会えば、あと会わない人でしょ。聞かれても「盲腸手術した」って言ったものですよ。やっぱり、これを手術したということは、女としては本当にだめなものだと思ったの。
――やっぱり言いたくない、聞いてほしくないって。
聞いてほしくないと思って、本当にそう思ったんでないべが(そう思ったんでないでしょうか)。
――やっぱり女として、乳房を取ってしまうということが。
一番つらいことでないかなと思うよ。そのとき恥ずかしくてね、「盲腸手術した」って。盲腸手術した人が、洗濯場にいてかけられないの。こっちの腕が上がらないからね。こっちを止めてから、こっちをこうして上げて。
――左手で止めてから、今度は左手で右手を持ち上げて。
そして、ようやく洗濯ばさみで。リンパを取っていれば、本当にやれないもんだ。
――普段の生活の中でやることに、いろいろ不便が出てくるんですね。
不便が出て、本当につらかった。人には話せなくて、自分で「盲腸を手術した」って、隠して、隠して。
――言いたくないし。
言いたくないもんでないべが(言いたくないものでないでしょうか)と思ってさ。口にしたくなかったもの。恥ずかしくてね。
――それを今はお話しできるようになって。
今は人にも話せるようになった。(笑)