治療 / 放射線療法
放射線療法は、放射線を照射した部位のがん細胞を死滅させる治療です。手術療法では、目に見える範囲のしこりを取り除くことができますが、目に見えない部分にがん細胞が残される可能性もあります。そのため、乳房温存術を受けた人、リンパ節への転移が4つ以上あった人、しこりが大きかった人(5cm以上)の場合、放射線療法を受けることで、再発する確率が低くなるとされています※3。
しかし、放射線療法は、約5週間(25回)の照射を続けなければなりません。インタビューに協力してくださった方々は、友人や家族の助けを受けながら長い治療の間、毎日病院に通い続けてきたことを語っています。
・25回は大変だったが、仕事もしながら、同じ時期に放射線療法を受けていた娘と一緒に通い続けた。(40歳代後半・女性)
・手術をして抗がん剤が終わった後、すぐに放射線を25回、毎日通った。お友達が毎日おかずをつくって来てくれてすごく助かった。(60歳代後半・女性)
・遠方の病院まで、主人に車で送ってもらって通い続けた。(50歳代後半・女性)
その日の治療を終えた後に外食をしたり、買い物に行くことを楽しみに通院を続けたという方もいました。
・放射線治療のあとA町に寄ってご飯を食べたり、買い物をして歩いたことが良かったのかもしれない。(50歳代後半・女性)
放射線療法による副作用には、症状が全身に及ぶものと、放射線を当てた部分のみに起きるものに大きく分けられます。
全身に及ぶ副作用として、宿酔(しゅくすい)や倦怠感があります。放射線療法を開始して数日の間に生じる食欲低下、吐き気・嘔吐、身体のだるさなどがその主な症状です。原因ははっきりしていませんが、ほとんどの場合一週間くらいで自然に良くなっていくといわれます。ご家族の差し入れなどで副作用を乗り切った方がいらっしゃいました。
・近くの中学校に通う子供が、家のものが作った差し入れを届けてくれて、それを食べていた。(30歳代後半・女性)
放射線療法を始めて2-3週間ぐらい経ってから、放射線を当てた部分の皮膚が日焼けをしたように赤くなる場合があります。治療が終了した後1-2週間程度でよくなってきますが、皮膚が黒ずんだり、その部分だけ汗をかかないなどの症状が1-2年続くこともあります。
放射線療法の副作用のために変わってしまった胸を、医師が丁寧に触りながら診察してくれたことが、安心につながっていた人もいます。また、放射線療法を受けたからこそ、今も元気でいられると考えている人もいました。
・放射線科の先生が必ず放射線をかけたところに異常ないか、全部体に触って診てくれるので安心できるんです。(60歳代後半・女性)
放射線療法が終了して、数ヶ月から数年経ってから、肺炎などを起こす場合が稀にあります。今回のインタビュー協力者の方々の中では、それに関する語りはありませんでした。
※3 日本乳癌学会(2006).乳がん診療ガイドラインの解説 2006年版 乳がんについて知りたい人のために,76-77,金原出版,東京.