発見 / 治療法の選択・意志決定
乳がんが発見されてからは、治療の項目にあるとおり、手術療法や放射線療法、そして薬物療法といったさまざまな治療の選択肢の中から自分にあう治療法を選択することができます。数ある治療法から何をどのように選択したか、その意志決定についての語りをここではまとめています。
手術療法には、乳房全体を切除する乳房切除術と乳房の一部分を切除する乳房温存術があります。インタビュー協力者のほとんどの方々が1980年代に治療をしており、当時の手術療法は乳房切除術が主流だったようです。
インタビュー協力者の方々もいわゆる全摘と呼ばれる、乳房切除術を選択しています。理由としては、全部切除したほうがさっぱり、あるいはすっきりするし、乳房温存術では再発する可能性があるのではないか、と考えていたからです。
・全部取ったほうが一番さっぱりするのかなという感じ。(50歳代前半・女性)
医師からは全体を切除する必要がないからと乳房を温存する手術の提案があっても、再発の危険性を恐れることや、自分ががん家系であるという思いもあったことから、すっきりするので自ら全部とってください、と乳房切除術をお願いしたという方も数人いました。
・医師からは温存術の話もあったが、再発の恐れもあるので私から全摘をお願いした。(40歳代後半・女性)
もちろん自らが治療法の選択をしているわけですが、その過程においては、医師や家族の後押しを受けたからこそ、最終的に治療法を決めて、治療を継続できたという方もいます。
・途中で治療をやめたいと思ったが、娘や医師に言われて続けたからこそ今がある。(60歳代後半・女性)
抗がん剤治療を行なっていた周囲の患者さんの様子がつらそうだったのをみて手術を選択した方もいます。この方は、自らの年齢や体力を考え、抗がん剤治療ではなく、全摘を選択した方もいます。
・他の治療よりも今後長く生きられるという言葉をきいて、医師も勧めてきたこともあり全摘にした。(40歳代後半・女性)
□セカンドオピニオン
病気の診断や、よりよい治療法の選択のために、主治医以外の医師や他病院の医師に病状についての意見を求めることをセカンドオピニオンといいます。
今回のインタビュー協力者の中には、セカンドオピニオンを受けた人はひとりもおりませんでした。その大きな理由のひとつが、インタビュー協力者の多くの方が治療を受けた1980年代にはまだセカンドオピニオンが広まっていない時代であったということです。
・今こそそういう話ができるようになったが、当時はセカンドオピニオンというものはなかった。(40歳代前半・女性)
また、セカンドオピニオンをとらない他の理由のひとつには、医師から告げられた時に自分もがんだということに疑いを持たなかったため、必要がなかったということも語られていました。
・自分はがんだという気持ちが強かった。(50歳代後半・女性)
また、数年にわたり乳房の異常について経過を観察してきてもらっていたからこそ、その医師を信頼しており、セカンドオピニオンの必要性を感じなかったという方もいます。
・ずっと診てくださった先生だから頼っていたし、よそへ行こうとは思わなかった。(40歳代前半・女性)
再発を経験した方は、1回目の当時はセカンドオピニオンに関する情報がなかったということですが、2回目の場合は、1回目の経験があったからこそ病院を信頼し、安心して医師の話も聞けたため、セカンドオピニオンをとろうとは考えなかったということです。
・1回目のときはセカンドオピニオンの情報もなかったが、2回目では安心して医師の話をきけていたのでセカンドオピニオンについては考えなかった。(40歳代後半・女性)