生活 / がんと生きる
病気をしたことで、つらいことや不安なこと、人とのかかわりで嬉しかったことなど、さまざまな経験をします。そういった経験を経て、病気との付き合い方、病気に対する考え方、さらには人生観をも変わっていきます。
今回のインタビュー協力者の方々は、乳がんをどう捉え、どう生きてきたかをそれぞれの視点で語ってくださいました。ここでは、乳がんを経験した人たちがどのように乳がんと向き合い生活をしていったか、など「がんと生きる」ことについての語りを紹介します。
病気の経験をへて、前向きになろうと考えなおしたり、強く生きていこうと考えるようになる人もいます。趣味を持つことで前向きになろうとされる方もいるでしょう。
・心配がないと言えばうそだけど、なるべく後ろを向かずに前向きに、趣味を持つことを始めた。(50歳代後半・女性)
また、ある方は病気の経験も「授業料」と表現され、その経験を生かして少しでも他の人の役に立てば、という気持ちにもなっていました。
・いろいろな経験も授業料だと感じている。(40歳代後半・女性)
がん経験を前向きに捉えられている人もいる半面、闘病のつらさから再発・転移を不安に思い、「がんのことは忘れたい」と思われる人もいます。ある方は、「私は、あの苦しみは味わいたくないというのか。」とおっしゃっていました。
病気の経験により、生き方を変えたり、考え方が変わったことによって、その経験自体を前向きに捉えられている人もいます。ある方は自分の生き方を変えることが出来たことで病気に感謝していると話されていました。
・病気をしなかったら自分を粗末にしていると思うのでこの病気に感謝している。(40歳代後半・女性)
病気をしたことにより、自分の考え方が変わられたことを実感される人もいます。考え方や人生観の変化を前向きにとらえている語りがいくつか聴かれました。
・病気になってますます強くなった。自分のことは自分でやるということが何でも大事じゃないかと思う。(40歳代前半・女性)
・今は自分を一番大切にしようと思っている。(40歳代後半・女性)
・病気とともに生きていくという気持ちが大事だと思う。(40歳代前半・女性)
発病してから数年たち、長い年月がたったことで乳がんになったことを後ろ向きにならずに考えられるようになったと語る人もいました。発病直後とは異なり、乳がんになったことをしっかりと受け止め、前向きに考えることが出来るようにもなったと言います。
・1回目のがんから15年たち、3回のがん経験を経ても生きたという自分の証があるからこそ、すごく楽な気持ちで受け入れられる。(40歳代後半・女性)
・長い年月がかかったが、がんに感謝して楽しく生きることが出来ていると言える。(40歳代後半・女性)
また、ある方は「がんとはお友達」と表現され、「がんとともに生きる」ことをご自分なりに受けとめているようでした。
また、自分の経験や生き方を知ってもらうことで、他の人に少しでも元気になってもらいたい、他の人の役に立てたら、という気持ちになる人もいます。
・自分は3回がんをしてもこれだけ元気。自分が元気な姿を見せて、落ち込んでいる人が少しでも元気になれたらと思う。(40歳代後半・女性)
・病気になって周りの人に対する思いやりができた。本当にみんなに感謝している。(40歳代前半・女性)
病気の経験をして、趣味を楽しむようにしたり、これまでの生き方を見直すことがあります。趣味や旅をとおして病気に打ち勝つパワーを溜めているのかもしれません。
・病気をしても自分の好きなことをすることが最高。旅はすべてを忘れさせてくれて「病気に勝たなくては」という気持ちにしてくれる。(70歳代前半・女性)
また、ある方は患者会に入り、いろんな人の話を聞くことで自分の命の考え方を変えられたと語っていました。患者会での話により、不安が吹っ切れて気が楽になった経験をされたそうです。
・生きた分が自分の命なんだ、もうかった命なんだと思えば、すごく気が楽になった。(70歳代前半・女性)
仕事の経験を経て、病気との向き合い方、気持ちの持ち方も変わってくることがあります。ある方は仕事で人と接すること、家庭以外の役割をもつことで、精神面で救われたと話されていました。
・うつ病のようになってしまったとき、仕事と家のことをやることで救われたと思う。(70歳代前半・女性)