生活 / 周囲の人との関係
治療・療養中は周囲の人にさまざまなサポートを受けることがあります.今回のインタビュー協力者の中でも、周囲の人のサポートに対する感謝の気持ちを話される人が多くいらっしゃいました,家族や友人,職場の同僚など,周りの人のサポートは病気を乗り越えるきっかけにもなるようです.しかしその半面,病気になったことで周りの人に傷つけられるような経験も語られていました。
ここでは,周囲の人から受けたサポートや(その関係性)周囲の人との関係性についての語りを紹介します.
□職場の人とのかかわり
病気をされてからしばらく仕事をお休みし,その後復帰される人もいます.その場合には,職場の人との関係やコミュニケーションにも大きな影響(を受ける)があるようです.ある方は、職場の人との関係で傷ついた経験と救われた経験の両方があり、そのエピソードを話してくださいました.
・職場の人とは普段と変わらない振りをしていた。陰口を言われたこともあり、傷ついたこともあるが、上司の「必ず戻ってこいよ」という言葉に救われた。(50歳代後半・女性)
またある方は、仕事の中で役割を得て、人と話したりする時間ができたことで精神的に落ち着かれ,そういった時間ができたことで「救われた」と話していました.
・病気になってからうつ病のようになっていたが、仕事を短時間からするようになった。仕事で人と話したりする時間ができたことで救われたと思う。(40歳代前半・女性)
また、病気のことをどのように職場の人に伝えるかについても、それぞれ考え方があります。職場内でうわさや偏見などが広まることに不安を感じる方もいるようです。ある方は、職場では本当に親しい人にしか病気のことは話さなかったそうです。
・親戚には病気のことを話していたが、会社の人には本当に親しい人にしか話していない。(40歳代前半・女性)
・患者会に入ったことで病気のことを内に秘めるのではなく言えるという環境に救われた。逆に会社では噂をされるのが嫌で話したくなかった。(40歳代前半・女性)
□以前からの知人との関係
職場や親せきとは異なり、近所の人や以前からの知人とのつきあいでは、どのように病気のことを伝えるか、また病気以前と同じようなつきあいができるか、など悩まれる方もいるようです。
ある方は,もともと食生活をアドバイスするような仕事であったため,「がんの要因=(イコール)食生活」という考えから,「口ばかり達者で…」と言われたことで嫌な気持ちになられたことを語っています.
・周りの人からがんになった原因について、容易に言われることが嫌だった。(40歳代前半・女性)
周囲の人に病気のことをどう話すか,ということについても,それぞれの人で選択がさまざまです.あえて周囲の人には病気のことを話さないという方もいます。また、話さないだけでなく、別の病気だったと嘘をつくことを選択されることもあるようです。
・病気のことは職場の人や隣近所の人に話す必要はないと思ったし、話さないで済むのであえて話さなかった。(40歳代後半・女性)
・最初の頃は恥ずかしくて周りの人には話せなかった。だんだんと時間が経って自信がついてきたのか周りの人にも普通に話すようになった。(50歳代後半・女性)
・周りの人に言いたくないという想いがあり、盲腸手術をしたと嘘をついたこともあった。恥ずかしくて、人に言いたくなくて辛かった。(30歳代後半・女性)
以前は、がんという病気に対してのイメージがあまり良くなかったためか、部落によっては差別に似た扱いをされることもあったそうです。昔といまでは、がんに対しての周囲の認識がだいぶん異なることが語りからもわかります。
・昔はがんという病気が恥ずかしい病気というイメージがあった。自分の体ことより家の人に申し訳ないなという気持ちだった。(30歳代後半・女性)
周囲の人へ自分の病気についてオープンに話すだけでなく,体験者として病気の相談にのってあげることもできる場合があります.ある方は,働いている飲食店のお客さんへ自分の病気のことを話したうえで、自分が元気であることをあえて知ってもらうようにしていると話されていました。
・お店のお客さんやその知人などに対してもオープンに病気のことを話している。元気な姿を見せて、安心してもらいたいという気持ちもある。(50歳代前半・女性)