生活 / 家族の思い・家族への思い
ここでは、インタビュー協力者が語った家族とのかかわりや家族への想いを紹介します。
言うまでもなく、がんを受けとめ、それを乗り越えるためには、家族のサポートが大きな心のささえになります。また、病気と向き合うと同時に家族とも向き合う時間をもつことができ、家族関係が変化していくこともあります。
□ 妻として/夫への想い
家族の理解やかけられる優しい言葉が余計につらく感じてしまう経験もあります。
ある方は普段何も言わない夫に「元気にいてくれ」と言われたことでつらい気持ちになられたことを語られていました。
・夫は心配してくれているため何も言わないが、「元気でいてくれ」「長生きしてくれ」と言われたときはつらかった。(50歳代後半・女性)
また、病気をしたことにより、夫が家事などを協力してくれるようになり、夫の変化に気づき、サポートを実感することもあります。
・病気をしてから夫が何かと手伝ってくれるようになった。病気をすると、人のありがたみが良くわかる。(50歳代前半・女性)
病気を知ったときには、少なからずパートナーである夫にも衝撃を与えます。ある方は、ご主人が本人にショックを受けさせぬよう、気丈にふるまおうとしてくれたエピソードを話してくださいました。
・夫は自分が弱みを見せたら私がもっと弱くなると思ってか、気丈にふるまってくれた。(40歳代前半・女性)
ある方は、夫との死別後にがんが見つかり闘病生活に入ったため、入院することも療養することもできたと考えていることを語られました。
・夫はトイレに行くのもやっとの状態で、病院に行くのもすべて付き添っていた。夫が亡くなってからがんが見つかったから、手術も入院もできたと思っている。(70歳代前半・女性)
□ 母として/子どもへの想い
家族ががんを体験していることから、「がん家系」であると実感する人もいます。また、自分ががんになったことにより、「がん家系」を心配して、子どもたちには同じ病気になってほしくないという想いもあるようです。そのため、子どもには必ずがん検診に行って欲しいと話されている人もいました。
・父、姉、兄、妹ががんである「がん家系」であった。だからこそ、自分の子どもたちには遺伝してほしくない。(50歳代後半・女性)
・まずは身内から、身近なものからと想い、娘には検診を必ずするように話している。(40歳代後半・女性)
母親としては娘にがん検診を受けてほしいと考えますが,母親の闘病をみているがために検診から足が遠のいてしまうという場合もあります.
・次女は母親をみていて検診を受けているが、長女は度胸がないのか検診を全然やらない。(70歳代前半・女性)
乳がんをきっかけにして、最期の生き方を考える人もいます。ある方は、最期の生き方をどう子どもたちに伝えていけばいいか考えていることを話されていました。
・最期は家で死にたいと考えている。みんなにありがとうを言って死にたいと考えている。(40歳代後半・女性)
またある方は、乳房切除のきずあとを見たときの反応について、母親として子どもと接するとき、また祖母として孫と接するときのエピソードを語っていました。
・切除した乳房を見たときの娘や孫の反応は素直だったので、冗談を言って笑いあっていられる。(40歳代前半・女性)
乳がんがわかったとき、家族へどのように話しをするかはとても悩まれると想います。親として子どもの人生を心配するからこそ、隠さずにすべてを話そうと考える方もいます。
・乳がんになったことは全て隠さず話したところ,子どもは動揺していた。(40歳代前半・女性)
□ 娘として/親への想い
病気をきっかけに、親にさまざまなサポートをしてもらい、改めて親のありがたみを実感したり、親へ迷惑をかけることで「親不幸だな」と感じることもあります。あらためて、親との関係性を見つめなおすことになることもあるようです。
・入院中に母親が隣のベッドに入院している人の手伝いも一緒にやってくれた。親不幸だなとも思ったが親っていいな、とも感じた。(50歳代前半・女性)
ある方は、病気をきっかけに,家族の体制が変わってしまったことを話して下さいました.
・病気をしたことをきっかけに、同居していた姑と別に暮らすようになった。(60歳代後半・女性)
□ きょうだいへの想い
同居する家族だけでなく、同じがん体験をしたきょうだいに対する想い、きょうだいへの影響を語る人もいました。
・同じ乳がんで亡くなった双子の妹から患者会を紹介してもらった。(50歳代後半・女性)