診断時:40歳代前半

インタビュー時:診断から19年(2009年)

性別:女性   保健医療圏:上十三地域

世帯状況:

備考: 

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――反対はしないで。取られた後はいかがでしたか、ご主人は。

 

うちでは何にも言わなかったけども、私はやっぱり見られたくない、この体をね。やっぱり見られたくないよね。1年近く見られたくないと思ったね。

 

――ご主人に?

 

だから、部屋なんかで下着を取り替えるときも、いたところでは取り替えたくないと思いましたね。必ずブラジャーを先にかけて、シャツを着るのはいいけども、「どれ、どんな傷なの? 見せて」と言うことはないし、それはなかったね。

 

――ご主人の前では見せない?

 

見せたくないっていうのかな。それは1年くらいかな。そのくらいはあったと思いますよ。

 

――1年くらいたってからは……。

 

「見せて」って言われたことはなかったですけどもね。1年くらいかな。いつから見せたかわからないけども。見せたくないと思ったのはそのくらいはあったと思いますよ。

 

――その後は徐々に抵抗がなくなっていったんですか。

 

でも、今でもやっぱり、お風呂なんか上がったときに、うちで来ると思えばパッとこうしますよね。主人の前では裸になるってことはないですね。

 

――そうですか。ご主人の前で、今でも。失礼ですけども、40代のまだ、お若いときですよね。そういう夫婦関係とかは、すごく立ち入ったことなので、お答えにならなくても、もちろんいいんですけども。

 

1年くらいはなかったかな。

 

――そうですか。

 

なかったです。(笑)そばに来るって、言えば何ですけども、嫌だったですね、やっぱりね。抵抗がありましたよ。

 

――それについてお話しするわけではなくて。

 

普段話はしますけども、でも、夫婦の関係というのはなかったですね。

 

――やっぱり嫌で?

 

うん、受け入れたくないというか、体があれするって言うのか。1年くらいはもう、うちの人も若かったけどもね。それはなかったです。

 

――ご主人のほうはそれに対しては?

 

別に何にも言わなかった。

 

――そうですか。

 

あとの話は何でもしゃべって笑ってるんだけども、それは。多分、そばに来ても、私が嫌だって言うから、そうかっていう感じだったんじゃないかと思う。

 

――表立ってそれについてというか。

 

男だからやっぱりね、そういうときもあったみたいだけど、私が嫌だって言ったらそうかという感じだったと思う。「悪いね」と言えば「いいよ」というような感じ。何か体を見せたくないというか、やっぱりそれだったんでしょうね。

 

別にケンカをしているわけでもないし、普通と同じなんだけども、夫婦関係になるのは嫌だと思ったんじゃないのかな、自分で。1年以上なかったと思いますよ。同じ部屋にいて、同じところに寝てるんだけども。

 

――お休みになるのは一緒にお休みになるけども。

 

ベッドじゃないけども、別々の1つずつのベッドだけど、それでもなかったですね。

 

――そこから徐々徐々にまた。

 

そうだと思います。完全には、1年以上は一緒にならなかったような感じがします。悪いなとは思ったんですけどもね。

 

――悪いなと。

 

自分ではね。(笑)「悪いね、お父さん」って言えば「いいよ」って言う。

 

――いいよって言ってくれて。

 

そうだったと思いますね。

 

――どこかで、だんだん受け入れられるようになったというか。

 

1年過ぎだったかなと思います。悪いなと思ったとこがあったのかな、自分のほうからあれしたのかもわからないですけども、そこはちょっと、いつからって言われても、わからないですけどもね。

 

――時間はかかったけれども、徐々に悪いなという気持ちもありつつ……。ご主人はその間は、「いいよ」ということで、待ってくださって。

 

そうそう。別に外に遊びに行くわけでもないしね。やさしい人だから。

 

――やさしい方ですね。

 

本当に協力してくれたと思います。遊びに行くわけでもない。だからって機嫌が悪くなるわけじゃないしね。私よりもお父さんのほうに忍耐力があったと思いますよ。だって、顔にも出さないし、腹が立つときもあったでしょうけども、それは顔に見せないし、普通にあれしているから。多分、私よりもお父さんのほうが忍耐力があっただろうと思いますよ。(笑)

 

――そうですか。最初、頑張っていたとおっしゃっていましたよね。旦那さんのほうが。

 

だから、私は後から聞いたんだけども、手術に私が入ったときに、今、思い出しても涙が出てくるけども、みんなの前で泣いたって。

 

――手術室に入った後にご主人が。

 

泣いたってね。だから、気丈に振舞っていたのかなと。

 

――手術室に入られたときに、ご主人がみんなの前で。

 

みんなが後で、「お父さん、気丈に振舞ってるけど、すごく落ち込んでいるよ」って。

 

――後から教えてもらって。

 

あんたもあまり落ち込まないで頑張らねばだめなんだってね。私の兄弟がね、みんな兄弟が来るでしょ。そのときに言ってくれたのね。やっぱり気丈に振舞っていたんだなと思ってね。手術場に入ったときに、1時間か2時間待っている間に、みんなの前で泣いたみたいで。

 

――そうですか。

 

私の兄弟が、出て来て麻酔が覚めたときに、主人はヒロシっていうんだけど、「ヒロシ、泣いたからね。気丈に振舞っているんだから、あんたもメソメソしていられないんだよ。ピリっと気持ちをしっかり持って頑張るんだ」とは言われたね。じゃあ、私の前では気丈に振舞ってたけど、やっぱり真はそうじゃなかったんだなと思ったね。悪いな、すまないと思ったけども。今でも思い出せば涙が出てきます。

 

それから、私はどこかで何ぼかでも気持ちを切り替えなくちゃと思いながらもね。主人が泣いたことを、だれも私に教えたと思ってないから、平常に普通に、気丈に。

 

――それは秘密なんですね。

 

そうそう。

 

――知らないことに。

 

みんなは私に教えたけどもね。あんたもメソメソしてないで、頑張らなきゃだめなんだよって。気丈に見えてるけど、すごくかわいそうだって、あんたを思って泣いてたからって言ったのを聞いて。じゃあ、私の前で気丈に振舞っていたのはそれだったのかなと思いましたね。

 

――そうだったんですね。

 

夫婦の絆かなと思ってね、助けられたと思っています。(笑)

 

――そのご夫婦の絆で頑張らなきゃという気持ちがね。

 

本当にそう。それを思い出すと涙が出てきてね。