がん患者の体験 / 胃がん

 

ここでは、胃がんと診断される前の症状、受診するきっかけについての語りを紹介します。今回の体験談では、胃がんと診断される前に、胃の調子がいつもと違うと感じていた方は、8名のうち2名いました。

 

・すごくみぞおちが病んで痛くて、いやぁと思って病院へ行ったんです。(60歳代前半・男性)

 

・何か食事が下がらないな、胃に2時間くらい留まっているなというのが気になっていました。(50歳代前半・女性)

 

8名のうち5名の方は自覚症状はなく、健康診断で再検査をするように結果が届き、胃がんがみつかっていました。

 

別におかしいとか、そういうのは全然なかったです。(60歳代後半・男性)

 

・胃は丈夫な方ではなかったけど、それまでの健診では「異常なし」でした。(50歳代後半・女性)

 

・毎年検診を受けて4回目、4年目。もう一回やりなさいと通知が来て、病院に行ったら、がんだって。(70歳代前半・男性)

 

自覚症状がない中、いつも健診をうけている病院で検査をしたら手術が必要かもしれないといわれ、家族のすすめもあり、別の病院で検査をした方もいました。

 

 

・もう一度、他の病院に行って、胃腔検査と内視鏡をしました。(60歳代後半・男性)

 

診断される前に自覚症状がなかったと思っていた方の中にも、思い出してみると疲れやすかったと感じていた方もいました。

 

・あとで考えれば、ちょっと疲れやすかったかなということはありました。(50歳代前半・女性)

 

・ちょっと疲れるけど、これは散歩している関係かなと思って、別に考えていなかったんですよ。(60歳代後半・男性)

 

 

ここでは、入院生活の中での家族との関わりについて、どのようなかかわりがあったか、それを通してどのように感じていたかを紹介します。他のトピックで紹介している語りもありますが、家族との関係として、ここでも紹介します。

 

面会に来る家族の顔をみることや、家族からの言葉に感謝の気持ちを感じていました。

 

・なったものは仕方がないから、それを治すようにしたらいいんでない?ということでね。そういう点では、私もすごく気持ちが楽だったし。(50歳代前半・女性) 

 

・私の足を洗ってくれる姿に申しわけないなと、ありがたいなと。(50歳代後半・女性) 

 

・主人は毎日面会にきました。手術の後の説明も一緒にきいてくれました。(50歳代後半・女性)

 

家族の存在や面会が、入院中の精神的な支えになっている語りが聞かれる中、お見舞いに来てくれる人への対応が辛かったと感じている方もいました。

 

・ありがたかった反面、お見舞いに来てくれる人たちに一つ一つ説明するのは辛かったです。(50歳代後半・女性)

 

 

ここでは、胃がんの治療のためにかかる経済的な負担をどのように感じているか、どうまかなったのかを紹介します。

 

今回の体験談では、手術治療をうけた方からは、高額医療費制度の活用のほか、がん保険や職場の福祉互助制度などに加入していたため、経済的負担はそれほど大きくなかったという体験が半数からきかれました。一方、通院で抗がん剤の点滴治療を受けた方からは、高額医療費制度の適応額にわずかに足りず、医療費の自己負担が大変だったとの語りもありました。がんの専門治療は高額となるため、がん保険への加入を勧めたいとの語りもありました。

 

・保険はそれこそ、おかしい話ですけれども、たっぷり来て間に合いました。(50歳代前半・女性)

 

・お金がかかったということはあまり頭になかったです。(60歳代後半・男性)

 

・高額医療費、それ以外は職場の福祉互助制度とガン保険でまかなえて、助かりました。(60歳代後半・男性)

 

・がん保険の特約内容がよくわからず、3年後に請求したら保険がもらえました。(50歳代前半・女性)

 

・がんで仕事をやめて収入がなくなる中で、抗がん剤の治療費は結構高いです。通院となると高額医療費はあてはまらず、この治療費は自分への投資だと思っています。(50歳代前半・女性)

 

・これからの若い人には、がん保険ぐらいは、がんに限らずだけど、そういう保障された保険には絶対入っておくべきだと思う。(60歳代前半・男性)

 

 

 ここでは、胃がんの手術後の食生活の変化を紹介します。

 

 今回の胃がんの体験談では、8名全員が手術治療を受けていました。全員が胃の手術をした後の変化として、食欲がおちる、食事量がへる、食べるものを選ばないとならなくなったなど、食生活が大きく変わったと感じていました。

 

・退院して2週間くらいは、飯、食べれなくてちょっとへずねかった(苦しかった)。(60歳代後半・男性)

 

・食べ物が入らなくて、少しでも食べると嫌な気分になって、せっかく食べたものが出てきそうな恐怖が、手術をして3年たった今でもあるんです。(60歳代後半・女性)

 

・ ご飯は一気に食べられないね。ある程度いっぱいになると、くしゃみや鼻水など変な症状が起きてくる。本当にお腹いっぱいになってしまうと、切ないのさ、本当に、苦しくて。(60歳代後半・男性)

 

 

 野菜の煮物など、消化によい温かいものは食べられたけれど、体を冷やすような生野菜や果物、脂っこいものなどを食べられなくなったという方もいらっしゃいました。 

 

・手術してから2年経ちますが、生野菜や果物は体が冷えるからだめで、煮物に脂分をとるために揚げ物を一緒にしたり、食べる物を選んでいました。(50歳代前半・女性)

 

 

 ふだんの生活では自分のペースで食事ができますが、グループ旅行などの団体行動では、大勢に合わせて食事をすることや、移動中にトイレに行きたくなることなどに困るという方もいらっしゃいました。 

 

・旅館でもホテルでも、よその人みたいに食べれない。(60歳代後半・男性)

 

・油ものをとるとすぐ下痢をしてしまう。一番困るのは、団体旅行に行けないこと。(60歳代後半・男性)

 

 

 多くの方が、食事の回数や時間帯を調整していました。中でも仕事をされている方は、一般の食事休憩とずれるため、食べるタイミングや食べられる物を持参するなどの工夫をしていました。

 

・外出するときは、おむすびなど持ち歩いて、その日の体調にあわせて1日6、7食とっていました。(50歳代前半・女性)

 

・習慣になっているから、朝食べたら横になり、昼食べたら横になる。外食するとできないから眠くてしようがないけど、しょうがないやな。(60歳代後半・男性)

 

 

 疲れを感じたら横になることを心がけているという方が複数おられました。一日寝込んでしまうのではなく、体を動かすことを意識して、疲れたらこまめに休む、という過ごし方をされていました。

 

・ご飯を食べたときは、30分くらい横にならないと気分が悪いんです。どうすれば楽になれるかと同じ胃がん経験者の話を聞きましたが、みなさん同じではないですものね。(60歳代後半・女性)

 

 

手術や抗がん剤治療の後、アルコールや食事がおいしくなった方もいました。

 

・抗がん剤をやめてビールはオーケーになりました。食事がおいしいと思えるから幸せです。(50歳代前半・女性)

 

 

 

 ここでは、退院後の体調の変化に対して、生活の中で行っていた工夫を紹介します。

 

 体調の管理として、特別な何かに気を付けているというわけではなく、風邪の予防に気を配る、歯を大切にする、運動することなど、生活の基本となる事柄を大切にするように意識している方が複数いました。

 

・毎日の生活の中でからだを動かすようにしています。(60歳代後半・男性)

 

・寝る前の運動と、朝のラジオ体操を気負いすぎないように続けています。(50歳代前半・女性)

 

・お経をあげることも、リハビリの一種なんですよ。(60歳代後半・男性)

 

・退院後の生活で、どれくらい身体を動かしていいのか等、生活の中でのアドバイスをもらえるといいと思う。(60歳代後半・男性)

 

 

 免疫力向上によいといわれる食品や、本に載っている他の体験者がよかったというものも含めて、体によいと思われる食品を積極的にとっている方もいました。

 

・周囲の人からすすめられるアガリクスやEM菌など、いいと聞けば何でもやってみました。(50歳代後半・女性)

 

・免疫力を落とさないための補助食品やお茶、牛乳きなことバナナなんかを食べています。(60歳代後半・男性)

 

・本で見た代替療法や健康食品はなんでも試して、菜食中心に食べ物に何でも興味を持って、元気を出しているわけだ。(60歳代前半・男性)

 

  

 

 ここでは、胃がんになったことが、仕事や働き方にどう影響したのかについての語りを紹介します。

 

 仕事をしている方の場合、治療や入院のために仕事を休む必要が出てきますが、復職する際にもさまざまな影響があるようです。職場に迷惑をかけないようにフルタイムでの勤務が可能になるまで待ったり、逆にいつ復職できるかわからないために仕事を辞めたという語りが聞かれました。

 

・職場の皆さんに迷惑をかけたり気を遣わせないように、3ヶ月静養の診断書に加えてもう1ヶ月届けを出して、体調を整えてフルタイムで復帰しました。(50歳代後半・女性)

 

・どれくらいで回復できるかわからないので、病気を機会に仕事をやめたんです。(50歳代前半・女性)

 

・がんは生活習慣病だな、自分の生活習慣を新たにしなさいというメッセージだと思いまして、仕事をやめようと思ったんです。これからは無理なく楽しんでやれる仕事をするつもりです。(50歳代前半・女性)

  

 

病いとしてのイメージ

 

 ここでは、がんという病気に対してどのようなイメージを持っていたのかを紹介します。

 かつては“がん=不治の病い”というイメージがありましたが、今は早く見つけて治療すれば治る病気であり、胃がんは「取れば治る」病気というイメージや、胃がんは他のがんとは違うなどのイメージの語りが聞かれました。

 

・昔はがんといったら不治の病と思っていたけど、今は治る確率が高いですよね。胃がんは手術で悪いところを取ってしまえば、傷さえ治ればいいんだからね。(60歳代後半・男性)

 

・がんは悪い病気でないと思うんですよ。がんでパッタリ死ぬということはないのさ。(60歳代前半・男性)

 

・胃がんは、ちょっとよそのがんの方と違って、元気になるまで時間がかかるんです。(50歳代前半・女性)

 

・昔からの人は「胃は全部取っても、元に戻る」って信じてるんです。(50歳代前半・女性)

 

 

胃がんになった原因

 

 ここでは、胃がんになった原因をどう考えていらっしゃるかを紹介します。今回の体験談に協力した方は、それぞれに自分が胃がんになった原因を考えていらっしゃいました。

 胃がんになった原因はストレスであるという語りが聞かれました。

 

・転勤した先の職場に行くのが大儀だなぁというストレスがあって、それが原因で胃がんになったと判断しています。(60歳代後半・男性)

 

・食欲が落ちて、体力が落ちているところへ、事故とかくも膜下とかいろいろなのが重なったストレスがあったからかな。(60歳代後半・女性)

 

・再就職するかどうか思い悩んだストレスと寝不足が続いたこと、辛いものを食べ続けていたことが原因でしょうか。(60歳代後半・男性)

 

・結婚して家事を何もかもしなきゃいけなくなって、自分でも意識しない苦痛があって、少しは胃に負担がかかったのかなという気持ちもしないわけでもないんです。(50歳代前半・女性)

 

 

 血縁的にがん系統であることや、胃が弱い家系であることを、胃がんになった原因と考えている方も複数名いました。

 

・家系的には胃が弱い方なんです。(60歳代後半・男性)

 

・父も胃がんでしたから、やっぱりがんになりやすい体質や遺伝子はあると思っています。(50歳代前半・女性)

 

・うちは、がん巻き(がん系統)なんですね。だからがんにはなるだろうけれども、胃がんは意外でした。(50歳代前半・女性)

 

・神経質な方とか几帳面な方がなるものだと思っていたから、私が胃がんというのは意外でした。(50歳代前半・女性)

 

 

 がんになった原因は、長年の食事や生活スタイルが影響していると考えている方もいました。

 

・がんは昨日今日になるわけではない、10年、20年前からずっと進行していて、自分の人生ががんをつくっているから、一番責任があるのは私だと思うんです。(60歳代前半・男性)

 

・胃が痛くて、薬を飲むと普通にまたやっていく、これを繰り返していって、免疫力もおちてくると、がんを発症するということじゃないかと思います。(60歳代前半・男性)

 

・塩分を取りすぎて、胃潰瘍がガン化したと思っています。(60歳代前半・男性)

 

 

 

家族の思い・家族への思い 

 

 ここでは、胃がんになったことを家族にどのように伝えたのか、そして家族はどう受け止めたのかの語りを紹介します。入院中の様子をとりあげた「家族との関係」をはじめ、他のトピックで紹介している語りもありますが、ここでも「家族の思い・家族への思い」として紹介します。

 

 がんと診断されたとき、家族の気持ちにも大きな影響を与えます。診断を受けた本人はもちろんですが、家族も不安やショックを受けるという語りがありました。 

 

・がんという現実を受け止めるのは当人にとっても家族にとっても時間がかかることです。(50歳代前半・女性)

 

・主人が執刀医の先生に「何としてもうちのやつを助けてくれ」って言ったんだって後から聞かされました。(50歳代後半・女性)

 

・入院中は夫が毎日見舞いに来てくれました。(50歳代前半・女性)

 

・主人が「いろいろな苦労をかけて病気にさせたのも俺だ、だからお前を一人病院に残して帰るのがすごく辛かったんだ」と言ってくれました。やっぱり家族って、ありがたいですよね。(50歳代後半・女性)

 

・病気は一人では治されないということ、なってみて初めてわかったんですよね。(60歳代後半・男性)

 

・息子が体調への気遣いの言葉をくれました。(70歳代前半・男性)

 

 

患者会との関係

 

 ここでは、同じがん患者の方々とどのような関わりをしているのかを紹介します。

 同じがんを経験した同士の交流を通して、病気との付き合い方を見出すこともあるようでした。また、患者以外も参加できるような患者会になることを望む語りも聞かれました。

 

・患者会の集まりは有意義なものです。(50歳代前半・女性)

 

・患者会で顔なじみができて話も楽しくなってきました。(60歳代後半・男性)

 

・がん患者であることを常に意識しなくていい患者会作りが必要だと思います。(50歳代前半・女性)

 

 

周囲の人との関係

 

 がんになったことを周囲の人に話すか話さないかは、相手との関係性や病気の経過も関係すると思いますが、話す、話さないの両方の語りが聞かれました。

 

・病気のことを隠す気は全然ないですし、胃がんを患って退職したという話も普通に言います。(50歳代前半・女性)

 

・いつでも健康でいたいもので。病気のことは人に話さない。(70歳代後半・男性)

  

 

ここでは、入院生活の中での医療者との関わりについて、どのようなかかわりがあったか、それを通してどのように感じていたか紹介します。入院治療の中では、医療者とのかかわりは多く、他のトピックで紹介している語りもありますが、医療者との関係として、ここでも紹介します。

 

手術の説明を聞いた時、十分に説明をうけたと感じる方と、十分な説明ではなかったと感じている方がいました。

 

・いい先生で説明もきちんとしてくれました。(50歳代後半・女性) 

 

・手術の説明の際に、もっと詳しい説明をしてほしかったです。(60歳代後半・男性)

 

手術をうける病院を選ぶ時に医師の紹介した病院を選択しないことや、検査結果が気になって他の病院を受診したことで、医師に怒られた体験をした方が2名いました。

 

・東京の病院に行くと話したら、先生から怒られました。病院は自分で選んで行くんですよ。(60歳代前半・男性)

・何でA市まで行って調べてもらわなければまいねんだ(だめなのか)と。近くの病院の診察で待っていられないのかと、そういうふうなお叱りを受けました。(60歳代後半・男性)

 

医師や看護師からかけられる言葉は、患者にとって、安心感にも不安にもつながっていました。

 

・すごくショックな言葉だと思いました。患者にすればすべてが初体験じゃないですか。その時は、お父さんに泣きながら愚痴をこぼしていました。(50歳代後半・女性) 

 

・お医者さんももちろん、看護師の声かけも患者の気持ちに影響します。(50歳代前半・女性) 

 

・他の病院の診察をうけたことを担当医師に話すと、Aさんの体なんだからそれは当然でしょう。と言われてホッとしました。(60歳代後半・男性) 

 

・担当の先生が、ご飯の残った量を見まして、「これぐらい食べれると、まずまずいいほうかな」っておっしゃってくれました。(60歳代後半・女性)

 

 

胃がんの抗がん剤治療には、手術と組み合わせて使われる補助化学療法と治療が難しい状況で行われる抗がん剤中心の治療があります。抗がん剤の副作用は人によって程度に差があるため、効果と副作用をよくみながら行います。(各種がんシリーズ 胃がん 受診から診断、治療、経過観察への流れ,編集・発行 国立がんセンターがん対策情報センター,2010.03)

 

今回の胃がんの体験談では8名のうち、抗がん剤治療をうけていたのは3名でした。3名のうち、1名は手術を受ける前に抗がん剤の飲み薬で治療を行い、2名は手術の後に抗がん剤の点滴とさらに通院しながら抗がん剤の飲み薬で治療を行っていました。

 

ここでは、抗がん剤治療を行う際に抱いた気持ち、抗がん剤治療での副作用、抗がん剤治療を行う際に気になった医療者とのやりとりについて紹介します。3名の体験であり、ここで紹介する体験談のすべてが胃がんの抗がん剤治療をうける方に共通するとは言い切れませんが、貴重な体験談であることをご承知ください。

 

手術の前に飲み薬で抗がん剤治療をおこなった方は、体のだるさがありましたが、抗がん剤治療が休みの期間に泊りがけで旅行にいくなどしていました。

 

・手術までちょっと期間があるので、抗がん剤を投与してみましょうかということで服用しました。(60歳代後半・男性)

 

・副作用はそんなに気になるほどではなかったです。抗がん剤をやっても休むと平常に動くことができましたから抗がん剤治療が休みの間に旅行に行きました。(60歳代後半・男性)

 

・抗がん剤が効いたから、これくらいで済んだのかもわからないな。(60歳代後半・男性)

 

手術後に抗がん剤の点滴と飲み薬で治療をおこなった2名の方は、抗がん剤の点滴を始める時の強い恐怖感や、食事が食べられない、口内炎、下痢、髪の毛が抜けるなどの副作用を体験していました。

 

・入院している間に抗がん剤の点滴を2回やって、退院してからも通院で抗がん剤の点滴をやるという説明でした。(50歳代前半・女性)

 

・抗がん剤の点滴を始める時、先生の顔が悪魔的に見えて、自分の細胞はそうなるのだろうかと、恐怖を感じながら受けたのを覚えています。(50歳代後半・女性)

 

・すごかったんですよ。とにかく体がだるくて吐いて。(50歳代後半・女性)

 

・洗面台の排水溝が髪の毛で詰まったのを見たとき、心臓がドキドキとなって「はあぁ」という恐ろしさがありました。(50歳代後半・女性)

 

・「口から食べなさい、口から食べなさい」と言われても、食べれなかったです。(50歳代前半・女性) 

 

・怖いものですよ、下痢って。水道の蛇口をひねったみたいに肛門から出るんですよ。(50歳代後半・女性) 

 

・退院後の腹痛で、救急での受診を繰り返し、再入院しました(50歳代後半・女性)

 

・ホッカイロは両肩、両腰、おなかと毎日5個使いました。それでも寒いんです。家にいても手袋をしていました。(50歳代前半・女性)

 

抗がん剤の副作用に苦しんでいる時、看護師からの言葉にショックをうけることもありました。そのような時、家族が支えになっていました。また、他の治療をしている人たちをみて、気持ちを奮い起こしていました。この語りは、「入院中の医療者との関係」「他の入院患者との関係」でも紹介していますが、ここでも紹介します。

 

・すごくショックな言葉だと思いました。患者にすればすべてが初体験じゃないですか。その時は、お父さんに泣きながら愚痴をこぼしていました。(50歳代後半・女性) 

 

・私も頑張らなきゃと、周囲の人たちを見て元気をもらったりしていました。(50歳代後半・女性)

 

抗がん剤治療が終わると、2名とも身体の調子が回復していくことを実感していました。

 

・少し軟便みたいになってきたときは、私は本当に泣いて喜びました。これでもう治っていけると思って、トイレで本当にボロボロと泣きました。(50歳代後半・女性) 

 

・抗がん剤を終えたその日から、下痢が止まりました。食事がおいしくて、体重が増えていくのが、うれしかったです。(50歳代前半・女性)

 

抗がん剤治療をしている間、抗がん剤を決められた時間通りに飲むために、食事の時間を抗がん剤を飲む時間にあわせたり、生活リズムを整えるために夜は睡眠剤を飲んで寝るなど工夫していました。

 

・抗がん剤を飲むときは、生活が規則的になります。(50歳代前半・女性)

 

・抗がん剤治療をしていた時は、何回も昼寝をするから夜に眠れなくて、眠りのサイクルが狂うと思って眠り薬を飲んでいました。(50歳代前半・女性)

  

 

 

がんという診断を聞いたとき、驚きやショックな気持ちとともに、「何で自分が?」などと考えることは、自然な感情です。ここでは、胃がんの診断を医師から伝えられた時の気持ちを紹介します。

 

胃がんと聞いた時、「えっ?」「なぜ?自分が?」という驚きや不安の気持ちがきかれました。

 

 

・えっ、私がどうしてがんになるの?と思ったんです。(60歳代後半・女性)

 

・全身に何か不安なものが走るという感じでした。(50歳代後半・女性)

 

がんと聞いた時、胃がんは神経質な人がなるというイメージや、がんは死と直結するなど、それぞれが持つがんへのイメージが影響していると思われる語りもありました。

 

・胃がんは、神経質で几帳面な人が多いっていうけど、私が胃がんというのは意外でした。(50歳代前半・女性)

 

・大概、がんというと死と直結するイメージがあるじゃないですか。精神的な恐怖というか、どうなってしまうんだろうとか考えました。(50歳代後半・女性)

 

がんと聞いて、それほどショックではなかったと語った方は、がんは治る病気と自分に言い聞かせることや、「あだわいできている」など、出来事の捉え方も影響している様子でした。

 

・大丈夫、がんは手術すれば治るからと、自分で自分に言い聞かせていました。(60歳代後半・男性) 

 

・「あだわいできている」と、受けるほうは素直に受けるほうなんです。だから、そういう点では、あまり慌てることもなかったです。(50歳代前半・女性)

 

 

がんの診断を聞いた時、家族もいろいろな気持ちを抱きます。家族から自分ががんになって落ち込んでいたことを聞いた方、家族の言葉に気持ちが楽になった方の語りがありました。また、抗がん剤治療の間に夫婦で旅行に行って気分転換していた方もいました。

 

・現実をどう受け止めるか患者も悩みますけど、家族もどういうふうに受け入れたらいいかというので悩んでいたそうです。(50歳代前半・女性)

 

・なったものは仕方がないから、それを治すようにしたらいいんでない?と夫から言われて、気持ちが楽だった。(50歳代前半・女性)

 

・入院前に、夫婦で旅行に行ってきました。旅行中は、病気のことを忘れていました。(60歳代後半・男性)

 

 

担当医以外の医師の意見を聞くこともできます。これを「セカンドオピニオンを聞く」といいます。

ここでは、①診断の確認、②治療方針の確認、③その他の治療方法の確認とその根拠を聞くことができます。

聞いてみたいと思ったら、「セカンドオピニオンを聞きたいので、紹介状やデータをお願いします。」と担当医に伝えましょう。

担当医との関係が悪くならないかと心配になるかもしれませんが、多くの医師はセカンドオピニオンを聞くことは一般的なことと理解していますので、快く資料をつくってくれるはずです。

(各種がんシリーズ 胃がん 受診から診断、治療、経過観察への流れ,編集・発行 国立がんセンターがん対策情報センター,2010.03)

 

ここでは、主治医以外の医師の意見を参考にしたセカンドオピニオンのトピックを準備しましたが、正式に主治医にセカンドオピニオンを聞きたいと相談をして、主治医以外の医師の意見を聞いた方の語りは現在のところみられませんでした。

 

厳密なセカンドオピニオンではありませんが、検査をした病院や紹介された病院と違う病院を受診した方は、8名のうち2名いました。この語りは、ほかのトピックでも紹介していますが、ここでも紹介します。紹介された病院と違う病院に入院することを選んだ方は、先生に怒られたことを一生わすれないと話していました。

 

・もう一度、他の病院に行って、胃腔検査と内視鏡をやりました。(60歳代後半・男性)

 

・東京の病院に行くと話したら、先生から怒られました。病院は自分で選んで行くんですよ。(60歳代前半・男性)

 

 

ここでは、胃がんを体験した方がどのようにして治療方法の選択と決定をしていったのか、その際にどのようなことを感じたかを紹介します。

 

今回の胃がんの体験談では、8名全員が最も有効で標準的な手術治療をうけていました。そのうち3名の方が、抗がん剤治療をあわせてうけていました。今回は、内視鏡的治療、放射線療法、緩和医療の体験の語りは聞かれませんでした。

 

胃がんの診断をうけてから、8名全員が手術のできる大きな病院に入院していました。そのため、入院前から手術をすることが前提に話がすすんでいた様子でした。

 

・胃を全部摘出するか、部分摘出になるかの詳しい話は後でするとして、検査の5日後には入院をして手術ということになったんです。(50歳代前半・女性)

 

・結局、あれよ、あれよといううちにがんで手術することになっちゃったんです。(60歳代後半・女性)

 

・手術までは、大体2カ月も待ったらと先生が言ってあったの。そしたら、キャンセルがあったから手術できるって電話が来て、それで急にやってもらったの。(70歳代前半・男性) 

 

先生から手術の説明に、もっと説明して欲しいと感じながらも、自分が先生のところに行ったのだから、治療は先生にお任せしていると話す方もいました。

 

合併症は、出血とか、肺とか肛門付随とかって、もう頭の中がパニックで。先生になして取ねばまいねんだ(何で取らないといけないのか)と聞く時間も何もなかった。(60歳代後半・男性)

 

・私がその病院に行ったから、その先生にもう自分でお任せしましたので、その先生がこういうふうにするというのであれば、お任せということですね。(60歳代後半・男性) 

 

・D病院に来たらだんだん話が変わってきた。切ねばまねぐなったわけ(切らないといけなくなったわけ)。(70歳代前半・男性)

 

手術を受けるにあたり、医師がよく説明をしてくれて、手術を受けることができたと話す方もいました。

 

いい先生で説明もきちんとしてくれました。(50歳代後半・女性) 

 

・消化器内科のほうでもいろいろと検査をして、手術する1日か2日前に外科のほうに移りました。(50歳代後半・女性)

 

 

ここでは、手術後の痛みや点滴、食べることなど大変だった出来事と、それが退院までの間にどのように変化していったかの語りを紹介します。

 

・意識が戻ってから、寒くて布団をかぶせてもらった記憶があります。手術後は、いろいろな管が入っていました。食事は重湯から少しずつ固形になっていきました。(60歳代後半・男性) 

 

・手術は全身麻酔で、翌日に集中治療室みたいなところで目が覚めた。手術の後は、結構痛かったけど注射して、起きて歩いたっきゃ(歩いたら)だんだんに良くなってきた。(70歳代前半・男性) 

 

・ 痛み止めを使いながらで、そんなに痛い手術だったなという記憶はあまりないですね。(60歳代後半・女性) 

 

・入院中、一番きつかったのは点滴です。(60歳代後半・男性) 

 

・神経を切られているから、神経の痛みのような違和感がありました(60歳代前半・男性)

 

入院期間については、治療ステージや手術の範囲、体調などの違いもあると思われますが、さまざまでした。

 

・退院予定日の2日前に熱が出て、大体45日くらい入院しました。(70歳代後半・男性) 

 

・1日に入院して6日に手術。21日に退院。 多少調子が悪かったけど病院の匂いが好きじゃなくて、標準型のペースで退院したということです。(60歳代後半・男性)

 

・45日で口から食べられるようになって、1週間くらいかかけて、普通のご飯になった。入院は2425日くらい。ひとつずつ普通の生活に戻ってきました。(60歳代後半・女性)

 

 

胃がんの手術後の経過では、胃の一部分や全部を切除するため、ほとんどの方が、手術前と同じような食事量が食べられなくてつらい思いをしたと話していました。

 

ここでは、手術後に食べることがつらかったことをはじめ、食べられない中で気持ちが楽になった担当の先生の言葉、病院に期待すること、他の入院患者さんとのやり取りなど、手術後の食生活に関連することを紹介します。

 

・食べれない日が続いたし、こんなに胃がんの手術が大変だとは考えもしなかったんですよ。(50歳代後半・女性) 

 

・とにかくお腹がすかないんですよね。自分で食べられないという意識がある中で、ご飯が常に3度来るのですごく嫌だったんですね。(50歳代前半・女性) 

 

・まずくてかいね(おいしくなくて食べられない)。入っていがねんだね(入っていかないんです)。家さ行って、めぇもの食ったらいいんでねがな(おいしいもの食べたらいいんじゃないか)と思って退院しちゃったのさ。(60歳代後半・男性) 

 

・食事のメモする用紙が来るんですよ。あれが最高につらかったです。食べられないのを正直にそう言えばいいのに、悪いような気がして正直にいえなくて。(50歳代前半・女性)

 

・担当の先生が、ご飯の残った量を見まして、「これぐらい食べれると、まずまずいいほうかな」っておっしゃってくれました。(60歳代前半・女性)

 

食べられないことは残酷なことだと思いました。退院するときのアンケートに、病院で食欲のない方に対する食事を、ぜひ検討してくださいと書いてきました。(50歳代前半・女性)

 

食事が食べられない中、他の入院患者さんの様子をみながら、自分の状態を把握しようとしている方もいました。「他の入院患者との関係」でも紹介しますが、ここでも紹介します。

 

・自分では食べられなかったと思うけれど、他の患者さんたちから見れば、結構順調に回復してるかなという感じがしました。(50歳代前半・女性)

 

・同じころに手術をした人が食事を全部食べたと聞いて、私もどのくらい食べられるかと思って、無理やり食べたことあるんですけれども、やっぱり出てしまってね。(50歳代前半・女性)

 

 

 がん体験者の方は、がんという病気に対して悲観するばかりでなく、自分の生活の一部として前向きに捉えるようにしている場合もあるようです。インタビュー協力者の中には、「一病息災」という言葉を使い、がんを患ったからこそ自身の身体に対して以前よりも気をつけるようになり健康的に生きられる、という話される方もいました。

 

 ここでは、胃がんの治療を体験して、今感じていることや周囲に伝えたいことなどの語りを紹介します。 

 

 

 がんになっても元気で長生きしている人がいることを忘れてほしくない、がんは恐ろしい病気ではないと話される方もいました。

 

・元気で生きている人がいるよ、がんは怖くないんだよ。(60歳代後半・男性)

 

・検診を受けて、早く発見すれば、がんはそんなに恐ろしい病気ではなくなってきている。(60歳代前半・男性)

 

 

 また、がん検診の大切さや、がん治療では様々な意見を聞いて検討することも重要だと話される方もいました。

 

・がん検診は早期発見・経済的負担の軽減につながるのでお勧めします。(50歳代前半・女性)

 

・がん治療を決める際には、様々な意見を聞いて方法を検討してみるのもいいと思います。(60歳代後半・男性)

 

・元気になるための投資は薬だけではないという考えで、あちこちに出向いています。(50歳代前半・女性)