がん患者の体験 / 肺がん
がん患者の体験 / 肺がん
肺がん
肺がんは気管、気管支、肺胞の細胞が正常の機能を失い、無秩序に増えることにより発生します。最近、がんの発生と遺伝子の異常についての研究が進んでいますが、細胞がなぜがん化する(無秩序に増える悪性の細胞にかわる)のかまだ十分わかっておりません。がんは周囲の組織や器官を破壊して増殖しながら他の臓器に拡がり、多くの場合、腫瘤(しゅりゅう)を形成します。他の臓器にがんが拡がることを転移と呼びます。(国立がん研究センターがん情報サービス「各種がんの解説」より)
発見 / 発見までの経緯 記事数: 5
ここでは、肺がんがわかった経緯(どのようにしてわかったのか、何をきっかけにしてがんが判明したのか)についての体験を紹介しています。
肺がんの一般的な症状は、なかなか治りにくい咳や胸痛、呼吸時のゼーゼー音(喘鳴:ぜんめい)、息切れ、血痰、声のかれ(嗄声:させい)、顔や首のむくみなどが挙げられます。
これらの症状が現れたことをきっかけにして病院に行き、肺がんが発覚したケースもありますが、症状がなく、定期健診やたまたま受けたCT検査によって肺がんの疑いを持った人もいらっしゃいました。
●風邪で来院したが、その後の検査で胸水を発見した(60歳代前半・男性)
●健康祭りに来ていたCT車でたまたまCTを写したところ、影が見えたという結果が出た(70歳代前半・女性)
●職場の健康診断で発見、一瞬ポカンとした(60歳代前半・女性)
●のどの痛みが時折あり、職場の定期健診でも要精密検査になった(50歳代前半・男性)
扁平上皮がんや小細胞がんに多い肺門型の肺がんは、早期から咳、痰、血痰が出やすいと言われています。他方、腺がんに多い肺野型の肺がんは、がんが小さいうちは症状が出にくいことから、上のケースのように、定期健診や人間ドックで見つかることが多いと言われています。
なかには、発見までに時間がかかったという体験もあります。
●健診で影が見つかるが、その年は大丈夫といわれ、翌年の健診で影が濃くなっていた(70歳代・男性)
その他には、別の病気で病院に行き検査や入院をくり返した結果、肺がんが見つかったという方や、腸閉そくと肺炎で入院した時の精密検査でたまたまはがんが見つかったという方もいらっしゃいました。
関係 / 医療者 記事数: 9
治療を受ける、あるいは入院をしている間など様々な場面において、患者のかたは医療者と多様な関わりを持ちます。ここでは、そのような医療者との関係に関わる語りをご紹介します。
今回のインタビューでは過半数の方が、医師の説明や告知のやり方、そして医師の人柄・患者に対する態度について語られていました。また、入院時に受けた看護や環境に対する語り、そして医療者の手違いに関する語りも聞かれました。
医師
医師との関係において、コミュニケーションがうまくいかなかったり、医師の態度へ疑問を抱いた、といった、不満や後悔が、いくつかの語りにみられました。
医師に遠慮して質問ができなかったという方や、質問を思いつく前にどんどん説明がすすんでしまったという方がいらっしゃったり、告知の方法・医師の人格に対する疑問の声がみられたりしました。
他にも、引き継ぎ時の医師から、カルテを見れば分かることを質問されたり、同じ病気でも医師によって対応が変わったりしたことで不安を抱いた方もいらっしゃいました。
・医師の説明を聞いても、自分の頭の中で勝手に想像して、医師の説明を聞き流してしまった。後から、これは聞いておけば良かったと思った。(50歳代後半・男性)
・医師から「もう施しようもない」と告げられ、大変ショックを受けた。がんの告知については、言い方・タイミング・環境を見極めてするべき。 (50歳代後半・男性)
・主治医の交代時に、引き継ぎ不足を感じ、不快感を覚えた。(60歳代前半・女性)
・主治医が違えば、同じ抗がん剤を使っている同病者と、処方の仕方が異なることが疑問。また、そのことに対して納得いく説明がないため、不安を感じる。(60歳代前半・女性)
この方は、「周囲の人に対して、上から物を言う医師がおり、医師の前に人間であって欲しいと感じた」ともおっしゃっていました。
一方で、医師のていねいなやりとりに満足、あるいは感謝している、という語りも見られています。たとえば、執刀医が開業のため地元に帰る時に「これでお別れだから気をつけて」と声をかけてくれたという方や、手術を執刀してくれた医師と今でも年賀状のやりとりをしているという方がいらっしゃいました。
この他にも、「おかげさまで丸三年元気でいて、無理しなければ農作業もできる。本当に先生に感謝しなければならない」「手術を嫌がったが医師に諭され、結果的に手術を受けてよかった」という声が聞かれました。
・年齢が近いこともあり息子のような気持ち。家も近く、自宅の周りで作った野菜を主治医の奥さんに渡すのが大変楽しみ。(60歳代後半・男性)
医師の対応へ満足したり感謝したりする背景には、上の方のように、医師への信頼があるようです。
次の方は、医師へ全面的に信頼を寄せていることをお話ししています。
・考えすぎるよりも、お医者さんにお任せ。(70歳代後半・女性)
その一方で、患者として、医師に全てを任せきるべきではないという意見の方もいらっしゃいました。しかしこの場合も、医師との良好な関係を築くため、医師の大変さを理解し、患者の責任を自覚したご意見のようです。
・医師に全部任せるというのは患者側の無責任。多数の患者を受け持つ医師に多くを求めるのは失礼。(50歳代後半・男性)
受けた看護・医療環境
どのような環境で、どのような治療・看護を受けたかということについての語りも、多く見られました。
細かい気配りや看護を受けたり、一日に何回か看護師・医師が回ってくるため不便はなかったという方もいらっしゃいました。しかし逆に、「患者が多い病院で、医者は対応できているのか」という疑問の声も聞かれました。
看護の中心を担う看護師に対しては、以下のような、感謝の思いが多く見られました。
・看護師の親身な対応に感動した。患者と一体となって治療していこうとする姿勢を感じた。(50歳代前半・男性)
また、以下のように、医療者(病院)に手違いがあり、病院側の姿勢を問う語りも見られました。
・摂取を禁止されているものを食事で提供された。患者のことを本当に考えているのか疑問。 (60歳代前半・女性)
関係 / 家族 記事数: 8
がんの判明は、ご自身だけでなく、同居されている家族や、遠方のきょうだいや親せきの方にも大きな影響を与える出来事です。
ここでは、皆様がご家族とどのような関係を保ちながら、がんと向き合っていったかといった、肺がんが発覚して以後のご家族との関係について、皆様の経験を紹介します。。
同居する家族・配偶者との関係
家族のなかでも特に、配偶者の方は、もっとも身近にいて、もっとも長い時間を共有している場合があると思います。
それだけに、日常生活のなかで本人よりも先に異常に気付き、検診を促すということもあるようです。夜中に咳がひどく出ていることをパートナーに知らされ、渋々病院へ行ったところ、肺がんが見つかったという方もいらっしゃいました。
また、普段の生活を共に送っているパートナーのがんの発覚は、ときに本人が感じるのと同じかそれ以上に重い経験であるようです。
ご夫婦でがんの宣告を聞き、がんにかかったご自身よりもパートナーのほうが積極的に治療法を聞いたり調べたりしたという語りもある一方、本人ではなく、ご家族ががんの告知を受けたケースでは、本人のショックを心配して、がんを知らせないという場合もありました。
次の方は、先にがんを知らされたパートナーが、入院中、付きっきりで看病してくれたことを話してくださいました。
・妻が先にがんの告知を受け、泊まり込みでついていてくれた。(70歳代前半・男性)
しかしなかには、普段と変わらぬ接し方をしていた配偶者の方もいらっしゃいました。
・夫は自分を病人扱いせず、自分も退院後すぐに日常生活に戻った。(70歳代前半・女性)
また次の方のパートナーは、取りみださず冷静に、日常と何も変わらない振る舞いで、しかもご本人以上に治療に積極的になって、病気と向き合っているようでした。
・妻は冷静にがんを捉え、驚いたり悲しんだりはしなかった。(50歳代後半・男性)
一方、家族は、自分にあまり家事を任せすぎないようにして、ストレスをかけないように配慮していると話してくれた方もいらっしゃいます。
・家族は自分に負担をかけないよう配慮してくれ、今は内縁の妻と同棲してストレスのない生活を送っている。(50歳代後半・男性)
離れて暮らす家族・子供との関係
ご自身と離れて暮らしている家族(子どもやきょうだいや両親)との関係についての語りも、多く見られました。
その内容も様々で、自分のほうから子どもやきょうだいに来ないように頼んだり内緒にしたりした、という語りがある一方、あるいは逆に、一緒に治療法を積極的に話し合った、という語りも見られました。
・子どもたちには、来るなと言っていた。兄弟には、短期の入院の際には内緒にしていた。(60歳代後半・男性)
・息子たちは医師との立ち合いにも出席し、治療法についても相談し合った。(70歳代前半・女性)
また、両親や子どもたちとの関係において、両親より若いのにがんで働けない自分に後ろめたさを感じると同時に、子どもたちに気軽に頼れることを非常にありがたいと感じている、といった語りも見られました。
・兄弟や両親が元気に畑仕事や雪囲いなどをしているのをを見ると、つらい。(60歳代前半・女性)
・気持ちを分かってくれて、経済的に援助もしてくれている娘たちはとても頼りになるし、ありがたい。(60歳代前半・女性)
関係 / 友人・同僚 記事数: 5
がんの治療中または治療後には、職場の同僚の方やご友人との関係のなかで、しばしば気を遣わなければならない場面にめぐり会います。ご自身のがん経験をどのように打ち明けたらよいかについて、悩んでしまう場合です。告白したことによって、非常に協力的にしてくれる場合もあれば、告白しても理解してもらえない、話した相手に気を遣わせてしまうといったケースもあり、同僚や友人の方々との関係には様々な葛藤が起こりえます。
入院の際、がんの告白で相手に気を遣わせることを避けるために、別な用事で外出すると伝えた方もいらっしゃいました。
・入院中は友人に「東京へ遊びに行く」と伝え、がんの事は明かさなかった。(70歳代前半・女性)
ご近所の方々との付き合いのなかで、がんのことを知られてしまうのを気にしている方もいらっしゃいました。がん治療を行うと仕事や生活面での変化がおこり、ご近所の方が不思議がる可能性があります。そのため、周りに余計な心配をしてほしくないという気遣いや恥の気持ちから、病気のことを言わなかったり、外見は元気であるようにみせたりする場合がしばしばあります。
次の方は、ご自宅の一部が事務所になっていたため、事務所に電気がつかないと、前を通りかかる近所の方々に体調を心配されることがあったとおっしゃっていました。
・近所にもがんで入院したことは言っていない。(70歳代後半・女性)
また、べつだん隠すというつもりはなくとも、周囲の方々に気を遣わせてしまうことを心配し、がんについては極力話すことを控えているという方もいらっしゃいました。
・同僚と入浴する際、手術痕の説明をする際にのみ、がんの経験をうち明けている。(50歳代前半・男性)
がんについて打ち明けた結果、職場の同僚の方々に理解してもらえ、よい関係の中で仕事を続けている方もいらっしゃいました。
・治療後、職場に復帰し、以前と変わらぬ関係で仕事を続けている。(50歳代後半・男性)
一方、次のように、上司の方にがんの経験を理解してもらえたものの、仕事上のミスに関して強く注意を受けたことから、ご自身の仕事力の衰えについて周囲に我慢を強いているのではないかと、気にかける語りもみられます。
・理解してくれている上司に、仕事のミスをきつく注意され、普段から気を遣わせているのではないかと申し訳なく思った。(50歳代前半・男性)
関係 / 同病者 記事数: 6
通院や入院の際、同病者であるがん患者に出会うことがあります。そのとき、同じ治療を行っている患者や入院時の同室の患者は、おたがいに気になる存在になるようです。ここでは、同病者に関する語りをご紹介します。
同病者の悪化と死
同室の同病者の症状の悪化や死は、ときに非常に不安な体験になります。今回のインタビューでは実際に同室のがん患者の死に直面した方はいらっしゃいませんでした。しかし、自分よりも先に退院をした同室の方が亡くなったという知らせを聞き、驚いたという方がいらっしゃいました。
・同じ部屋の先に手術した同病者が亡くなったことでびっくりした。いい気分はしなかった。自分より元気で手術も早かったのにすぐに逝ってしまった。(60歳代前半・男性)
また、同病者が短期間で容態が急変したことを間接的に聞き、驚いたという体験をされた方もいらっしゃいます。
・全員がん患者の大部屋で、周りの人から他の患者の悪化した話を聞いた。 (50歳代後半・男性)
その他、退院後は年賀状などで連絡をとりあっていた方もいらっしゃいます。しかし、その後しばらくして連絡が途絶えてしまったと無念に思ったともお話してくださいました。
共感と励まし・連帯感
一方で、同病者からの共感や励ましで勇気付けられたという方もいらっしゃいました。
・退院後、治療中の同病の同僚から「絶対職場復帰してみせますから」という手紙をもらい、逆に勇気付けられた。(50歳代前半・男性)
中には、「病気になったもの同士でないと理解し合えない。お互いの悩みは元気な人に全然通じない」と語った方もいらっしゃいました。
また、同病者との連帯感を体感されたという語りもみられました。
例えば、治療中に偶然同級生と出会い、お互いに仲間意識が生まれたとお話された方と部屋が一緒になった方がいらっしゃいました。このような連帯感が安心を与えてくれ、闘病の力になることがあります。
・同病者同士の連帯意識に勇気付けられた。(50歳代前半・男性)
しかし逆に、この方は、特に同病者との治療方法や症状の違いに遭遇し、そのたびに一喜一憂してしまった体験も語られました。
・内視鏡手術が多い中で、自分は外科手術だったため、不安だった。(50歳代前半・男性)
治療方法において外科手術ができるかできないかは、現在の進行の程度を推測でき、同病者間で比較されやすくなるようです。手術ができることはポジティブに捉えられ、手術ができない方との間に遠慮や距離がうまれることもあったようです。
具体的には、外科手術でがん細胞を取ることができた方は、同病者から「手術できればいいよな、おれは手術できないんだよ」と言われてしまい、複雑な心境になったとおっしゃっていました。他にも、手術ができない方へは気を遣い、話しができなくなってしまった、という体験をされた方がいらっしゃいます。
話題への気遣い
手術ができない方との間で距離感が生じる体験以外にも、話題に気をつかうことがあるようです。例えば、闘病により退職をせざるを得なかった方に仕事の話をしてしまい、後悔したという方もいらっしゃいました。
・同室の人仕事について聞いたときに、「辞めた」と言われ、悪いことを聞いたなと思ってしまった。(70歳代前半・男性)
関係 / 他のがん患者の方へのメッセージ 記事数: 8
ここでは、他のがん患者へのメッセージをご紹介します。闘病の体験から学んだこととして、がん保険などの経済面の備えなど、具体的な対策の必要性があげられたほか、健康診断を受診することの大切さが語られました。自分の身体は自分で守り、治療に関しては医者のアドバイスを仰ぐことが必要という方もいらっしゃいました。希望をもつことが大切という声もありました。
自分自身の努力の大切さ
・自分自身で身体を守るしかない。そして、先生のアドバイスは参考にし、家族も努力することも必要。(70歳代前半・男性)
このように、医者からのアドバイスにより食事の改善が必要な方もいらっしゃいます。家族に配慮してもらうのも大切ですが、一方で本人の努力が必須と感じることもあるようです。
・焦らないでゆっくり。自分自身が食べ物とか仕事とか十分注意してやらなければ、がんの克服はできない。(70歳代前半・男性)
・普段の生活パターンを変えていくことが大切。(50歳代後半・男性)
健康診断の受診の大切さ
その他、健康を維持することとがんを早期に発見することが大切だと語った方がいらっしゃいました。早期発見には定期的な健康診断を受けることが大切です。診断のおかげでがんの発見をした方は少なくありません。
次の方は、ご家族の腎臓移植のために健診を受けたところ、ご自身にがんが発見された背景がおありです。そういう意味で、健診を受けるきっかけをつくってくれたご家族に感謝の気持ちを語っていらっしゃいました。
・とにかく健康診断が大事。やれば発見されて治る方が相当多いのだから、60、65歳を過ぎた人はとにかく健康診断を受けるようにすべき。(50歳代後半・男性)
・症状が出てきてからでは遅い。時間が惜しいとか思うかもしれないが、健診をやらずして、楽しむことも楽しめないはず。(50歳代後半・男性)
希望をもつことの大切さ
“がんは怖くない。前向きに治療をすることが大切で、決してあきらめてはいけない”、というメッセージもみられました。次に紹介する方は、治療や予防に関する心がけだけでなく、病気に負けない強い意志が必要であることを強調しています。
・前向きに治療をやること、希望をもつことが大事。(50歳代前半・男性)
さらにこの方は、がんに対する前向きなメッセージが、多くのがん患者を勇気づける役割を果たしていることをお話ししています。
・“がんは怖くない”というメッセージは一番勇気づけられる。(50歳代前半・男性)
生活 / 再発予防と体調管理 記事数: 6
ここでは、手術や放射線治療、抗がん剤治療などのがん治療を受けた後に、日常生活の中でみなさんがどのようなことに気をつけていらっしゃるか、ということについての語りをご紹介します。
それぞれの治療がはじまったあとには、食生活を改めたという方や、健診や検査・医師のアドバイスを大事にしている方がいらっしゃるようでした。また、痰や便を通して日々の体の変化に注意されている方や、早く寝る・毎日歩く、というように生活習慣・運動習慣を改めたという方もいらっしゃいました。
食生活(喫煙・飲酒)
食生活については、何を食べるか、あるいはいつ食べるかということに気をつけているという語りが見られました。具体的には、肉類や脂ものは食べない、あるいは月1、2回に控えているという方や、一日三度規則正しく食事をとるように心がけているという方がいらっしゃいました。家庭では薄味を心がけているので、外食にいくとどれもしょっぱく感じるほど、という方もいらっしゃいました。
一方で、食餌療法やサプリメントなどに抵抗感をお持ちの方もおられました。
・肉類はさけるように、お魚野菜を多くとるように。(70歳代後半・女性)
また今回のインタビューでは、がんになったことを契機に禁煙された方が複数いらっしゃいました。一般的に禁煙は大変苦しいと言われていますが、特に苦労することなくタバコをやめることができたという方がいらっしゃいました。
・がん判明後禁煙。手術前の禁煙は意外とあっさり。体的に何も感じず。(50歳代後半・男性)
また、飲酒については、「飲む量を減らした」「休肝日を最低週2日はもうけている」「もう何ヶ月も飲んでいない」という語りがありました。
健診・検査・医師のアドバイス
さらに、退院後の健診や検査(通院)を重視するという声も、複数聞かれました。
・何も悪いところがなくなったと思っても、一度病気になったのであれば定期的に通院すべきだ。(60歳代前半・男性)
・先生の言うことをしっかり聞く、10のものを10絶対守り通すことはできないから、ある程度自分なりに考え、言われた通り通院。(70歳代前半・男性)
他にも、通院を重視する理由として、がんの再発を早期に発見するためという方や、脳梗塞など別の疾患が心配だからという方がいらっしゃいました。
また、女性がかかりやすいがんの検査を、積極的に受けているという方もおられました。たとえば、退職してからも行政から案内がくる健診は毎年必ず定期的に受診しているというある女性は、総合健診に加えて婦人科健診(乳がん(触診とマンモグラフィー)と子宮がん(子宮体がんと頸がんの検査))も受けているとおっしゃっていました。
また、「風邪を引かないように」という医師のアドバイスを重視している方が複数いらっしゃいました。
・がんは風邪が一番天敵と注意されている。予防接種は必ず受ける。(70歳代前半・男性)
運動やリハビリ
運動やリハビリについての語りもいくつかみられ、日常生活の中で積極的に歩いているというお話が聞かれました。初めは疲れても、次第に慣れて運動時間を延ばしたという方もいらっしゃいます。
・自分の考えで仕事後にウォーキング。最初は30分ほどで息があがっていたが、慣れて一時間ほど歩くように。(50歳代後半・男性)
他にも、「手術前後、理学療法士と一緒にリハビリ室で、歩いたり階段を上るリハビリをした。退院後も家の周りで歩く練習をしていた。」という方がいらっしゃいました。また、他の病気(糖尿病)の対策として運動・食事管理を10年ほど続けられていて、健康管理には自信があるという方もいらっしゃいました。
生活 / 病気と仕事の関わり 記事数: 10
がん治療は、生活に大きな支障をきたします。さらに、仕事にも大きく影響することが考えられます。ここでは仕事との関わりに関する語りをご紹介します。
治療を優先すると、仕事を休まざるを得なくなります。今回のインタビューを受けて下さった方々は、職場の上司から休むように言われたり、自分自身から休んだりするなどして、治療に専念するために仕事を調整されていました。中には、調整ができず治療に入れなかった人もいらっしゃいました。多くの方が、治療に専念するまでの過程だけでなく治療後も、仕事の調整や仕事との関わり方に悩み、辛い思いをされていらっしゃいます。
治療前に生じた戸惑い
以下の方々は、職場から理解を得られた方たちでした。治療にむけて会社の上司からは仕事を休むように勧められたようです。
・手術・退院後は、仕事欲はあるも会社から休むように言われた。(60歳代前半・男性)
次の方は、治療しながら仕事ができるように職場が配慮をしてくれました。例えば、抗がん剤治療時、治療の次の日は仕事をやすむ必要があったため、職場は週の後半を休めるよう柔軟な対応をしてくれたようです。
・上司に定時で帰ることをすすめられるなど、職場の支えは本当に助かった。一方で職場に負担をかけてしまったと思う。(50歳代前半・男性)
一方、次の方は治療に専念するために自分で休むことを決断されました。
・大学で地理学を教えていたが、治療に専念するためやめた。学生に教えるのを楽しみにしていたので残念。(60歳代後半・男性)
中には、自営業のため、仕事の調整が難しい方もいらっしゃいました。
・仕事があるので、すぐに入院できなかった。(70歳代後半・女性)
治療後に生じる葛藤
仕事を調整しながら治療されていても、困難や不具合が生じてやむを得ず退職せざるを得ない場合もあります。職場を長期間休むことが出来ず、仕事をやめざるを得なくてつらいこともあるようです。さらに、治療終了後でも仕事を再開することへの恐れが生じたようでした。
・抗がん剤の治療後、合併症の危険性のため絶対安静で仕事を3ヶ月休んだ。これ以上迷惑をかけられないのでやむを得ず退職をした。(60歳代前半・女性)
・仕事を失ってからうつ状態に陥った。周りがみんなはたらいていることに、罪悪感を感じた。(60歳代前半・女性)
・もし、がんのことを隠して働いたとしても、肺炎や感染症にかかって相手に迷惑がかかる、と考えたら、働けない。(60歳代前半・女性)
中には、治療のほうを優先して仕事をされる方もいらっしゃいました。次の方は、健康を優先され仕事は無理のない程度にする選択をされています。
・仕事は午前中やれば午後休む感じで、無理せず控えめに。あまり疲れない程度に。(70歳代前半・男性)
この方の場合は、仕事を部分的に続けられる環境だったようです。
あるいは、職場の仲間に仕事面で配慮してもらえたという語りも聴くことがみられました。
・まわりに「無理はしないでね」と配慮してもらった。(50歳代後半・男性)
一方、本人に仕事をさせたくないと家族が気を遣い、仕事を一切辞めたという方もいらっしゃいました。次の方は、周りから病人として扱われることが重なり、仕事の機会を失ったという体験をされていらっしゃいます。
・がん経験が周囲に悪い印象を与え、農作業の話がこなくなってしまった。(60歳代前半・女性)
生活 / お金の問題 記事数: 14
がんの治療にあたっては、検査費、手術費、薬代など様々な経済的負担が発生する上、治療の長期化や再発などのリスクがあり、経済的な不安が生じます。
ここでは、そのようながん治療にまつわるお金の問題についての語りを紹介します。
経済的負担
厚生労働省の調査※1によれば、肺がんの平均在院日数が27.2日と発表されており、約1ヶ月前後の入院期間になっています。入院期間が長くなればなるほど経済的負担も大きくなります。治療法により個人差があると思われますが、手術などの治療費以外に、検査のための入院にも高額なお金がかかるようです。
※1:厚生労働省 患者調査 平成21年(平均在院日数;気管,気管支及び肺の悪性新生物)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/08/index.html
・検査入院にもお金がかかる。手術後の入院費用も気になったが、後々のことを考えると、手術をしたくないとは言えなかった。(60歳代前半・男性)
このように、がん治療には様々な経済的負担が生じますが、お金を掛けても完全に治る保証がありません。中には、どこまで治療費にお金をかけたらいいのかということを迷うことがあります。
先ほどの方は、以下のように、経済的負担とその治療の程度に迷われた体験もされていました。
・お金を掛けて手術をしても、その後どうなるのか保証がない。(60歳代前半・男性)
また、がん闘病の過程では薬による治療を何年も行うことがあります。それらの薬は種類でお金のかかり方が異なってきます。以下のお二人は、負担可能な治療費の範囲での治療の選択を迫られる体験をされていました。
・イレッサ服用はお金がかかるので、治療の選択に迷いが生じた。(60歳代前半・女性)
・死ぬまで薬を飲み続けていかなくてはならない。(60歳代前半・女性)
これらの経済的負担は、時には家族にかけてしまうことがあります。がんを患ったことで精神的な負担を掛けてしまった上に経済的な負担を強いてしまうことになった場合、大きな葛藤をかかえてしまいます。
次の方は、娘3人に精神的にも経済的にも助けられましたが、その負い目を語っていらっしゃいました。
・子どもたちにも経済的な負担を掛けてしまい、つらい。(60歳代前半・女性)
治療情報の必要性
このように、経済的負担と治療法の選択は密接に関わっており、家族への負担を強いることも生じる場合があります。そのため、患者の状況に見合った最善の治療法の情報は不可欠になるようでした。
・患者の経済状況やくらしにあった治療法の情報を、早めに(はじめる前に)提供してほしい。そういうデータがあったらいいなと思う。(60歳代前半・女性)
保険
今回の肺がん経験者の中では、がん保険の加入者の方が未加入者よりも多くいらっしゃいましたが、治療費を健康保険の範囲でカバーができた方や、がん保険でカバーされた方がいらっしゃいました。保険の種類は、民間のがん保険、郵便局の保険、共済保険など多岐にわたりました。
次の方は、手術費用とCTやMRIの高額な検査費用を保険でまかない、その他の治療費は健康保険の高齢者の1割負担でカバーがされたようです。
・高齢者のため1割負担で思いのほか安かった。また、手術費用や検査費用がかかるので、がん保険に入っていて助かった。(70歳代前半・女性)
がん保険に加入したことで経済的なメリットを感じられた方は多くいらっしゃいます。加入のきっかけは様々であり、昔から偶然に加入していた方もいれば、ご家族がたまたま保険をかけていてくれていた方もいらっしゃいました。また、ご家族にがん患者がおられて、万が一の際に備えて保険に加入されていたという方もいらっしゃいました。
・がん県民共済に加入していてよかった。(60歳代後半・男性)
・がん保険に加入していた。たまたま入っていたのだが助かった。健康保険と合わせると大分カバーできた。(50歳代後半・男性)
・たまたま家族が郵便局でがん保険に加入してくれていて、心配なかった。(50歳代後半・男性)
・現職時代からがん保険に加入していたので、大方がカバーできた。(70歳代前半・男性)
一方で、残念ながらがんが後発した場合、がん保険の加入対象外になってしまった方もいらっしゃいます。
・がんになったあとに、がん保険に加入することが出来なかった。(60歳代前半・男性)
中には、がん保険に加入していなくても、健康保険の範囲で治療が行えたり、休職中の経済補償が得られて経済的に救われたりした方もいらっしゃいました。
例えば、がん保険には加入していませんでしたが、抗がん剤治療もなく、国民健康保険の範囲内で治療を行い、経済的な問題はなかった方もいらっしゃいます。また、所属先の福利厚生で経済補償を得られた方もいらっしゃいます。
・公務員の共済組合から休職中の経済的な補償があり、幸せだと思った。(50歳代前半・男性)
生活 / こころへの影響 記事数: 4
がんの発見・告知以降は精神的な面で様々な体験をされます。ここではそれらの体験を通したこころへの影響を紹介します。がんを患ったことにより恐怖感や不安にさいなまれる一方、家族などの支えを実感したり、病気がきっかけで前向きな心境へ変化したりする一面が語られました。
恐怖・不安
がんの告知は、死の恐怖や将来への絶望につながり、ただただ不安になり落ち込むしかできなかったという体験になることもあるようです。
・告知、手術前が一番苦しく、手術後落ちつくまで時間がかかった。死にたくない気持ちとどうでもいいやという気持ちがあった。(60歳代後半・男性)
将来のことを考えると不安になったという語りは多くみられました。中には、「70歳を過ぎても将来の心配があった。若い人はなおさら心配になるのではないか」とおっしゃった方もいます。
その他、「なんでわたしが?と思った」「まさか自分がなると思わなかった」との体験が複数語られました。その方の1人は、がんになる予期をしていないところを告知をされたために、びっくりしたというよりは、「とにかく落ち込むしかなかった」と話していらっしゃいました。
家族の支えを実感
家族など近い存在にささえられて“一人で生きているんじゃない”と思った時、前向きに気持ちが変化した方もいらっしゃいました。
・告知から10日間ほどは生へ執着して夜も眠れないほどだった。妻の言葉があり、それから「できることはなんでもやろう」という気持ちに変化した。(50歳代前半・男性)
病気を体験後、気持ちが変化
病気の辛かった体験は今もなお、こころのなかに刻まれているようですが、告知・治療・回復の一連の体験は、その後の気持ちの持ちように変化がみられるようです。例えば、生きる幸福感や安定感を感じたり、再発予防のために体調に気をつけたりするようになるなどの心の変化が語られました。
中には、治療が一旦終わった心境として、手術の傷はあるものの今の自分があることのいとおしさを語っていらっしゃった方もいます。
・がんになって3年が経過。手術の跡は恥ずかしくて見せられないが、あとは困ったことはめったにない。(70歳代前半・男性)
さらにこの方は、「これからもどうなるかわからないけれども、今、こうやって自分自身がいるということは幸せだなと思います」と語っていらっしゃいます。
しかし、がん再発に関しては神経質になるもので、中には今まで以上に体調面の管理には神経質になり、今後の自分の身体との付き合い方に戸惑うという語りもみられました。
・不安はないが、咳き込まないなど体調面管理には常に気をつけている。まだどのようにすればよいか自分でもつかめていない。(50歳代後半・男性)
生活 / 日常生活での身体の不具合 記事数: 4
ここでは、がんの判明から現在まで、普段生活している中でからだに不自由を感じるようになった事柄について紹介します。
肺がんのはじまりの兆候として、咳や胸痛、息切れ、声が枯れるなどの症状が表れます。また、小細胞がんの場合、早期から咳や血痰が出るといった症状が見られます。
治療後も、息切れや声の枯れはなかなか回復が難しく、日常生活に支障を及ぼす原因として挙げられています。趣味の散歩や登山でもすぐに動悸が起きてしまうなど、身体の変化を頻繁に感じることがあるようです。
また、予想していた以上のからだの変化に驚いたが、日常生活のなかで少しずつ慣れていったという話も聞かれています。
・声が普通に出せるようになったのは手術してから1ヶ月後。現在も、話をすると息切れが起こる。(50歳代前半・男性)
・会話中に咳込みと息苦しさが起こり、仕事に影響が出ている。(50歳代後半・男性)
外科手術によって治療を行った場合、手術後半年から1年の間、手術の傷跡(創部)に痛みが残る場合があります。今回のインタビューでも、治療後の日常生活において不自由に感じておられる方々のお話をうかがうことができました。
次の方は、腕を動かす時に傷跡が「ひきつるように」痛むと話されていました。
・腕を動かすと、傷がひきつるような痛みを感じる。(70歳代前半・女性)
また、放射線治療を行った場合、治療中や治療の終わりごろから肺臓炎、食道炎、皮膚炎などの副作用が起こることがあります。肺臓炎に関しては、咳や痰の増加、微熱、息切れが起こり、食道炎では固形物の喉の通りが悪くなり、痛みを伴うこともあります。
今回も、軽症でしたが食道の炎症を起こしたと話してくれた方がいらっしゃいました。
・放射線治療後、風邪を引いたときのような喉の痛みが起こった。(50歳代前半・男性)
放射線治療の副作用に関しては、「治療」カテゴリー内の「放射線治療の副作用」というトピックに詳しくまとめてあります。そちらもご参照ください。
生活 / がんと生きる姿勢 記事数: 7
ここでは、がんとわかって治療を経たあと、日々どのように感じ、考えながら毎日を過ごされているか、ということに関する語りをご紹介します。がんを抱えている事への不安を語られた方がいらっしゃる一方で、逆に、がんの経験によって生まれた意気込みや自分なりの生き方をお話しされた方もいらっしゃいました。
不安・意気込み
治療を終えた後も、転移や合併症・副作用に対する不安を抱える、という語りは、多くみられます。たとえば、「もしがんが出やすい体質ならば、現在治療中のがんが治っても不安」「治療をやめて一ヶ月経ったが、これから合併症や副作用の症状が強く出ないか心配」というような語りがみられました。
また、不利な情報を知ることで不安が生じるのを避けるために、とくべつ治療法について調べたりしないという方もいらっしゃいました。
・たまたま取ったリンパ節の一カ所に転移があったので、ほかにもっと転移がひろがっているのでは、と不安になった。(60歳代後半・男性)
・診察を受けに行く度に、何を言われるかいまだに緊張する。異常なしと言われるとまた元気が出る。(70歳代前半・男性)
このように不安がある一方で、不安を抱えながら生きていく上での、様々な覚悟や意気込みについて語られた方もいらっしゃいました。
覚悟の具体的な内容としては、「不安もあるが、再発した時は一生懸命やる。」「リンパ節じゃこれはもう生涯の付き合いだろうなと、ある程度自分で覚悟をした。」といった声がありました。髪が薄くなっても、やはり治すためには我慢して打たなければならないと思ったという方もいらっしゃいました。
また、日々の生活雑務が、病気の不安を忘れさせてくれる大切なものだという方や、前向きに生きることの大切さを語られた方がいらっしゃいました。ただし、積極的に前向きに生きようという声がある一方で、前向きに考えないと生きていけないという声も聞かれました。
死ぬこと・生きることに対して(がんの捉え方)
今回のインタビューでは、自分の生や死、あるいは自らの病気に対してどのように考えながら日々生きていらっしゃるかを語って下さった方がおられました。
死ぬこと・生きることに関しては、自分は生かされていると感じている方が複数いらっしゃいました。同時に、生かされている分、できることは何でもやろうという決意を語られていました。ただ、その結論に至るまでは様々な葛藤を経験されたようでした。
・合併症などにかかって終止符を打ってしまった方がいいのかと思うこともある。しかし、これも人生の修行だと思っている。(60歳代前半・女性)
またこの方は、「正しいか間違っているか分からないけれども、自分で自分を守っていくことが周りにこたえていくことと思っている。自分が生かされている意味を知りたい。」ともおっしゃっていました。
・自分の命は親からもらったものであり、自分は生かされている存在。何をやっても運命だから、何でもやってやろうと納得している。(50歳代前半・男性)
年齢と死に関しては、自分は死んでもおかしくない年と考える方がいらっしゃいました。一方で、若いときはいつ死んでもいいと思っていたが、年をとる程に死にたくなくなってきた、という正反対の意見をお持ちの方もいらっしゃいました。
・平均寿命を過ぎると、死んで当たり前の年だから、癌で死のうが何で死のうが関係ない。(60歳代後半・男性)
がんの捉え方に関しては、病気を「もうそんなに無理して働くことはない」という自分の体からのメッセージとして捉える方がいらっしゃる一方で、「この世における修行」と捉えている方もいらっしゃいました。また、「病気との共存」という捉え方もありました。
・無理をしてきた自分に対するメッセージとして病気を捉える。(60歳代前半・女性)
・病気と仲良く付き合う、「共存」する。趣味をたくさん持って、どうせなら笑って生きる。(60歳代前半・男性)
この方は、病状が悪化した場合、再び手術して自由に動けなくなってしまうよりは、自然体で生活したいともおっしゃっていました。
生活 / 通院に関すること 記事数: 4
抗がん剤治療や放射線治療を行う場合、通院して治療・施術することがあります。ここでは、このような通院に関して、どのように通院しているのかということや、通院時の苦労、通院に対する思いなどの語りを紹介していきます。
治療目的の入院
治療目的で通院している方は、比較的通院頻度が高く、週に1度か、2週に一度の割合で通院されている方が多いようです。
抗がん剤の服用治療を行っている場合は、服用する抗がん剤を処方してもらうために通院していたことがうかがえます。
・週に一度の通院で抗がん剤を処方してもらい、治療を受けている。(60歳代後半・男性)
また、抗がん剤を病院で投与してもらう治療法をとっていた場合は、投与のタイミングをみて、通院のパターンであったようです。
・週に一度の通院を3週やって1週お休み。抗がん剤をやった次の日は、仕事もお休みした。(50歳代前半・男性)
検査目的の通院
手術を受けて、その後は特に抗がん剤などの治療はせずにいる場合でも、検査のために通院している方も多くいらっしゃいます。この場合、1カ月に1回の検査が、だんだんと間隔を置くようになっていると話されていました。
・検査のために1カ月に1度の通院を行っている。(70歳代前半・男性)
次の方は、手術後、3カ月に1回通院している意味を医師からはっきりとは告げられていませんでした。そのため、ご自身は「治療のために通院しているのではない」と話しています。
・:薬の処方や投与がないので、通院しているのは検査のためだと思う。(60歳代前半・男性)
再発・転移 / 再発・転移の診断と治療 記事数: 3
ここでは、最初にがんが見つかった箇所を治療した後に、同じ部分に再発した、もしくは他の部分に転移したという事例について、2名の方の体験談を紹介したいと思います。お二人ともリンパ節への転移でした。
次の方は、手術をしてから数ヵ月後にリンパ節転移が見つかり、放射線治療と抗がん剤治療をされました。しかし、副作用を抑えるため、いったん治療をやめたこともあったようです。(主にインタビューに同席された妻の方がご本人に代わってお話されています。)
・最初の手術後にリンパ節の転移がみられ、放射線の治療を行った。その後再手術を行い、放射線治療と抗がん剤治療を行った。(60歳代後半・男性)
また、次に紹介する方のように、初期がんの手術を行った結果、手術中にリンパ節への転移が見つかったという方もいらっしゃいました。その後、抗がん剤による治療を続けたものの、CT検査(X線写真をコンピュータで撮影する検査)により、さらに転移が進行していることが判明したそうです。この方は、治療をして仕事に復帰するつもりでしたが、やむを得ず退職をするしかありませんでした。
・手術中にリンパ節転移が発覚し、抗がん剤を投与した。その後、絶対安静になり、退職せざるを得なかった。(60歳代前半・女性)
・最後の抗がん剤から1週間後の検査で、さらに縦隔と鎖骨のリンパ節への転移が判明。(60歳代前半・女性)
治療 / 手術後の経過 記事数: 4
肺がんを摘出した後、その副作用として息苦しさ・手術の傷の痛み、のどの痛みなどが主な症状として現れることがあります。
ここでは、手術の後、みなさんがどのように過ごされているのか、その気持ちを含めた語りを紹介します。
退院までの日数
今回お話くださった方は、全員が手術後に退院された方々でした。
手術のために入院されてから退院されるまでの日数は、1週間から40日間まで、幅がありました。1週間から10日間で退院された方は、術後の経過が軽いと思われる方も多かったようです。
インタビューにお応えくださった方の中には、比較的初期の段階で異変が発見され、がんという確定の診断を受けたのはかなり時間が経ってからで、ご自分の肺がん体験をさほど重くとらえているわけではないような方もおられました。
手術後3日目には病院内を歩き、退院も9日と早かったうえに、退院の日にすぐ草むしりができるなど、すぐに日常に戻れたことは、ご本人がご自身の経験を「軽かった」と思われる一つの理由だと言えそうです。
なかには、手術後長く入院させない方針の病院にいたのですぐ退院したという語りも見られました。また、手術の直後は、他の人に比べて長く管を付けていなければならないなど、医療者側も慎重に対処する必要があったものの、比較的早くに退院したという方もいらっしゃいました。
早めに退院する場合、再発を防ぐために、抗がん剤治療を勧められ、一時的に投与したという選択をした方もいらっしゃいましたが、他方で、退院前の検査の結果、医師と相談して、抗がん剤治療を施さない決定をした方もいらっしゃいます。
●管を長くつけていたものの、それが取れたらすぐ退院でき、抗がん剤治療も選択しなかった(50歳代後半・男性)
日数に関わらず、入院しているだけで体力が落ちてしまう、という声が聞かれました。
次に紹介する方さんは、手術後は1週間から10日と早めに退院できたのですが、入院してから手術するまでが長く、その間に体力が落ちたとおっしゃっていました。
●入院したら歩けないので、体力が落ちてしまい、手術後のリハビリも大変だった(70歳代前半・男性)
手術後の不具合と、そのときの気持ち
肺がんの部位を摘出した直後は、息苦しさや傷のうずきなど、さまざまな不具合が見られ、またそれぞれの状況に対しても思いも幅が見られました。
今回の語りの中には、手術後の傷のうずきや息苦しさを感じ、今でもときどき咳こんだりしていますが、そのことに対しては、「多分これからもつづくのだろう」と、ご自身のなかで折り合いをつけているような語りが見られました。
一方で、声が出なくなるという体験をした方の中には、その説明を事前に医師から聞いていたものの、やはり悲しい気分になったと感じた方もいらっしゃいました。
●手術後に声が出なくなり、悲しくなって涙が出たこともある(50歳代前半・男性)
ほかにも、以前に体験した胃がんの手術の体験と比べて、夜うずく以外はさほど変わりがなかった、とおっしゃる方や、手術後の痛みよりも、ギブスをつけて身動きが取れなかったことがとても辛かったと話されている方、さらに、手術後の見た目を気にして、「人さまには見せられない」と話している方もいらっしゃいました。
手術後に行ったこと
手術後は退院に向けて、歩く訓練など、さまざまなリハビリが行われていました。
「外科療法」のところでもご紹介したように、次の方は手術前から、息を吹き込む器具を用いて肺を鍛えるように言われていました。しかしご本人はもともと肺が強かったようで、手術後もその器具に息を難なく吹き込むことができていたようです。
●階段の上り下りと、息を吹き込む練習はすぐクリアできた(70歳代前半・女性)
他にも、一日45分ほど、リハビリ室での訓練と、階段の上り下りによる歩行訓練を退院までの間にこなしていた方もいらっしゃいました。この方は特に、リハビリ室での指導の下の訓練のおかげで動けるようになり、ご自身はそれがよかったと話されていました。
また退院後も、ご自身の体力低下を心配して、意識的に家の回りを歩いたり自転車で出かけたりしていたと話されていました。
発見 / 診断のための検査 記事数: 3
肺がんの診断のために実施される検査方法は、画像診断(レントゲン、CT、MRI、骨シンチグラフィ、PET)、内視鏡(気管支鏡など)、細胞診(喀痰細胞診、胸水細胞診、穿刺細胞診など)、経皮肺生検、腫瘍マーカー(血液検査)など数多くあります。
まず、咳、痰などの症状がある場合、最初に胸のレントゲン検査をします。次にがんかどうか、あるいはどのタイプの肺がんかを顕微鏡で調べるため、肺から細胞を集めます。そして、通常は痰の中の細胞検査をします。これらの検査は、影が肺がんであるかどうかの確定診断のための検査あるいは肺がんの病気を決定し治療方針を決めるための検査として位置づけられます。
ここではこれらの精密検査を受けた人の語りを紹介します。
次の方は、定期健診で影が見つかり、がんの可能性が高いとされるD判定になりました。その前からも喉の痛み、血痰などの症状があったため、内視鏡検査を実施しました。検査はさほど苦しくはなかったそうです。
●検査入院。内視鏡検査。検査はさほど苦しくなかった(50歳代前半・男性)
逆に、気管支鏡検査で病変の手前の組織を採取し、息が出来ないくらい苦しかったという人もいました。
また、かかりつけの病院で別の病気の治療中にレントゲンを偶然にとったところ、影がみつかったという方もいらっしゃいました。次の方は、突然具合がわるくなったことをきっかけにかかりつけの病院で検査を受けています。
●最初はかかりつけの病院で喀痰細胞診と喀痰を培養する検査を行い、それがきっかけでがんが判明した(50歳代後半・男性)
●再度、大きな病院の呼吸器科で検査を行い、腺がんと診断をうけた。レントゲンでは分かりにくいため、手術の際、リンパ節を切除して検査をした(50歳代後半・男性)
このように、レントゲンやCT以外の精密検査においては、かかりつけの病院から、県立病院や大学病院、がんセンターなどのより大きな病院を紹介されるケースが多くみられました。それらの精密検査は、呼吸器科、内科、内視鏡科での実施がされ、複数の科に渡って何度も検査を行った方もいらっしゃいました。
発見 / 思い当たる肺がんの原因・喫煙習慣 記事数: 10
ここでは、がんが判明する以前の生活習慣や、親類の方々のがん経験など、がんの原因についてインタビュー協力者が心当たりに感じている事柄を紹介します。
喫煙習慣
肺がんの原因として、一般的にイメージが強いものといえば、たばこを吸う習慣があげられます。日本人を対象としたある研究では、喫煙者は男性で4.4倍、女性で2.8倍にまで肺がんリスクが上昇するという結果が出ています(※)。
今回のインタビューでも、協力者のうち半数以上の方々が、喫煙習慣と肺がんを結びつけて考えていらっしゃいました。どなたも、自分の一日に喫煙する本数が、比較的多いことはふだんから自覚していたようでした。
※国立がん研究センター「生活習慣改善によるがん予防法の開発に関する研究」
●肺がんをきっかけにたばこをやめたが、それまで1日に3箱吸うこともあった(50歳代後半・男性)
●がんが見つかるまで、強いたばこを1日1箱以上吸っていた(50歳代後半・男性)
●20代からずっと喫煙してきたが、手術を機に禁煙(70歳代前半・男性)
一方、自分ではなく、家族の喫煙習慣を原因と感じている場合もありました。喫煙者である配偶者と30年間生活してきたという方は、肺がんは副流煙が積み重なった(外側に出る煙を吸い続けた)結果だと考えておられました。
●肺がんで亡くなったご主人の副流煙を、30年以上吸っていた(70歳代後半・女性)
●宴会などで、周囲の人々の喫煙を不快に感じるようになった(60歳代後半・男性)
次の方の場合は、喫煙習慣もなく、周囲にたばこを吸う人もいなかったのに、肺がんになったケースです。たばこの害はほとんどなかったにもかかわらず、がんにかかったことを不思議に思っていました。
●両親はたばこを吸っていたが、一緒に暮らした期間はそれほど長くない(70歳代前半・女性)
体質・遺伝
親類にがんにかかった人がおり、いわゆる「がんまき(がん家系)」を意識している人や、または医師からがんにかかりやすい体質である、と言われた人もいました。肺がんではなくとも、がんを患った親がいると、診断を受けた時にその親類のことが頭に浮かぶようです。
●父親も肺がんで、兄弟もがん保険に入るなど意識している(60歳代後半・男性)
●体質的にがんが出やすいと、医師に告げられた(50歳代後半・男性)
職場の環境
今回のインタビューでは、ストレスや排気ガスなど、厳しい労働環境にさらされたことも、がんの原因に挙げられていました。東京で運転手をしていた次の方は、排気ガスをたくさん浴びてしまったことも原因の一つではないかと話していました。また次の方の場合は、夜勤が中心で不規則な生活になりがちだったことを原因としてあげていました。
●東京で20年間トラックの運転手をしていた(70歳代前半・男性)
●夜間が中心の不規則な仕事を定年まで続けた(70歳代前半・男性)
発見 / 情報の集め方・プロセス 記事数: 4
自分のがんの進行段階や、どのような治療法を選択するべきかについて、さまざまな手段で情報を集めた人もいれば、主治医の先生を信じて、ほとんど情報収集は行わなかった方もいました。
あまり積極的に情報を集めようとしなかった方々は、先生の判断に身を任せ、治療に専念しているようでした。たとえば次の方は、自分で知識を集めてしまうと、主治医の方の治療法に疑問を持ってしまったり、信頼できなくなってしまうことを気にしておられました。あるいはインターネットなどを使い慣れていないため、情報収集の手立てがないという方もいらっしゃいました。
●身のまわりの本で調べたが、あとは先生にお任せした(60歳代後半・男性)
一方、積極的に情報を集めた人は、自分の肺がんの種類や治療法を調べたり、自分が選んだ治療法の知識を持っておくなどの目的で、インターネットや本を活用しているようでした。
現在、がんに関する情報は、インターネットのホームページを中心に、たくさんの場所から集めることができます。国立がん研究センターをはじめとする医療機関のホームページや、同じがん患者が公開しているブログなど、インターネットからさまざまな情報を得られます。
また、書店や図書館でも、がんや治療法について詳しく説明している本や、日本全国のがん専門医を紹介するものなど、さまざまな必要に応じた本を手に入れることができます。
●医師から診断書をもらい、自分の肺がんの種類や治療法、病院などを調べた(50歳代前半・男性)
●病院に置いてあるパンフレットを持ち帰り、選択可能な治療法について情報を集めた(50歳代後半・男性)
なかには、同室の患者の方から治療法などについてアドバイスをもらい、治療法を選択する参考にしたという方もいらっしゃいました。次の方は、がん患者の「先輩」方からさまざまな経験を聞いて、それぞれの治療法のよいところや辛いところなどが分かり、非常に参考になったそうです。
●同室の「先輩方」から、治療法や副作用についてアドバイスを受けた(70歳代前半・男性)
発見 / がんの判明 記事数: 5
ここでは、肺がんにかかっていることが判明したときの状況や、告知された時の気持ちに関する語りをご紹介します。(がんと確定するまでの気持ちについては、「発見までの経緯」というテーマでご紹介しています。)
判明したときの様々な状況
がんにかかっていることが判明した時の一般的な状況として、健診などで疑いが発見されたあとの精密検査で、がんと確定するということが考えられます。
今回のインタビューでも、気管支鏡や内視鏡による精密検査を受けて判明したという方がいらっしゃいました。一方で、まったく違う病気の治療中に、予期せずがんが発覚したという方もいらっしゃいました。
●気管支鏡検査の結果、がんと判明。患部に機械が届かなかったので、手前の組織を取って調べた(70歳代前半・女性)
●腸閉塞と肺炎で入院した際に撮ったレントゲンで、左肺に影が見つかる(70歳代前半・男性)
気持ち
次に、判明時の気持ちについての語りをご紹介します。今回のインタビューでは、ショックを受けたという人がいる一方で、特に動揺することなく冷静に受け入れたという人もいました。
ショックを受けた人の中には、「何で自分が」「諦めきれない」という思いを強く感じたという語りがありました。また、「我が人生は終わりだ」と思ったという人もいました。
●覚悟を決めるまで10日ほどかかった。その間は、いろいろ考えてしまう夜が怖かった。自分ががんになると思っていなかった。生への執着を強く感じた (50歳代前半・男性)
また、「がんですよ」と医師に言われても悪性とは思わなかったという人は、判明後しばらく経ってから家族から知らされ、驚いたとおっしゃっていました。
●判明後も以前と変わらず仕事に励んでいると、家族から「肺がんでも悪性と言われているから、無理はしないでください」と告知され、ハッとする(70歳代前半・男性)
ショックを受けなかったという人は比較的早期の発見で、「がんは切ってしまえば治る」というイメージを持っているようでした。
●取れば治るという気持ち。他人事のようで、ショックも不安もなかった(50歳代後半・男性)
発見 / 治療法の選択・意志決定 記事数: 6
ここでは、がんを治療していくための具体的な方法を、インタビュー協力者がどのような状況で決断したのかについてご紹介します。
本来は、医師から治療法の選択肢について詳しく説明を受け、自分自身も時間をかけて治療法について調べたうえで選択をするのが望ましいかたちです。しかし、実際は十分な情報や時間が得られないままに、やむを得ず限られた状況で決断を迫られる例が多く見られます。
今回インタビューに協力してくださった皆さんも、決断に際してさまざまな制約があったことを話しています。
外科手術による摘出には、病巣を含めたより大きな部位を切除しなければならない場合が多く、厳しい決断を迫られることになります。肺は大きく上葉、中葉、下葉の3つに分かれており、がんの発生する場所によっては、次の方の場合のように一枚分の肺すべてを摘出することもあります。
●患部が気管支に近く、手術には左肺下葉すべての摘出が必要と言われた(50歳代前半・男性)
インタビュー協力者のなかには、担当の医師を信頼しており、決断を任せた方もいれば、自分の意見を言えないまま手術を実施することになったという人もいました。
小さながんを取るのに大きく肺が切り取られてしまうことに疑問を持ちつつ、自分の考え方は素人意見だからと、疑問を引っ込めてしまったことを後悔していた方もいました。
また次の方も、治療法の選択の時間が与えられないうちに手術が決まってしまったことに不満を持っていました。
●がんは肺の端のほうにあり、大きな部位切除の説明に疑問を持ったが、自分の意見を言えなかった(70歳代前半・女性)
●手術を迫られ、考えがまとまらないうちに実施(60歳代前半・女性)
次の方は、担当の先生との面談の際に病気のことで動揺してしまい、治療法の判断をすべて医師任せにしてしまったことが良くなかったと話していました。
●先生に「はい」「お任せします」ばかりで、選択肢について質問しなかった(50歳代後半・男性)
ご家族や同室の患者さんなど、周囲の方々の意見を聞いて決断をしたというお話も、今回のインタビューでは聞かれました。自分では手術を受けるつもりでいた次の方は、息子さんたちを交えて主治医と話し合った結果、合併症の危険を考え、放射線治療に変更したそうです。
●手術を考えていたが、息子たちと話し合い、合併症の危険の少ない放射線治療を選んだ(70歳代後半・女性)
次の方の場合は、同室の人や同病者の経験や意見を聞く機会にめぐまれ、そのことが自分の治療法の決定にとても役立ったと話していました。
●抗がん剤治療を経験した知人の話を参考にして、手術を選択(50歳代後半・男性)
発見 / セカンド・オピニオン 記事数: 3
セカンド・オピニオンとは、病気の診断や治療法について、自分の主治医以外の医師から意見を聞いて、意志決定の参考にすることです。
今回の肺がんの体験を語っていただいた人のなかでは、次にご紹介する方が、セカンド・オピニオンを選択したことを話していました。
●再発の兆候をもっと詳しく調べるために、セカンド・オピニオンを求めた(60歳代前半・女性)
セカンドオピニオンを受けなかった人は、担当の医師を信頼して、セカンドオピニオンを受けない選択をしているようでした。
●地元の先生を信頼してやっていくため、一度もセカンド・オピニオンを受けず(60歳代後半・男性)
●担当医師を信用して、セカンド・オピニオンを求めなかった(50歳代前半・男性)
治療 / 外科療法 記事数: 10
肺がんの手術(外科療法)は、主に早期の場合に行われます。
手術方法には3つあり、肺の幹部を部分切除する場合や、肺葉切除する(右肺は上葉・中葉・下葉に分かれ、左肺は上葉・下葉に分かれており、そのうちの一つを切除する)場合、そして片側の肺をすべて切除する場合があります。また、リンパ節にがんがあるかどうかを確認するためにリンパ節切除を行う場合もあります。
ここでは、肺がんの手術がどのように行われたのか、そのときどういう気持ちだったのかなどについての語りを紹介します。
がんの治療方法として手術を選んだ方の中には、手術前の検査ですでに摘出箇所が分かっていた方がいらっしゃいますが、他方、手術をしてみないと、手術で完治するかどうか、またはどこを摘出したらよいのかどうかわからないと医師から告げられ、手術にのぞんだ方々もいらっしゃいます。
●胸を開いてみて、がんの部位が判明。左の上葉だけの摘出(50歳代前半・男性)
●胸を開いて、リンパ節に転移していることが判明(60歳代前半・女性)
手術の方法
手術の方法は、がんの場所や大きさによって違いがあるようです。
例えば、内視鏡と切除のための小さなメスが通るほどの穴を胸にあけて行う 内視鏡(胸腔鏡)手術を行った方もいらっしゃいます。しかし、肺葉ごと摘出する場合や、手術によってがんの部位を確認する目的での手術の場合、胸や背中を大きく開いて手術を行うようでした。
手術の目的
手術は主に、がんになってしまった部位を摘出することを目的としています。そのほかでは、リンパ節への転移を検査するために、開胸してリンパ節を切除することもあります。
●リンパ節への転移がないかどうかを、リンパ節を切除して検査(50歳代後半・男性)
手術前の気持ち
手術前の気持ちでは、手術に際して摘出部位がわかっていて、早期発見であったという方と、開いてみなければわからない、もしくはステージが進んでいるという方と、気持ちで大きく差がありました。
がんの発見が早かったり、手術個所が特定されていたりした場合は、次の方のように、全然不安を感じなかったことが多いようでした。
●自分でも不思議なくらい、不安などは全然感じなかった(50歳代後半・男性)
他方、手術前に辛い気持を抱えていたという声も聞かれました。
次の方は、入院してから手術するまで待たされている期間がとても辛かったと話されていました。
手術前の準備
肺がんの部位を手術で摘出する前に、準備として肺の訓練をされたという方もいらっしゃいました。
●肺活量の検査をしたり、肺呼吸で肺を鍛える器具を用いて、手術に備えていた(70歳代前半・女性)
治療 / 放射線療法 記事数: 1
ここでは、放射線によるがんの治療法について紹介します。
放射線療法とは、X線などの放射線を照射して、がん細胞を殺してしまおうというものです。
肺がんの場合、放射線治療の対象となるのは、腺がんや扁平上皮がんなどの非小細胞がんでは第Ⅰ期から第Ⅲ期で、小細胞がんの場合は他の部分に転移が見られない場合が一般的です。
また、心臓や肺などに機能障害があり外科手術ができない場合にも、放射線療法が選択されます。
一般に、身体の外側から肺の患部やリンパ節に放射線を当て、これを1日1回週5日行い、3週間から6週間継続することが必要です。
今回のインタビューで放射線療法についてお話ししてくださった方は、扁平上皮がんの外科手術の後、他の部分にがんが進行している可能性を考えて、放射線を選択したようでした。
●扁平上皮がんの手術後、気管支へのがんの進行を考え、放射線療法を実施
この方の場合、手術後に抗がん剤治療を実施する組み合わせ型の治療法でしたが、念には念を入れてということで、二つの治療のあいだに放射線治療を行ったそうです。
このように、ほかの治療法と組み合わせて実施する形でも、放射線療法は適用される場合があります。
治療 / 化学療法 記事数: 3
抗がん剤治療は、手術や放射線治療と並んで、がんの三大治療法の1つとなっています。
抗がん剤は、投与後血液中に入り、全身をめぐって体内のがん細胞を攻撃し、破壊します。どこにがん細胞があってもそれを壊滅させる力を持っているので、全身的な効果があると言われています。
ここでご紹介する語りはすべて、外科手術の後に抗がん剤治療を受けた方々のものです。抗がん剤は治療の一環に含まれていたという方がいらっしゃる一方で、念のため受けたという方もいらっしゃいました。
治療効果に関しては、副作用が強くて途中で一時中断したという方や、逆に、治療効果が高く途中で切り上げることができたという方がおられました。抗がん剤の種類によって、治療効果が違ったという声も聞かれました。
また、抗がん剤の投与は一定の周期で行われるため、抗がん剤治療中に職場復帰をされた方もおられました。
●抗がん剤治療で間違いなく髪の毛が抜けると言われたが、髪の毛は生きていくために必要ではないと思い、手術後は念のため、治療を受けた(50歳代前半・男性)
●手術後、半月に一度抗がん剤を打った。予定より短い回数で切り上げることができた。車で片道約一時間の道のりを、自分で運転して通院していた(70歳代前半・男性)
抗がん剤治療は、薬の種類によって効果や副作用に個人差があるため、薬を使用するときに葛藤が生まれることがあります。
次にご紹介する方は、複数の抗がん剤を試した後、特定の抗がん剤が効く体質であることが分かったそうです。しかし、実際にその抗がん剤を使うことを決断されるまでには時間がかかったとおっしゃっていました。
●医師にイレッサを勧められるも、身内に服用後2週間目に亡くなったひとがあり、2年ほど怖くてやらなかった。しかし服用後、効果があらわれた(60歳代後半・男性)
治療 / 代替療法 記事数: 2
大きな病院などで現代医療が提供する外科療法や放射線治療、化学療法といった治療法のほかに、アガリクスなどを服用する免疫療法を試す、漢方を服用するといった代替療法(補完代替療法)を試みている患者の方もいらっしゃいます。
しかし、多くの代替療法は科学的に効果が実証されているわけではなく、病院の医師もあまり積極的には勧めていないようです。
今回インタビューに参加してくださった方々のうち二人の方が、免疫療法や漢方などを、病院での治療と並行して行っていました。
インターネットで情報を集めた結果、アガリクスを知って買い求めた次の方は、手術の前までは定期的に飲み続けていましたが、その効果についてはあまり芳しいものとは感じられなかったようでした。
●免疫療法について情報を集め、手術直前まではアガリクスを飲んでいた(50歳代前半・男性)
ご自身は気乗りがしなかったものの、少しの可能性にでも賭けたい、ある方法をやり残して終わるのは辛いというご家族の意志から、免疫療法を決意したという方もいらっしゃいました。
次の方は、娘さんの勧めを受けて、病院には内緒で免疫力を高めるワクチンを投与する治療を、病院への通院と並行して受けていました。
●病院には内緒で、セカンドオピニオンというかたちで東京の病院で免疫療法を受けた(60歳代前半・女性)
治療 / 放射線治療の副作用 記事数: 3
ここでは、肺がんの放射線治療による副作用に関する語りをご紹介します。
一般的に、疲れる・食欲がなくなるといった全身の症状に関しては、個人差がかなりあり、全く感じない方もいれば非常に苦しまれる方もいらっしゃいます。
放射線治療の主な副作用は、治療される部位(ここでご紹介する語りの中では、頭部や頸部が該当します。)に起こります。
インタビューを受けてくださった方の中には、食欲不振のような全身症状を主に感じたという方がいらっしゃいました。
その一方で、全身症状と共に声枯れや下痢・便秘を経験された方もいらっしゃいました。また、直接放射線の照射を受けた部位に炎症がおきたため、日常生活で不便を感じたという声もありました。
●体に力が入らない、声枯れ、下痢、便秘、食欲不振、立ちくらみ(ひどいときには数秒)失神(60歳代後半・男性)
●痰を出すと血が出るので、転移したのかと思った。放射線照射を受ける食道や胃が炎症をおこし、溜飲に違和感を覚えたり、もたれたりする(50歳代前半・男性)
他には、「甘いものが苦手になった」というように、味覚の変化を感じた方もいらっしゃいました。
治療 / 抗がん剤治療の副作用 記事数: 6
ここでは、肺がんの抗がん剤治療による副作用に関する語りをご紹介します。
抗がん剤による副作用がどのくらい頻繁にどの程度出るのかは、抗がん剤の種類によって違うだけでなく、個人差もあります。
副作用は自分でわかる自覚的なものと、検査などによってわかる他覚的なものに大きく分けられます。
自覚的な副作用には、吐き気・嘔吐、食欲不振、口内炎、下痢、便秘、全身倦怠感、末梢神経障害(手足のしびれ)、脱毛などがあります。
他覚的な副作用には、白血球減少、貧血、血小板減少、肝機能障害、腎機能障害、心機能障害、肺障害などがあります。
その他、予期しない重い副作用があらわれ、まれに命にかかわることもあります。
自覚的な副作用
今回のインタビューでは、脱毛や吹き出物など外見上の変化を経験された方がいらっしゃる一方で、激しい疲れや集中力の低下、かゆみに悩まされたという方もいらっしゃいました。
●抗がん剤治療後しばらく経ってから髪が抜けた。吹き出物が出て、治ると跡が黒く残った(50歳代前半・男性)
●痰に血が混ざることがあった。そのことを医師に話すと、すぐ「薬をやめますか」と言われた(60歳代前半・男性)
●始めてから3ヶ月ほど、疲れが激しく力仕事ができない。一旦やめるとメキメキ体がよくなった(70歳代前半・男性)
●周囲から見て言動がおかしくなる。集中力が低下して、文章を読んでも頭に入ってこない時期があった(50歳代前半・男性)
自覚のない副作用(合併症)
インタビューを受けてくださった方の中には、白血球の減少といった自覚できない副作用の結果、合併症の危機にさらされた方や、実際に併発されたという方がいらっしゃいました。
●細胞の基準値が下がり過ぎ、合併症の危険があると言われた。そのために職場復帰も諦めざるを得なかった(60歳代前半・女性)
●イレッサ服用後、無気力に。間質性肺炎を併発していたことが判明したので中止。今はステロイド療法を経て、量を減らしてイレッサを再開している(60歳代後半・男性)
生活 / がんをふりかえって(学び・後悔) 記事数: 11
ここでは、がんを体験された方々が、がん判明から治療をしていく過程をふりかえって、そこから学んだり、したほうがよかった(しなければよかった)と後悔された内容を紹介します。
早期発見・定期健康診断について
早期発見について、語ってくださった方は多くいました。早期発見のためには、定期的な健康診断の受診が大切だと言われています。
肺がんの早期発見のきっかけとしては、頻繁な定期健診によるもののほかに、たまたま撮ったCT写真やレントゲン写真によるものが挙げられています。
・半年ごとの定期健診のおかげで早期発見につながった。(60歳代後半・男性)
・好奇心で受けたCT車での検査で早期発見し、助かった。(70歳代前半・女性)
・たまたま医師に勧められた胸のレントゲン撮影で早期発見につながったので、よかったと思っている。(70歳代後半・女性)
しかし一方で、定期健診ががんの発見に至らず、別の検査が役立った経験をお持ちの次の方は、定期健診や早期発見に対して、それほど肯定的ではありませんでした。
・定期健診では肺がんが見つからず、別の検査で見つかった。定期健診が早期発見に役立つのか疑問。(50歳代後半・男性)
医療者とのやりとりに関して
医師や看護師などの医療者とのやり取りをふりかえって、少し悔やまれている声も聞かれました。(カテゴリー「関係」のなかの「医療者」の項目を参照。)
後悔している声のひとつには、治療方法について思ったことが言えなかったことや、質問が自分のペースでできなかったことを悔やむものがありました。
・手術個所の大きさについて疑問を抱いたけれども質問できず。今となれば尋ねればよかったと思う。(70歳代前半・女性)
・体操などの手術準備に身を入れるためにも、手術個所を聞いておくべきだった。(50歳代後半・男性)
医療機関への提言
また、医療機関や行政への要望を語ってくださった方もいらっしゃいました。次の方はご自身の体験から、地方と都市部との治療体制の格差を話してくださいました。
・医療体制がもっと充実していればいいのにと思う。(60歳代前半・女性)
・定期健診よりも、高くても詳しい検査ができるシステム作りを。(50歳代後半・男性)
・これまでのがん検診を広げた検査を、行政がもっと受けやすくするシステムを。(50歳代後半・男性)
記録の重要性
がんが判明し、治療法や医師の指示などの記録を取り続けることが助けになることもあります。
次の方は、ご自身でも、手術や入院のときなどご自身が無理な時はパートナーの方でも、記録をとり続け、薄れる記憶を補ったとおっしゃっています。
・手術・入院・抗がん剤治療などの記録をとっていてよかった。(60歳代後半・男性)
がん保険の重要性
がんになった際に、経済的な支えになるものとして、がん保険が挙げられます(※「お金の問題」の項目を参照)。今回の語りのなかにも、ご自身はがん保険に入っていなかったため、入っていた方がよかったという思いを抱かれているものが見られました。