がん患者の体験 / 大腸がん
がん患者の体験 / 大腸がん
発見 / 兆候 記事数: 9
大腸がんは、早期に発見し治療をすれば、完全に治る可能性が高いといわれていますが、早期の大腸がんでは症状がないものも少なくありません※1。
ここでは、大腸がんの兆候がどのようにして現れたのか、そして、日常生活を送る中で、“いつもと違う”、“何かおかしい”と気付いたことについてのお話をご紹介します。
大腸がんの自覚症状は、がんの発生した場所や病状によって異なるといわれています※1。インタビューにご協力くださった方々が語られている大腸がんの兆候としては、便の変化をはじめ、複数の自覚症状が挙げられていました。
便の変化
何らかの兆候があって大腸がんと診断された9名中4名の方が、日常生活で、ほとんど毎日かかわっていた便が変化してきたことから異常に気付いていました。太さや色、軟らかさ、そして、排便の回数などの変化が、何かおかしいと気付くきっかけになっていました。細くなった便が、時間の経過とともに、軟らかくなり、そして血便へと変化していく状態を経験されていた方や、便の異常とともに食欲の低下や痛みといった複数の症状を同時に経験されていた方もいました。
・便が細くなり、そのうちに赤い血が混じるようになった。トイレに行く回数が増えたころには、便が赤くなっていた。(60歳代後半・男性)
・少し食欲が落ち、下腹部の痛みが続く中、便が黒く、軟らかくなり、ひっきりなしにトイレに通っていた。(50歳代前半・男性)
本当は便に何らかの変化があったのかもしれないのに、水洗トイレだったので見逃してしまっていたのではないかと語られている方もいました。 国立がん研究センター監修のがんの冊子※2でも、「流す前に必ず自分の便の状態を確認しましょう」と注意を呼び掛けているように、ほとんどが水洗トイレになった今では、便を観察する機会が少なくなっているようです。
・水洗トイレなので、便の異常を見逃していたのかもしれない。(60歳代後半・女性)
便以外の自覚症状
便の変化以外に、体重の減少、食欲の低下、倦怠感(けんたいかん)、おう吐、痛みなどといった、他のがんや疾患にもみられる症状を経験されていた方もいました。インタビューでは、必ずしも、大腸がんだけに特有の自覚症状とばかりはいえないものが、重要な兆候の1つとして語られていました。
自動車免許の更新時に撮影した自分の顔写真を見てやせたと感じたり、食事の量が減ってきたり、また、異常な疲れを感じていた方もいました。
・食事の支度をするだけでも横になりたいほど、疲れを感じていた。(60歳代前半・女性)
胃腸薬を飲んでも、おう吐がおさまらないことに異常を感じていた方もいました。腫瘍が大きくなってくると、腸(ちょう)閉塞(へいそく)(腸管がふさがり、食物やガスなどが通らなくなる状態)を起こし、吐き気やおう吐、腹痛などの症状が現れることもあるといわれています※3。
成長した腫瘍に押されて、がんに侵されていない近隣の臓器に痛みを感じていた方もいました。
・膀胱にまで達していた腫瘍に押されることにより、睾丸に痛みが生じた。(60歳代前半・男性)
思い違い
自分が日常的に経験していた他の疾患の症状と似ていたために、大腸がんの兆候とは思わず、がんの専門医を訪ねることはなかったという方もいました。
肛門からの出血を、痔だと思い込まれていた方がいましたが、がん以外の大腸の病気でも大腸がんと似たような症状が起こることがあり、一番、間違えやすいのが痔疾患といわれています※3。痔の傾向がある方にとっては、なかなか痔との区別がつきにくいようです。
・何となく具合は悪かったが、肛門からの出血は痔のせいかなと思っていた。(60歳代後半・男性)
フラフラする貧血の症状を、特に気にとめることもなく、検査の結果を知らされた時に初めて、がんの兆候だったことを知ったという方もいました。大腸がんが、直腸から遠く離れた場所(横行結腸、上行結腸、盲腸)にあり、慢性の出血が起こっている場合は、貧血の症状が現れて、がんが発見されることもあるといわれています※1※3。
・痛みもなかったので、湯上りにフラフラして倒れたのは、いつものことだから、病気じゃないと思っていた。(60歳代前半・女性)
兆候がない
大腸がんと診断された場合でも、必ずしも全ての方に何らかの兆候が現れるとは限らないようです。早期がんでは症状はほとんどみられないことが多いといわれています※1。今回のインタビューでも、無症状のうちに健康診断を受けたことがきっかけで、がんが発見された方がいました。中には、「もし出血しているのであれば、排便の時に水が赤くなって気付くだろう」 といったように、がんであれば、必ず、何らかの異常を知らせるサインがあるのではないかと考えていた方もいました。
・何の兆候もなかったのに、職場で受けた健康診断の便潜血検査で陽性という結果が出た(60歳代前半・男性)
【参考資料】
※1 大腸癌研究会(編):大腸癌治療ガイドラインの解説(2009年版)
※2 国立がん研究センター(監修):がんとどう付き合うか-大腸がん.がん研究振興財団発行 2007年
※3 藤田伸,島田安博ほか(監修):国立がん研究センターのがんの本-大腸がん:治療・検査・療養.小学館クリエイティブ.2011年
生活 / ストーマ・排泄 記事数: 6
ここでは、大腸がんに特有の問題である、ストーマや排泄に関する体験をご紹介します。
ストーマ(人工肛門)
大腸がんでは、外科手術でがんを切り取った後、ストーマ(人工肛門)を造る場合があります。ストーマには、「永久的ストーマ」と、あとで閉鎖する予定の「一時的ストーマ」とがあります。インタビューに参加してくださった体験者の中で、永久的ストーマを造った方はいらっしゃいませんでした。今回のインタビューでは、一時的ストーマを経験された方が11人中2名いらっしゃいましたので、ここでは、一時的ストーマを造った方々のお話から、ストーマに関する体験の一部をご紹介したいと思います。
ストーマを造ったことに対して、手術後にストーマが造られたことを知ってショックだったという方や、いずれは取れる、という思いから強く気にすることはなかったという方がいました。
・集中治療室を出てきてから、自分にストーマが造られたことを知った。(50歳代前半・男性)
ストーマを造った場合、自宅に戻る前に、病院でストーマ管理の練習をすることになります。インタビューでは、ストーマが造られてから、痛みを感じたり、皮膚のトラブルがあったり、装置が合わなくて便が漏れたり、といった体験が語られていました。ストーマ管理に慣れるまで、一定の時間と労力を要することがうかがえました。
・気圧の変化のような、押されたり縮まったりでストーマに痛みがあった。(50歳代前半・男性)
ストーマを閉じた後、軟便になったり排便回数が増えるなど、排泄で苦労されていましたが、ストーマについては、「慣れてからは楽だった」「さほど苦にならなかった」ということが語られていました。
・装置や形が合うものと合わないものがあり、慣れるまで大変だった。いろいろあったが、コツをつかんで慣れてからは楽だった。(50歳代前半・男性)
2つのストーマを造った方は、両方の管理をしなければならないことが時に負担となったことを語っておられました。
・ストーマは小腸と大腸に2つで、下の方がたくさん出た。2つもつけているとちょっと疲れることもあった。(50歳代前半・男性)
排泄のコントロール
大腸がんの手術をした場合、大腸のどの部分を切除したかによって、術後に排泄のコントロールが難しくなるという問題が生じます※1。結腸を切除した場合は、排泄のコントロールは以前と同じ程度に保たれ、問題はほとんど残らないことが多いようです※1。一方、直腸を切除した場合には、便をためる能力と押し出す能力が低下し、排泄のコントロールに問題をきたすことになります※1。
インタビューでは、複数の方が、手術後、排便の回数が増え、軟便になったことを語っておられました。一時的ストーマを造られた方も、ストーマを閉じた後、排泄コントロールで苦労されていました。排泄のコントロールがどの程度難しいのかは、人によって異なっていました。
排泄のコントロールに問題があると、長時間の外出が難しくなったり、不安や気遣いが増すといった影響が出ていました。
時間が経つにつれ、排泄のコントロールは徐々に改善がみられるようです。どの程度改善するかについて、医師からの説明では、1年かかると言われている方や、2年が目安だが完全に治らないということを告げられた方もいました。
・手術後、トイレの回数が増えて軟便になったが、3ヶ月経って改善してきた。医師から1年くらいかかると言われている。(50歳代前半・男性)
時間が経過すると、ご本人が経験的にコツをつかんで対応が上達してくることもうかがえました。排便のタイミングが分かってきたり、軟便になりやすい食べ物が分かってそれを避けられるようになったことが語られていました。
・長い外出はまだ無理はできないなと思うが、こうなってくるなというのが分かってきた。(60歳代後半・男性)
参考文献
1.大腸癌研究会:大腸癌治療ガイドラインの解説(2009年度版)
生活 / 病気や治療による外見の変化 記事数: 10
大腸がんの治療のなかで、手術の傷跡や脱毛、むくみなど、外見の変化が生じることがあります。治療の合併症や副作用のなかでも、そのような外見の変化は、医療的な対応がなされないことが多いようです。しかし、実際に生活を送るうえでは、外見の変化によってさまざまな影響があると思われます。
インタビューでは、体重の減少、脱毛、手術の傷跡、爪や皮膚の変化・むくみについて語られていました。ここでは、そうした外見の変化が、生活の中でどのように体験され、対処されているのかをご紹介したいと思います。
合併症や副作用の症状については<抗がん剤治療>、<外科手術>にもご紹介していますので、あわせてご覧ください。
体重の減少
インタビューに協力してくださった方のなかには、手術や抗がん剤治療の過程で、大幅な体重減少を体験している方がいました。入院中あまり食事をとれず、2週間で20キロ以上やせたという方、退院後に10キロ以上減ったという方がいました。体重減少は、周りの人から一見してわかる外見の変化といえます。いいダイエットになった、と肯定的に語る方もいました。一方、やせたことに周囲が驚き、その周囲の反応を見て不安を感じ、急きょ受診したという方もいました。
・入院したときは69キロあった体重が43キロになり、自分でも驚いた。(50歳代前半・男性)
・入院中は食事をしていなかったが、点滴をしている間は体重は減らなかった。退院後に自分で食べるようになってから12〜13キロ減った。(60歳代後半・男性)
・抗がん剤の副作用で味覚が変化し、食欲がなくなった。体重がどんどん落ちて、しわだらけになった。味覚が戻ったら、体重が戻ってきた。(60歳代前半・女性)
脱毛
抗がん剤治療を受けた方のなかで、複数の方が脱毛を体験していました。男性は脱毛してもそのままにしていた方が多いようでしたが、女性はかつらを使ったという方が複数いらっしゃいました。治療の始まる前にかつらを準備して2年以上使っているという方や、かつらを作ったものの1回しかかぶらなかったため、自分にとっては必要なかったという方がいました。
・抗がん剤の副作用で髪の毛が薄くなり、頭皮のただれもあった。副作用が出る前からかつらを準備していた。(50歳代前半・女性)
自分に合ったかつらがいいと思って高額だったが型をとって作った。結局1回しかかぶらず、自分にとっては必要なかった。(60歳代後半・女性)
◆ 手術の傷跡
体に残った手術の傷跡を気にするかどうかには、個人差があるようでした。傷跡を気にせずに銭湯や温泉に入っている方もいれば、公共のお風呂を避けるという方もいました。時間が経つにつれて、傷跡の色や形がおちついてきて、気にならなくなってくることが多いようです。
・温泉や銭湯が好きで、大きな傷跡も気にせずに通った。周りの人もあっけらかんと接してくれた。(60歳代前半・女性)
・傷があると温泉などに行きにくい感覚があった。(50歳代前半・男性)
また、配偶者との関係で、傷跡がどのくらい気になるかについてもうかがいました。今回のインタビューでは、傷跡の影響が大きいというお話は聞かれませんでした。このことは、大腸がんの罹患(りかん)年齢が比較的高いことが関係しているのかもしれません。
・夫に傷を見られる時は、この年だから全然考えなかった。婦人科の病気ではないので、夫婦関係を持つときも気にならなかった。(60歳代前半・女性)
爪や皮膚の変化・むくみ
抗がん剤治療の副作用で、爪の色が変わったり、爪の表面が波打ったという方が複数いらっしゃいました。爪の変色は、治療が終わった後も1年ほど残ることがあるようです。テープで巻いて爪が割れるのを予防したり、爪や皮膚が日光に当たって黒ずむのを防ぐため、手袋や長袖を着て対策しているというお話が聞かれました。顔に発疹やむくみが強く出て、以前の写真と比べて顔の印象が大きく変わってしまったという方もいました。
・副作用で爪が細かい波を打って生えてきた。爪が弱くなり、洋服のボタンをかける時にも爪が割れてしまい、一つずつ爪にテープを巻いていた。(60歳代後半・女性)
・日光に当たると爪が黒くなるので、手袋をして外出している。皮膚に日光が当たらないように、長袖を着たり、日焼け止めを塗ったりしている。(60歳代後半・女性)
生活 / 病気と仕事との関わり 記事数: 9
ここでは、大腸がんと診断を受けてから、どのように仕事と関わってきたかについて、体験者のお話をご紹介します。
仕事と治療
がんと診断されたときに仕事を持っている人は、治療と仕事との兼ね合いについて選択をせまられます。インタビューに協力してくださった方の中には、病気をきっかけにして、仕事の時間や仕事の量を減らしたという方がいました。減らした理由として、無理はできないという体の事情に加え、仕事優先の生活を見直したという気持ちの変化を語る方もいました。
・今まで仕事優先の生活だったが、病気をしたことをきっかけに意識して休みをとり、仕事量を減らしている。(60歳代後半・女性)
復帰後、フルタイム勤務となりましたが、残業がなかったり仕事の内容が変わるなど、負担が減るように会社が配慮してくれたという方もいました。
・抗がん剤治療のため、休みをとった。会社に復帰後、最初からフルタイムだったが、会社も気を遣ってくれた。(50歳代前半・女性)
一方で、職場で責任ある立場だったことと、経済的な理由で、退院後まもないうちから以前とほとんど変わらない仕事をこなしているという方もいました。
・退院2週間後に会社に復帰した。点滴のポンプを下げたまま、病気になる前と同じ仕事量をこなしている。(50歳代後半・男性)
今後の仕事について、病状の変化を見て考えていかなければならないという思いが語られていました。家族のために働かなければならないが、検査結果によって本格的に働けるかどうかを考えたいという方や、副作用が強まったため、今後仕事をどの程度引き受けるか迷いや不安を感じているという方がいました。
・体調や今後の入院の可能性を考えて、仕事をどの程度ひきうけるか見極めなければならない。引け時は自分で判断するしかないかなと思う。(50歳代前半・女性)
今後の働き方について、体のことを優先して考えるしかない、という思いも語られていました。
・再就職は厳しい。しかし、仕事よりも体を中心に考えるしかないと半分割り切っている。(50歳代前半・女性)
仕事に対する思い
仕事を続けていることによって、不安を忘れて過ごせる、気持ちの張りになる、元気の素になる、副作用のつらさが紛れる、昼間動いている分夜眠ることができる、など、気持ちや体の面でメリットがあると感じている方が複数いらっしゃいました。
・仕事復帰後は、副作用に関して、仕事で紛れている部分がある。(50歳代前半・女性)
・仕事の忙しさにかまけて落ち込まないでいられた。昼間動いている分、夜眠ることができた。(60歳代前半・女性)
仕事を続けていることのメリットを語る方がいる一方で、インタビューに協力してくださった方の中には、不規則な生活や人間関係の負担など、仕事に関連するストレスが、自分ががんになった原因の一つではないかと考えている方がいました。
・不規則な生活をしていたツケや環境の変化が、病気につながったのではないかと思う。(60歳代前半・男性)
・仕事の時間的、体力的な負担や、人間関係のきつさが負担になって、病気の原因になったのではないかと思う。(50歳代前半・女性)
インタビューに協力してくださった方は、がんになった原因について、仕事のストレスの他にもさまざまな原因を考えていらっしゃいました。詳しくは<なぜがんに?>をご覧ください。
生活 / お金に関する問題 記事数: 7
インタビューでは、がんの治療に必要な経済的負担について、体験が語られました。ここでは、そうしたお金に関する体験をご紹介します。
治療費の負担
治療費に関しては、多くの方が健康保険適用の診療を受けていました。しかし、健康保険で3割負担になっていても、手術、抗がん剤、検査の費用の負担が大きいことが語られていました。治療費のほか、交通費など治療に伴う出費が負担となっていました。抗がん剤の補助的な薬や、温泉など相補代替療法の費用が負担だということを語る方もいました。
・抗がん剤そのものより、補助的な薬が高かった。別の医師に漢方薬を処方してもらっていて、足すと月に8万円は超えてしまう。(60歳代後半・女性)
・15万を超えないときは高額医療保険制度が効かず、がん保険も活用したが、もう足りなくなった。(50歳代後半・男性)
インタビューでは、経済的に大変でも治療をやめるわけにはいかなかったという方や、仕事を辞めて治療に専念することを考えたが、収入が断たれてしまうので仕事を辞めることはできない、という方もいらっしゃいました。
がんの治療のときに、子どもの教育費が必要な時期が重なったという方もいました。人生のどの時期にがんと診断されたかによって、経済的な負担が重くなることもあるようです。また、青森県の県民所得の低さにふれ、経済的な事情から治療を受けられないという人に対する思いを語っておられた方もいました。
・がん患者は60代以上の人が多く、年金収入だけだと治療が難しいのではないか。(60歳代後半・男性)
高額医療保険制度
毎月の医療費が高額になるため、高額医療保険制度を活用している方がいました。この制度について知った経緯は、病院で看護師から聞いたという方や、パンフレットをもらった方、市役所から対象になっているという通知が来たという方がいました。
自己負担の軽減につながった方がいる一方で、一ヶ月の医療費が基準額を満たさず、高額医療保険制度の対象とならないため、自己負担が大きくなっていた方もいました。
・抗がん剤が月25〜30万かかったが、8万8千円が3ヶ月続くと高額医療保険制度のハードルが低くなり、自分の負担が軽減されている。(50歳代前半・女性)
返金されるまでの間に医療費を立て替えなければいけない(注1)ことが負担だという方もいました。
(注1)必要な手続きを行うことによって、最初から立て替えせずに済む場合もある。
・月に約8万を超えた分は返金があるので、ないよりはいいのだが、抗がん剤治療を受けるたびに立て替えて支払うことになる。(60歳代後半・女性)
がん保険
就職や結婚などをきっかけに、または職場で保険業者に勧誘されるなどして、民間のがん保険にたまたま加入していたという方が複数いました。がん保険に加入していた方は、加入していてよかった、入っていなければ経済的にも破綻している、など、がん保険への加入の重要性を強調していました。
・40代の頃、職場に保険業者が勧誘に来た。働き盛りで自分ががんになることなんて考えなかったが、思いがけず加入しておいてよかった。(60歳代前半・男性)
・がん保険に加入していてよかった。入ろうかなと言っていた矢先にがんになった人を多く見た。(60歳代後半・女性)
生活 / 家族・親戚との関わり 記事数: 15
ここでは、がんと診断された後、家族・親戚とどのように関わってきたか、インタビューで語られた体験をご紹介したいと思います。
家族・親戚への思い
がんという診断を聞いて、家族も大きなショックを受けていました。ショックを受ける家族の様子を見て、ご本人も心を痛めていました。自分よりもショックを受けている家族を見て、家族に病名を伝えない方が負担をかけずにすむと感じたという方がいらっしゃいました。(診断を聞いた時の家族の反応については、<がんと診断された時>に詳しくご紹介していますので、そちらもあわせてご覧ください。)
・自分よりも家族がかなりショックを受けていたので、自分が分かっていれば、周りの人にはあまり細かく教えなくてもいいなとも思う。(60歳代後半・女性)
また、治療中、家族がどれほど心配しているかを想像し、心配をかけないように自分の言動に気をつけるようになったと、複数の方が語っていらっしゃいました。家族が好きなことを楽しめなくなった様子から、家族の気持ちを想像したという方や、家族に心配をかけないようにあまり苦しそうな表情をしないようにふるまっているという方がいました。
・海も山も好きな夫が、友達に誘われても全然出かけなくなってしまった。自分だけ騒いでいられないなと思った。(60歳代前半・女性)
・自宅で点滴をしているときも、妻に心配をかけないようにふるまっている。(50歳代後半・男性)
複数の方が、がんと診断されたことで、自分の命を意識し、自分がいなくなった後の家族のことを考えていました。自分がいなくなった後の財産分与のことを考えたという方や、大腸がんの治療後に肝転移が発見された際、家族への思いを手紙に書いたという方がいました。これが最後かもしれないとの思いから、体調の悪い中、親戚の結婚式に出たという方もいました。
・これが最後かもしれないと思って姪の結婚式に頑張って出た。みんなが優しくしてくれたことが、本当はありがたいのに、嫌だと思う自分もいた。(60歳代前半・女性)
また、子どもさんから、遺伝を考え、治療法を書いて残しておいてと言われたという方もいました。
・子どもから、同じDNAを持っているんだから、治療方法を記録して残してほしいと言われた。(60歳代前半・女性)
家族・親戚との関係
がんという困難を体験する中で、家族や親戚との関係について、改めて認識することもあるようです。配偶者がいる方にとって、夫や妻の存在が大きな支えになっていたということが、インタビューからうかがえました。一方で、女性の体験者の中には、一番の相談相手として子どもの存在を挙げる方もいました。
・夫とは病気のことはあまり話さないようにしている。一番に相談するのは娘。(60歳代後半・女性)
きょうだいも大きな支えになっていました。一人暮らしの方は、地元にいるきょうだいが実際的なサポートを担ってくれたそうです。また、親戚にどの程度まで話すかということは、それぞれの事情によって異なるようです。
・母方の親戚、兄弟には話しているが、内緒にしている親戚もいる。入院中は、地元にいる妹が身の回りの世話をしてくれていた。(50歳代前半・女性)
インタビューでは、夫婦生活についてもうかがいました。手術の傷跡を見られることを気にするかどうかという質問に対して、60代の女性の方は、年齢的に全然考えていないと答えておられました。
・年齢的に、夫婦関係を持つことや傷を見られることは全然考えなかった。(60歳代前半・女性)
治療や生活の中での関わり
受診、治療、退院後の生活の中での、家族・親戚の実際の関わりについて、インタビューで語られた体験をご紹介します。
最初の受診のとき、娘や息子が受診を勧めてくれたり、病院に一緒に行ってくれたという体験が複数の方から語られていました。また、治療の選択に関して、家族が積極的に関わってくれたり自分の選択を支持してくれたことが語られていました。医師から治療の説明を受ける際に家族が同席し、医師に「先生の家族ならどうしますか」と積極的に質問をしてくれたという方がいらっしゃいました。また、抗がん剤治療を受けることについて、子どもが背中を押してくれたという方がいました。
・娘は、抗がん剤治療について、お母さんがやってみたいなら、と背中を押してくれた。(60歳代後半・女性)
手術のときに、配偶者やきょうだいが付き添ってくれたり、遠方に住む子どもが駆けつけてくれたりしたことで、心強くいられたということが、複数の方から語られていました。また、入院中、家族がお見舞いに来て顔を見せてくれたことは、多くの人にとって励みになっていたようです。
・3番目の娘が会社が終われば必ず毎日寄ってくれた。妻は毎日来てくれて一番世話になった。(60歳代後半・男性)
入院したことで、疎遠だった家族と交流を深める機会になったという方もいました。
お見舞いは、複数の方が励みになったと語る一方、体調が優れない時のお見舞いは負担になることを語った方もいました。負担ではあるが断ることも難しい、という思いも語られていました。
・体調が落ち着くまでは、見舞いは遠慮してほしいが「来るな」とも言えない。(60歳代後半・男性)
退院後の生活では、特に女性にとって、家事が問題になります。ある方は、慣れない夫が家事をやってくれて助かっていることを話されていました。一方で、夫に家事をまかせられなくて退院を急いだという女性もいました。
・家事を何もやらなかった夫が、いざとなればご飯や洗濯をやってくれるようになった。(60歳代後半・女性)
・家事は夫にまかせられず、退院を早めて帰ってきた。(60歳代前半・女性)
同居していない家族・親戚からの気遣いやサポートについても語られていました。子どもが孫の顔を見せに来てくれたという方は、「孫を見ると一番体にいい」と語っておられました。ほかにも、家族・親戚が、食事に関する本を送ってくれた、閉じこもらないように習い事の先生を紹介してくれた、という体験が語られていました。
・娘の姑が、本屋で食事療法の本を見つけたといって送ってくれた。(60歳代後半・女性)
・家に閉じこもらないように、妹が大正琴や絵手紙の先生を紹介してくれてありがたかった。(60歳代前半・女性)
生活 / 友人・知人との関わり 記事数: 5
ここでは、友人、職場の人、近所の人との関わりについての体験をご紹介します。
友人・知人の反応
友人・知人にどのように伝えたか、そして、友人・知人ががんを知ったときの反応について、ご自身が意図せず伝わった場合も含めて、インタビューに参加してくださった方のお話をご紹介します。
友人・知人に伝えるかどうかについては、相手とのこれまでの関係や、ご本人の性格などによって異なっていました。インタビューに協力してくださった方の中には、周囲に病気のことを話すことにあまり抵抗がなかったという方がいました。周囲の人に話すことによって、他の人の体験を聞きたいという気持ちがあったそうです。
・病気を隠さずに大っぴらに言った。退院後ポストに宗教の案内などがいっぱい入っていてびっくりした。(60歳代前半・女性)
知人や仕事関係の人に自分からは伝えていませんでしたが、患者会の取材でテレビに顔が映ったために知られたという方もいました。
・テレビ番組で患者会の紹介があり、顔が映って知人にバレた。(60歳代後半・女性)
仕事を持っている人にとって、職場の人にどの程度伝えるかは悩ましい問題であると思われます。治療のために休みをとる場合には、上司には伝える必要があるでしょうが、同僚や取引先など、どのくらいまで伝えるか、ということに関しては、それぞれ事情があるようです。ある方は、ご自分では言ってもいいと思っていたそうですが、上司が内緒にしてくれていたことが分かり、気を遣って周囲には伝えなかったと語っておられました。
・会社の上司や一部の人には伝えてある。同僚には自分としては言ってもいいと思ったが、上司の気遣いを知り、伝えていない。(50歳代前半・女性)
近所づきあいに関して、複数の方のお話から、病気のことを近所にはできるだけ知られたくないと考えていることがうかがえました。手術後、トイレの回数が増え、水を流す音が多いことで近所の人に気づかれるのではないかという不安を感じている方もいました。
治療中や退院後の関わり
治療中やその後の生活の中での、友人・知人との関わりについてご紹介します。
入院中のお見舞いは励みになったということを、複数の方が語っていました。一方で、体がつらい時やねむい時はお見舞いは避けてほしいというお話も聞かれました。
また、一人暮らしの方からは、家族や親戚でなく友人が、退院後の食事の世話など日常生活をサポートしてくれたというお話が語られました。
信頼できる友人に、治療の苦しみや不安を話せることは、多くの人にとって助けになることだと思われます。高校時代からの親友に毎週会える環境にいるため、転移の不安や苦しさなどを気兼ねなく話せているという方がいました。
・高校2年のときからの親友と、転移の心配や苦しさについて、いろんな話ができる。(50歳代後半・男性)
がんを経験された方にとって、同じ病気の人との関わりは特別なものとして捉えられているようです。同じ病気の人と、これまでの友人との関わりを比較して、ギャップを感じることを語っておられた方がいました。同じ病気の人との関わりについては、<同じ病気の人との関わり>もあわせてご覧ください。
・患者友達は分かってくれると思う。今までの友達は心配はしてくれるが、ギャップを感じる時がある。(50歳代前半・女性)
趣味の仲間が支えになっていることを語る方も複数いました。直接病気のことを話さなくても、さりげなく気を遣ってくれたことがありがたかった、一緒に出かけることが楽しい、というお話が聞かれました。また、病気のことと関係のない雑談をして笑うことで気持ちが楽になるという方もいました。
生活 / 同じ病気の人との関わり 記事数: 10
がんを体験された方にとって、同じ病気の人との関わりは特別なものとして捉えられているようです。ここでは、同じ病院で出会った人との関わりや、患者会での体験についてご紹介します。
入院・通院中の関わり
入院中、がん患者同士で、治療や副作用のつらさを話せたことが気持ちの支えとなったという体験が、複数の方から語られていました。
・同じ病室の人と、抗がん剤の副作用の脱毛の話で盛り上がった。(60歳代後半・女性)
・何年経っても疲れると腫れるとか無理できないとか、症状のことを共有できる。自分だけじゃないと思うと落ち着く。(60歳代後半・女性)
がん患者以外の友人関係と比べて、違いを感じるということを語ってくださった方がいました。病気の症状のことなどを話すとき、他の友人とギャップを感じ、「がん友はわかってくれる」という思いが強く意識されるようでした。
・がん患者の友達と、今までつき合ってきた友達と違う気がする。友達のとらえかたや関わり方が変わってきたように感じる。(50歳代前半・女性)
入院仲間との関わりが退院後にも続き、その関係が気持ちの支えになっていることが語られていました。
・入院仲間のネットワークは強く、仲間との関係は退院後も続いている。(50歳代前半・女性)
インタビューに協力してくださった方の中には、インターネットで同じ病気の人のブログを探し、頻繁に読んでいたという方もいました。書かれている気持ちに共感し、仲間意識を感じることができたということをお話しされていました。
同じ病気の仲間や知人が亡くなったことが、重くひびいたという体験も語られていました。
・先に亡くなった仲間のことを思えば、生かさせてもらっているという感じがある。(50歳代前半・女性)
患者会の存在
「患者会」は、がん体験者が集まって体験を語り合ったり、情報を交換したり、共に活動を行ったりする相互支援のグループです。今回、インタビューに協力してくださる方を募るにあたって、県からの公募に加え、患者会や病院の医師からご紹介いただくという方法をとりました。そのため、インタビューに協力してくださった方の中には、患者会に参加している方が複数いらっしゃいました。患者会についての体験談を、ここでご紹介したいと思います。
患者会に関する情報は、退院してから、もしくは病状がある程度安定してから探し始めたという人が多いようでした。病院に貼ってあったポスターで知った方や、がん体験者等が参加できる手づくり講習会についての新聞記事を見て知ったという方がいました。
同じ病気の人と、気持ちを共有できたり、経験者ならではの情報を得ることができることが、患者会に参加するよさの一つとして語られていました。
・同じ病気の人は、普通の友達と比べてわかり方が違う。何十年もつき合った友達と同じくらいに密度が濃く、何か通じるものがある。(60歳代前半・女性)
・いろんな治療法があること、こういうときはこうすればいいということが分かる。(60歳代前半・女性)
また、普段は入れない公共のお風呂に、患者会の仲間と一緒になら入れることをお話しくださった方もいました。
・患者会の旅行では、いつもは入らない人でも、お風呂に一緒に入ることができる。(60歳代前半・女性)
インタビューでは、患者会に参加している方が、現在の活動内容やメンバー構成についての思いや考えも語ってくださいました。入ってみると当初の期待とずれがあったという体験や、現在女性の参加者が多いので男性が増えるといい、という思いが語られていました。
・大腸がんの患者がいなかった。高齢の人や治療後の経過時間が長く落ち着いている人が多くて、病院仲間とはちょっとグレードが違う。(50歳代前半・女性)
・地域を広げること、男性の参加者が増えることを望んでいる。(60歳代前半・男性)
病気との向き合い方 / 情報の集め方 記事数: 10
近年では、テレビや雑誌といったメディアで「がん」に関する特集が組まれたり、表紙に「がん」と書かれた本が出版されたりして、いたるところで、がんに関する情報が発信されています。
インタビューでは、医療者に与えられる情報をただ受動的に受け取るだけでなく、さまざまな方法を使って積極的に情報を集めたというお話もありました。情報を収集するための主なルートには、医療者からの説明、本やテレビ、雑誌、インターネット、家族や知人などが挙げられました。
このトピックでは、大腸がんを経験された方たちが、どのように病気や治療法、病後の生活に関する情報を集めたのかを、まとめました。また、病気がわかった直後には、情報があまりなくて困ったというお話が聞かれたので、この点についても併せてご紹介します。
医師などから医療的な説明を聞く
医師から病気や治療法について説明を受けるのは当然ですが、人によって、十分に説明を受けている人もいれば、診察のときに質問をしそびれてしまうという人もいました。また、担当医以外の医療者や医療関係の仕事をしている家族を通して専門的な情報を得ている方もいらっしゃいました。
ここでは、医師や医療者から詳しい情報を得ることができていたエピソードだけでなく、医師に質問しようと思ってはいたけれど、いざとなると質問しそびれてしまったという経験も併せてご紹介します。
・心配なことは医師に質問している。医師からも、きちんと知りたい患者だと思われていて、検査のデータなどを渡してもらえる。(60歳代後半・女性)
・インターネットの掲示板を利用して、具体的な情報を調べた。病院で医師に聞きそびれた時や、次の受診日まで日があく場合なども、ネットが役に立った。(50歳代後半・男性)
・腫瘍マーカーの値が下がるということの意味を知りたくて、看護師をしている娘などを通して情報を得る。(60歳代後半・女性)
本やテレビから情報を得る
インタビューに協力してくださった方たちは、がんに関する本やテレビ番組に関心をもっておられました。しかし、本やテレビからは、がんに関する一般的な情報を手軽に得ることができますが、大腸がんに特化した詳細な情報にはあまり触れていなくてがっかりすることもあるようでした。病気に関する医学的な情報が書かれた本よりも、生き方や心の持ち方といったことについて書かれた本が、自分にとっては役に立ったという人もいました。
・病気に関する本を読んでも、大腸がんに特化した情報が少なかった。(60歳代後半・女性)
・タオに関する本を読んで、仕事中心から自分の体中心に考えを切り替えることができた。(50歳代前半・女性)
インターネットを活用して病気について調べる
インターネット上では、がんセンターのような専門的な機関のサイトが公開している医学的な情報が得られる一方、ブログのように患者が個人的な体験を綴ったものも公開されています。インターネット上の情報は、本やテレビの情報に比べると、部位別や個人的な体験など、細かい情報が得られやすいようです。特に、珍しい場所にがんができた方などは、インターネットが重要な情報源となっていました。
・同じ治療を受けている人のブログを読んで、治療費を比較する。(60歳代後半・女性)
家族・友人・同僚などから話をきく
個人的な情報ルートからは、既にがんを経験した人や家族の話として、食事のメニューや副作用の症状など、具体的な細かい情報が得られていました。病院の評判など、あまり公には伝わってこないような貴重な情報が得られることもあるようでした。
・睾丸がんになった甥の抗がん剤の経験を事前に聞いていた。(60歳代後半・女性)
・勤め先に、がんの経験者が多くいて、病院に関する情報などを教えてもらった。(50歳代前半・男性)
病気がわかった直後の情報不足
ここまで見てきたような様々なルートを駆使して情報を得てきた方でも、大腸がんがわかった直後の頃は、まだ何も知らない状態で急いで治療を受けなければならないというお話がありました。退院後に自分で調べて、他にも治療法があったと知ることもあったようです。できれば、病気になってすぐに、がんに関する基本的なことを教えてほしかったという思いも聞かれました。
・手術が終わってから自分で本を読んで、いろいろなことを知った。薬を飲むという方法も、本を読んで初めて知った。(60歳代前半・女性)
・がんのことや抗がん剤の副作用のことなど、基本的なことを最初から教えてほしかった。退院後に自分で本などで調べて、だいたいわかるようになった。(50歳代前半・男性)
病気との向き合い方 / なぜがんに? 記事数: 9
がんになった人なら誰しも、多かれ少なかれ、「なぜ?」という疑問が頭に浮かびます。ここでは、何が原因だったのか、なぜ私なのか、といった疑問を抱いた経験について、今回インタビューに応じてくださった方々のお話をまとめました。
なぜ自分ががんに?
なぜがんができるのか、どのように発生していくのかということは、まだよくわかっていません。しかし、がんの原因を知りたいという思いは、多くの方に共通するもののようです。
今回のインタビューでも、複数の方が、自分が大腸がんになった原因について、自分なりの考えを話してくださいました。また、思い当たる原因がなく、「なぜ自分が?」という納得のいかなさを感じている人もいらっしゃいました。
・原因がわかれば、がんも治せると思うけど、誰も原因を教えてくれなかった。(60歳代後半・男性)
・思い当たる原因がまったくない。なぜなんだろうという思いがある。(60歳代後半・男性)
不健康な生活が原因
大腸がんになった原因として様々なことを考える中で、生活習慣が原因と考えている方が複数いらっしゃいました。たとえば、食事の量や内容、そして肥満も、自分なりに考えられる原因として挙げられていました。また、運動不足や不規則な生活が病気につながったという考え方も語られました。
・太っていることが原因なのではないかと思った。(60歳代前半・女性)
・不規則な生活とストレスが原因だったと思う。(60歳代前半・男性)
一方で、生活習慣に気をつけていたのに、もっと不健康な生活をしている人もいるのに、がんになってしまい、「まさか自分ががんになるとは」というショックを受けた方もおられました。続いては、生活習慣に気をつけていたにも関わらず病気になり、ストレスが原因だったと考えておられる方のお話をご紹介します。
ストレスが原因
ここまでにご紹介した方の場合、生活習慣とストレスの両方が原因になったと考えていらっしゃいましたが、生活習慣に気をつけていた場合などには、ストレスが一番の原因と考えられているようでした。仕事のストレスについては、特に、自分にあまり向いていない仕事で頑張りすぎてしまったことが、がんを招いたのではないかという思いがあるようでした。また、人間関係で悩んだこと、経済的な問題とその他の問題が重なってしまったことなど、病気になる少し前の生活の中で、強いストレスを経験していたことが、病気につながったというふうに考えていらっしゃいました。
・原因は、食生活よりも、むしろストレスだと思う。(60歳代前半・女性)
・食事には気をつけていたので、ストレスが原因だったのかなと思う。(50歳代前半・女性)
・がんになる2~3年前から仕事のストレスがあり、がんとわかったときは、やっぱりストレスだなと思った。(60歳代後半・男性)
遺伝が原因
家族や親戚にがんになった人がいる場合、遺伝的にがんになる体質だったという説明がされていました。家族や親戚にがんになった方が多い場合、遺伝が原因と考えることで、納得したり諦めたりすることがあるようです。血縁者が、大腸や直腸のがんになっていた場合だけでなく、他の部位のがんになっていた場合も、やはり遺伝的にがんになりやすい体質と考えられていました。
・兄弟のうち3人ががんになっているので、家族性もあるのかなと思う。(60歳代後半・女性)
・がん家系で、がんになりやすい体質と思って、あきらめもつく。(60歳代後半・女性)
病気との向き合い方 / がんと向き合う姿勢 記事数: 13
最近では、がんは糖尿病などと同様、慢性病のようなものだといわれることもあります。治療ができるケースが多くなった反面、がんと長期間の付き合いを余儀なくされる人も増えてきました。今回、インタビューに応じてくださった方々も、再発や転移の有無に関わらず、治療が終わってからも何らかの形で、がんを意識しながら日々の生活を送っておられました。インタビューの中では、がんという病気と向き合いながら、どのような姿勢で日々を送ろうとしているか、どのように気持ちを保っていくか、それぞれの工夫をお聞きすることができました。このトピックでは、がんを経験された後の、<がんと向き合う姿勢>について語られた部分に着目して、経験談をご紹介いたします。
がんと付き合う
がんを一度でも経験された方は、たとえ再発・転移していない方であっても、がんにまつわる思いが頭を離れず、どこかで常にがんという病気を意識してしまうようです。インタビューに応じた方々は、この病気を、なんとか付き合っていくしかないものと捉えて、それぞれに気持ちの持ち方を工夫されていました。たとえば、ある方は、がんを征圧しようと考えるより、「がんとどういうふうに付き合っていくか。」を考えるのだと話されました。
がんと付き合うにあたり、がんとはどのような病気なのか、といったことも語られました。たとえば、がんとは、「だれでもかかる」病気で、「仕方ない」ものと考えて、がんと付き合うというお話がありました。他にも、「運命かなという受け取り方」や「共存していかなければならない病気」という捉え方など、それぞれの病気の受け止め方が語られました。
さらに、がんと付き合う上での工夫についても、お話をお聞きできました。たとえば、「真剣に悩まない」ようする、「何でもいいほうに考え」る、できるだけ忘れるようにする、といったように、それぞれに工夫して様々なことを心がけておられました。
・先の心配はあるけれど、区切りを迎えたら、がんとは「さよなら」だと思うようにしている。(60歳代前半・男性)
・がん細胞は自分と共存していると考えて、ともに生きる。(60歳代後半・女性)
得られたものに注目する
病気を経験する過程では、さまざまな苦しみにであい、いろいろなものを失うこともあります。しかし、インタビューの中では、病気の経験を経て手に入れたものにも注目したお話をうかがうことができました。病気の経験自体は決してよいものとは言えませんが、そこから何かしら得るものがあったという考え方をもつことはできるようです。たとえば、「病気が自分を進化させるね。間違いないと思う。」というふうに、病気の経験を通して自分が成長することができたと前向きに捉えて語ってくださる方もおられました。
・病気を経験して、周囲も自分も互いに優しくなった。動じなくなったし、時間を大切にするようにもなった。(50歳代後半・男性)
・「がん友」という、わかってくれる仲間に巡り会うことができた。「がん友」と出会うために病気になったのかなと思ったりもする。(50歳代前半・女性)
・これまでは時間に追われていたが、病気をして自分を見つめる時間ができた。(60歳代前半・男性)
幸運に注目する
意外に感じるかもしれませんが、インタビューでは、「運がよかった」とか「ラッキーだった」という言葉を使う方が複数いました。病気になったこと自体は不運と捉えていても、発見が早くて運がよかった、辛い抗がん剤治療がなくてラッキーだった、がんになるのが今の年齢でよかったなど、不運の中に見つけた幸運に注目する捉え方をされる方がおられました。また、誰でもいずれは死ぬのであれば、がんで死ぬのは比較的幸運な死に方だという考え方も、2人の方から語られました。
すべての方が、がんの経験の中から幸運だったことに注目するお話をしてくださったわけではありませんでした。むしろ、「運がよかった」という捉え方をする方は、少数派でした。そして、病気に関して「運がよかった」と語る人は、病気のこと以外にも様々な出来事について、幸運に注目して語る傾向がみられました。一部の人にとっては、辛い病気の経験の中に幸運を見つけようとすることが、病気と向き合う上で役に立つ場合があるということかもしれません。
・術後の経過もよかったし、抗がん剤の副作用も軽くて、幸いだった。(60歳代後半・女性)
・担当の医師に恵まれ、すぐに手術を受けられたし、その後の対応もよかった。(60歳代後半・男性)
・がんになるのが、5年、10年後ではなく、今でちょうどいい時期だったと思う。(60歳代後半・女性)
・がんで死ぬのも決して悪くはないし、長生きすればよいわけでもないと思っている。(60歳代後半・女性)
・副作用や痛みに苦しむことも少なかったし、突然の事故と違って考える時間が持てたので、ラッキーなのかなと思う。(50歳代前半・女性)
主体的に日々を生きる
インタビューの中では、病気をして、自分のしたいことをして生きていこうと思うようになったというお話が複数の方から聞かれました。それまでは、仕事や対人関係の中で、心身ともに我慢したり無理をしたりすることが多かったけれど、病気をしてからは、無理なことは断ろうと考えるようになるようです。また、残された時間の短さを感じている方の場合、これが最後かもしれないという思いから、周囲に遠慮するよりも自分のしたいことを優先したというお話をお聞きしました。
・できないことはできないと、はっきり線引きをして、無理をしないようになった。(50歳代前半・男性)
・新しいことにチャレンジしたり、仕事を引き受けたりする一方で、あまりに大変な場合には断ることも考える。(50歳代前半・女性)
・見納めかもしれないと思い、周りの反応を気にせず、多少は無理をしてでも姪の結婚式に出席した。(60歳代前半・女性)
病気との向き合い方 / 自分の命を意識する―ホスピス・緩和ケア 記事数: 12
かつては、がんは死に至る病気と考えられていましたが、医学・医療技術の進歩により、現在では、治療が可能なケースが増えています。とはいえ、残念ながら、すべてのがんが治るわけではなく、がんという病気によって亡くなる方がまだまだたくさんいらっしゃるのも事実です。インタビューに応えてくださった方の多くは、病気の経験を通して、命の終わりを意識させられたとおっしゃっていました。そして、これからの時間の過ごし方を考えたり、今後に備えて準備をしたりしていました。
このトピックでは、インタビューに応えてくださった方たちが、病気と向き合いながら自分の命の終わりを意識する中で、どのようなことを考え、どのような準備を実際にしているかといった語りをとりあげました。また、一部の人から聞かれたホスピスに関するお話も、このトピックの最後に紹介いたします。
病気の進行にまつわる不安
病気が進んでくると、様々な不安を抱くようになります。病状がどのように変わっていくのか、はっきりしたことがわからないという見通しのなさもまた、不安の元になるようです。再発・転移もなく現状は落ち着いている人であっても、今後はどうなるかわからない、あとどのくらい生きられるかわからない、という思いをもたれていました。また、ちょっとした体調の変化から、病気が進行したのではないかと不安になるということもあるようです。
・自分と同じ虫垂がんの患者が亡くなっていくのをブログで見て、今は薬が効いているが、いつ効かなくなるのかと思うと怖い。(60歳代後半・女性)
・病気が進んで最後は脳に転移すると書かれた本を読んで、これからの病気の進行が心配になる。(60歳代後半・女性)
残りの時間の生き方を考える
インタビューに応えてくださった方たちは、これからの人生をどのように生きるか、何をしたいか、といったことを考えておられました。それは、今後の見通しがないと感じている方だけでなく、余命を意識して覚悟を固めているような方もやはり、残された時間をどのように生きるかという問題を意識されていました。そして、どのように生きたいかということは、どのように死んでいきたいかということも含めた希望として語られていました。
・今後の生き方について、家族や親類にも希望を伝えてある。(50歳代前半・男性)
・どう生き、どう死ぬか、死生観ということも考えるが、本音をいえば、ポックリいきたいと思っている。(60歳代後半・女性)
・病気になって、仕事より体中心の考え方に切り替えた。最後はホスピスで好きなビデオを観て、好きな本を読んで過ごせたらよいと思う。(50歳代前半・女性)
命の終わりを自覚する
病状が進んでしまった方は、病気が治癒する可能性が極めて低いことを知ることにより、命の終わりを意識せざるを得なくなります。また、病状がそれほど深刻でない方からも、がんになったからには、いつ亡くなってもよいように心構えをしておこうというお話をお聞きしました。
・告知を受けてから自分でも調べて、とても珍しく、治療法が確立されていない難しいがんであることを知った。(60歳代後半・女性)
・がんになったんだから、心に余裕をもって、いつ逝ってもいいようにしている。(60歳代前半・男性)
旅立ちの準備をする
自分の命の終わりを覚悟された方の中には、今後に向けて準備を進めている方もおられました。今回のインタビュー調査で、そうした具体的な準備について教えてくださった2人の方のお話をご紹介します。おひとりは、今後の病状によっては、ホスピスへの入院を考えていて、準備を始めようとされていました。また、別のおひとりは、ご自分の亡き後に向けて、身辺の整理を始められていました。
・まだ先のことだとは思うが、ホスピスのことなども準備を進めていた方が安心できる。(50歳代前半・女性)
・告知されたときに、身辺整理をしたが、財産のことなど、まだ済んでいないこともある。(60歳代後半・女性)
・遺していく夫や子どもたちのために、土地や家、ローンのことなどを片付けておかなければと思っている。(60歳代後半・女性)
ホスピスのことを考える
命の終わりを意識しはじめた方にとって、最期の時期をどこでどのように過ごすかということは大切な関心事となります。インタビューに答えてくださった方たちの中には、最期の時間をホスピスで過ごすことを考えている方もいらっしゃいました。医師から初めてホスピスという話を聞かされて、ショックを受けたという方がおられました。一方で、自ら積極的にホスピスのことを考える方もおられました。
・手術ができなくて延命治療を受けることになり、最終的にはホスピスと言われて、びっくりした。(60歳代後半・女性)
・ホスピスのことを考え始めていたら、たまたまテレビでホスピスが採りあげられていて、そういう巡り合わせなのかなと思った。(50歳代前半・女性)
生活 / 再発・転移の不安 記事数: 4
大腸がんを手術で切り取っても、少数のがん細胞が目にみえない形で体内に残っていることがあり、再発や転移の可能性があります。大腸がんを経験された方は、定期的に検査を受け、再発や転移のチェックをします。ここでは、再発・転移の不安について、インタビューで語られたお話をご紹介します。
定期検査の経験については<術後の定期検査>、再発・転移を経験した方たちのお話は<再発・転移の発見>、<再発・転移を告げられたときの思い>でご紹介していますので、そちらもあわせてご覧ください。
日常生活の中で感じる不安
インタビューでは、複数の方が、何らかの自覚症状がなくても、常にどこかで再発・転移の不安を感じていると語っておられました。考えないようにしていても、つい考えてしまうという方もいれば、本で転移について読んで、具体的な不安を感じている方もいました。
・考えないようにしているけれども、転移しているんじゃないかという考えが頭の中についつい出てきてしまう。(60歳代後半・男性)
・自分のがんがこれからどういう状態をたどっていくのかという心配はいつも頭の中にある。(60歳代前半・女性)
術後5年を経過したあと
手術後は、再発・転移の発見のための検査が一定のスケジュールで行われます。一般的には、術後5年間まで検査が行われます。大腸がんは5年以上たって再発する人は1%以下であるため、5年間、再発や転移を認めない場合、「そのがんが治った」と考えてよいとされています※1。
術後5年間の検査を終えたという方は、検査結果に安心した一方で、再発や転移の不安はずっと消えないのではないか、という思いを語っていました。不安があるため、自主的に検診を受けるようにしているそうです。そして、検診で乳がんの可能性を指摘されたとき、苦しい治療の過程が一瞬のうちに思い出され、頭が真っ白になったことをお話されていました。
・術後5年の検査結果が良かったことは嬉しかったが、頭の中の4分の1はもしかしてどこかにあるんじゃないかという不安がある。(60歳代前半・女性)
・普段は周囲の人に「もう覚悟している」と言っていたが、検診で乳がんの可能性を指摘され、「とうとう来たか」と頭が真っ白になった。(60歳代前半・女性)
参考文献
1.大腸癌研究会:大腸癌治療ガイドラインの解説(2009年度版)
生活 / 病気になってからの生活習慣や気晴らし 記事数: 10
インタビューに協力してくださった方は、大腸がんと診断されたことをきっかけに、これまでの生活を振り返り、食事や運動などの生活習慣に気をつけるようになっていました。また、退院後の日常生活で、気晴らしや気分転換として、趣味や外出などの余暇活動も大切なものだと考えられているようでした。
ここでは、大腸がんを経験された方たちの、生活習慣の工夫や余暇活動についてのお話をご紹介したいと思います。
食生活
大腸がんの術後は、腸の運動が十分に回復していないこともあり,食物繊維の多い食べ物や、消化しにくいものは避ける必要があります※1。手術後半年〜1年経てば、特に制限はなくなることが多いようです※1。
食事にどの程度気をつけているかは人によって差があるようでしたが、それには、術後の経過時間や、排泄のコントロールがどの程度保たれているか、また、再発・転移の状態などが関係しているようです。便がゆるくならないことを意識して食事に気をつけているという方もいました。このことに関しては、<ストーマ・排泄>をあわせてご覧ください。
食生活についての情報は、医師や看護師から聞いたという方もいれば、自分でインターネットや本を調べたという方もいました。食事の制限により、好きな物を食べられなくなることがストレスになる場合もあるようです。
・手術後、食物繊維の多い食べ物はあまり食べるなと言われている。好きなきのこや天ぷらが食べられない。(60歳代後半・男性)
肉や魚を控え、大豆食品や野菜を多く摂る、感染の可能性のある生ものやカビを避ける、ショウガや唐辛子などで体の冷え対策をしている、というお話が聞かれました。
・手術後、消化に悪いものは食べないようにし、今もなるべく食べないようにしている。妻と二人で本やインターネットで調べた。(50歳代後半・男性)
・娘が送ってくれた食事療法の情報を参考に、肉や魚(小魚は除く)を減らし、野菜を多く摂るように心がけている。(60歳代前半・女性)
・食事療法の本を読んで、四つ足のお肉を控え、鶏肉や卵、大豆食品をとるようにしている。生ものやカビなどからの感染にも気をつけている。(60歳代後半・女性)
その他の生活習慣(体重管理、運動、お酒など)
大腸がんと診断されたことをきっかけに、運動や体重管理を心がけたり、お酒やタバコをやめるなど、食事以外の生活習慣を気をつけているという方もいました。高血圧や心筋梗塞など、がん以外の病気も持っている方は、がんと併せて注意しなければならないと語っていました。また、体調管理のために、血圧などを自分で記録する習慣が身についたという方もいました。
・自分の健康について気にするようになった。検査結果をはじめ、体調や行動を記録して、受診のときに医師に見せている。(60歳代後半・男性)
大腸がんを経験して以降、健康診断に行くという習慣が身についたという方もいました。
・手術後は、がんに対する意識が高まり、毎年検診に行くように心がけている。(60歳代前半・女性)
術後5年経過後の生活習慣の変化
ここまで、食事や体重管理、運動などの生活習慣に、意識して取り組んでいるというお話をご紹介しました。一方で、手術から時間が経つと、生活習慣への意識が薄れてくることもあるようです。特に、術後の経過が順調だった場合、生活習慣への意識が薄れやすいようです。ウォーキングに熱心に取り組んでいたという方は、術後5年経過して「卒業」した途端に、ウォーキングをやめたことを語っていました。
・術後、5年目の検査まではせっせか歩いたが、検査結果が大丈夫だと分かったら、だんだん病気の怖さを忘れて運動しなくなった。(60歳代前半・女性)
気晴らしや気分転換
趣味や外出など、気晴らしや気分転換となる余暇活動についてのお話をご紹介します。
家にいるといろいろ考え過ぎてしまうから、できるだけ外に出るようにしているという方がいました。また、笑いががんにいいと聞き、落語を聴きに出かけるという方もいました。
・がんには笑いが一番いいと知り、落語を聞きにいく。(50歳代後半・男性)
他に、ペットの犬と過ごす時間が一番癒されるという方もいました。
複数の方が、がんになる前から続けていた趣味(ゴルフや山歩き、家庭菜園、陶芸、歌、編み物など)を楽しむようにしているということを語っていました。病気になった後に、新たな趣味や習い事を始めたという方もいました。趣味の活動の中で、話し相手ができたり仲間と一緒に過ごせたりすることも、よい気晴らしや気分転換になっているようです。
・趣味や習い事などの仲間と過ごすなど、家に閉じこもらないで過ごせたのがよかったと思う。(60歳代前半・女性)
病気によって体力が落ちたり、排便のコントロールの問題から、余暇活動が制限される場合もあるようです。温泉につかるのが楽しみだったという方は、排便がコントロールできるか不安があるため、温泉に行くことができなくなったことを語っていました。
余暇活動に関して、これからどんなことをしていきたいか、希望や期待についてもインタビューでおききしました。体力が回復したら趣味の活動範囲を広げていきたいという方や、排便のコントロールが改善したら旅行など遠出したいという思いを語る方がいました。好きな料理を活かしてお店を持ちたいという夢や、寺を管理したいという夢を語ってくださった方もいました。今後の夢や期待を持つことは、病気と向き合うためのエネルギーにつながっているようです。
・好きな料理をこれから続けていって、お店をやれたらいいなという夢がある。(50歳代後半・男性)
参考文献
1.大腸癌研究会:大腸癌治療ガイドラインの解説(2009年度版)
発見 / 発見までの道のり 記事数: 8
ここでは、何らかの自覚症状に気付いた後、受診するまでと、最終的に大腸がんと診断されるまでの経緯をご紹介します。
大腸がんは、一般の健康診断や人間ドック、大腸がん検診などで、便潜血反応が陽性(便の中に血液が混じっている)という結果が出たり、または、何らかの症状に気付いてから受診し、精密検査などを経て診断されることがほとんどです。今回のインタビューでは11名中9名の方が、がんの発見にいたる前に、何らかの症状を自覚されていました。
がんの進行度を表す言葉にステージ(病期)と呼ばれるものがあります。最も早期の0期から最も進んだ状態のⅣ期まで、進行の度合いに合わせて分類されていますが※1、診断された時点で、Ⅲ期またはⅣ期と伝えられていた方もいました。大腸がんのステージに関する説明は、『がんを学ぶ-大腸がん』に詳しく掲載されていますのでご覧下さい。
また、「病院に行くのが遅すぎた」「わかった段階で手遅れだった」「もっと早くわかっていれば」と受診するタイミングの遅れや早期に発見できなかったといった“発見の遅れ”を感じていることが、複数の語りからうかがわれました。インタビューでは、がんの発見にいたるまでの経緯の中で、発見の遅れを感じさせるようなさまざまな事情が語られており、ご本人の事情と医療側の事情の2つの側面が浮き彫りになりました。
本人の事情
ご本人の事情により発見が遅れてしまったと感じられるケースでは、医療機関を受診したり、精密検査を受けるまでに時間を要していたことが挙げられます。その理由として、健診を受けていなかったことや、症状を自覚していながらも直ぐには受診できなかった何らかの事情が語られていました。
兆候に気付いていたにもかかわらず、受診のタイミングを逃していた方がいました。自分が日常的に経験していた症状が、がんの兆候と結び付かなかったことや、数年間に渡って異常な数値を示していた定期健診の結果を生かすことができなかったという事情が、受診の遅れを招いていました。
・痛みもなく、銭湯で倒れたのを、ただの貧血かなと思って、1年間ほったらかしていた。(60歳代前半・女性)
・数年間、定期健診で指摘されていた便潜血反応がプラスという表示は気になっていたが、大したことはないと思って、精密検査は受けていなかった。(50歳代後半・男性)
仕事を優先するがために受診が遅れ、その結果が発見の遅れにつながってしまった方もいました。仕事が忙しくて、健診を受ける時間を作ることができなかったり、たとえ症状があっても、そして、その症状が少しずつ進んでいるだろうと感じていても、仕事のけじめがつくまで受診せずに働き続けていた方もいました。
・血便が出て、トイレに行く回数が増え、がんかもしれないと思いながらも仕事を優先していた。(60歳代前半・男性)
・約半年前から異常に気づき、更に痛みが出現しても、仕事のけじめがつくまで働き続けているうちに、腹膜炎を起こす寸前までいってしまった。(50歳代前半・男性)
医療側の事情
がんという診断にたどりつくまでに時間がかかってしまい、発見の遅れを感じているケースは、何もご本人の事情だけに限ったことではないことが、今回のインタビューからうかがわれました。毎年、検診を受けていたにもかかわらず、がんができた場所が検診の範囲外であったために、なかなか見つからなかったり、自覚症状が現れてから医療機関を受診したにもかかわらず、生じていた症状に対して、他の疾患名がついてしまったりといった医療側の事情も語られていました。
・一般の検診ではやらない小腸と大腸の間にがんが出来てしまったために、発見が遅れた。(60歳代後半・男性)
今回のインタビューでは、1名の方が虫垂がんの診断を受けていました。虫垂は、大腸の一部である盲腸から垂(た)れ下がっている部分にあります。虫垂がんは、比較的まれな疾患であるため、他の大腸がんに比べて、治療の数や病気に関する情報が少なく、また、部位の関係から発見が難しいと言われています※2。この方も症状や異常な数値を示す腫瘍マーカーの検査結果が出ているにもかかわらず、発見にいたるまでに時間を要していました。原発性虫垂がんは、多くの場合、手術の前に確定診断を得ることは極めて難しいと言われています※3。学会誌などでは、急性虫垂炎との診断で手術が行われ、開腹した時点や術後の病理検査で、がんと診断されることも多いとの報告もあります※4。従って、お腹を開けてみるまではわからないというケースは、決してこの方に限ったことではないようです。
・あちこちの科を周ったが「検査の結果は異常なし」と言われ、それでも腫瘍マーカーの値が上がり続け、盲腸らしいと思って切ってみたら、虫垂がんだった(60歳代後半・女性)
本人と医療側の事情
ご本人と医療側との両方の事情で、発見までに時間がかかってしまったケースもありました。最終的に大腸がんが発見されるまでには、2つ以上の事情が重なっていたことが語られていました。
健康診断では、便の検査だけを受けておられなかったというご本人の事情に加えて、具合が悪くなり、医療機関を受診したにもかかわらず、症状の原因となっていた大腸がんが見つかるまでに時間を要していた方がいました。
・数年前から体調がすぐれず、いろいろな病院を受診したが、別の診断名がつき、なかなか大腸がんの診断までたどりつかなかった。(50歳代前半・女性)
自分の健康を過信しすぎて、ほとんど健診は受けていなかったという方がいました。実際におう吐の症状が出て受診した時には、腸ではなく胃の検査を受け、異常が認められなかったことから、なかなか大腸がんにたどりつかなかったと語られていました。
・おう吐が続く中、なかなか原因がわからず、いろいろな検査を受けた。紹介された大病院での検査中、モニターを見たら腸がふさがるほど大きくなっていた(60歳代後半女性)
【参考資料】
※1 大腸癌研究会(編):大腸癌治療ガイドラインの解説(2009年版)
※2 大津智,白尾国昭:稀少がんの臨床 (7)虫垂がん.腫瘍内科 2010;6(6)
※3 鈴木公孝:虫垂癌.武藤徹一郎(編):大腸・肛門外科,11章,2006
※4 稲荷均,熊本吉一ほか:術前に診断しえた虫垂癌の1例.臨床外科 2005;60(4)
発見 / がんと診断されたとき 記事数: 15
ここでは、大腸がんであることを知らされた時の状況と、ご自分が大腸がんであることを知った時の気持ちを、ご家族の反応もあわせてご紹介します。
診断の内容を伝えられた時の状況
“がんである”という事実が伝えられる時には、“告知”という言葉が使われ、社会でも広く浸透してきました。がんが不治の病と考えられていた時代は過ぎ去り、告知を希望する方も増えています※1。
また、医学の進歩により治療方針の選択の幅が増え、がんを患っていらっしゃる方々の価値観も多様化してきていることから、自分の病状を知り、受ける治療を自分の意志で選択することができるように、多くの場合、本人に告知されるようになってきました※2※3。
・紹介先の病院で、あっさりと、がんであることを告げられた。(50歳代後半・男性)
検査の結果、がんであったことを伝えられる時には、医師から単に病名を告げられるだけではなく、がんが、どこの場所にできていて、今、どのような状態にあるか、更には、今後の治療方針としてどのようなことが考えられるかといった見通しについてもあわせて説明されていました。
・検査直後に、いきなり、がんであることとステージ(進行の程度)が伝えられた。(50歳代前半・女性)
・進行した直腸がんであり、治療を急いだ方がよいことを伝えられた。(60歳代後半・男性)
・人工肛門になる可能性も含めて、結腸の下にがんがあることを伝えられた。(60歳代前半・男性)
中には、大腸がんが発見された時に、肝臓への転移も見つかっていた方がいました。医師から、その時の病状を説明してもらいながら、更に、今後の治療方針に加えて、ホスピスの話も伝えられていました。
・大腸は手術できるが、肝臓は転移していた腫瘍の数が多いので難しいと言われ、最終的にはホスピスへの移行もあることを告げられた。(60歳代後半・女性)
大腸がんかどうかを調べるための精密検査の1つに内視鏡検査があります。肛門から大腸内視鏡を挿入して大腸を内側から調べる方法で、ポリープや、がんを直接観察できると同時に、がんの疑いのある組織を採取し、病理検査に回して、がんかどうかを診断することができます※4※5。
(大腸がん検査に関する詳しい内容は、『がんを学ぶ-大腸がん』に掲載されていますので、ご覧ください)
今回のインタビューでは、検査中に治療を兼ねて内視鏡で切除したポリープが、がんであったと伝えられた方がいました。「検診で指摘された便潜血反応の結果を持って受診した病院で、ポリープだといわれてレーザーで切除したものが、病理検査の結果、がんであったことがわかって、どうしたら良いかわからなかった。」と語られていました。
治療を兼ねた大腸内視鏡や病理検査の後に、がんと診断された方がいる一方で、実際に外科手術を行った後に、がんであることを知らされた方もいました。
・医師から「腫瘍を取る」とだけ言われていたが、手術後に、がんであったことを伝えられた。(60歳代後半・男性)
盲腸だろうと言われて手術を行なったが、退院後の外来診察の時に、医師から、実は虫垂がんであり、播種(はしゅ)(種が播かれるようにがん細胞がバラバラと広がっている※6)の状態になっていたことを知らされた方がいました。
原発性虫垂がんは比較的まれな疾患であり、手術の前に確定診断を得ることは難しい場合が多く、急性虫垂炎との診断で、お腹を開けてみてはじめて、がんであったことがわかったという報告もあります※7。
・手術の結果は、かなり進んだ虫垂がんであった。手術後に相談に行った紹介先の東京の病院では地元での緩和ケアを勧められた。(60歳代後半・女性)
がんであることを伝えられた時の気持ち
“がんである”と告げられることは、誰にとっても決して良い知らせとはいえません。自分が、がんであることを知った時、多くの方が、その時の気持ちを「ショック」という言葉で表現されていました。インタビューの中では、予期せぬ出来事への心の動揺や、辛い状況の中にありながらも家族や医師に見せた思いやりの気持ちが語られていました。また、一方では、検査の結果を聴く前に、がんかもしれないということを予想していたために、あまり驚くことはなかったと語られていた方もいました。ここでは、がんであることを伝えられた時に湧き上がってきた、さまざまな思いが錯綜(さくそう)する中での語りをご紹介します。
・「がんですよ」と言われた時は、すごくショックで、「自分も終わりかな」と思った。(60歳代前半・男性)
・ポワンとなって頭が受け付けなかったが、夜になるにつれ怖さを実感し、パニックになった。(60歳代前半・女性)
がんと診断された時、ご自分がおかれている立場によって、異なった思いが湧き上がっていた方もいました。
・妻や子供のショックに比べたら、自分はそれほどではなかったとはいうものの、やはりショックだった。(50歳代後半・男性)
自分が病名を伝えられ、辛い思いの中にあっても、自分ががんであることをご家族が知った時の気持ちを考えたり、検査の結果を伝えてくれた医師の気持ちを思いやる方もいました。
・家族に何て言おうか考えながら、ひたすら事故を起こさないように慎重に運転して帰った。自分が思っていた以上に、家族のショックの方が大きかった。(60歳代後半・女性)
・自分の病状が相当に重く、肝臓にも転移しており、ホスピスとまで言われて驚いたが、その病状を伝える先生もつらかったと思う。(60歳代後半・女性)
医師から正式に病名を伝えられる前に、がんであることを予想していた方もいました。検査の結果を伝えられる時に、ご家族の同席をうながすような医師の言葉や、内視鏡検査の時にモニターに映し出された自分の腸内の画像の様子とその時の医師とのやりとりなどから、検査の結果を伝えられる前に、がんかもしれないと気付いていた方もいました。その語りからは、あまり驚くことはなく、覚悟を決めて、家族と共に淡々と説明を聴いていたり、逆に、ご家族を気遣って独りで検査結果を聴きに行ったなど、いきなり検査の結果を伝えられた方とは、少し違った反応が見られました。
・既に血便の症状もあり、予想していたので、びっくりもしなかったし、妻も説明をしたら納得していた。(60歳代後半・男性)
・覚悟をして、家族と一緒に医師からの話を淡々と聴いた。(60歳代前半・男性)
・医師の言葉や検査時の状況から「がんかもしれない」という予感があり、独りで結果を聞いた。その後、いきなり夫に伝えたので、かなり驚かせてしまった(60歳代前半・女性)
【参考資料】
※1 斎藤和好:わが国における癌告知とインフォームド・コンセントの現状.臨床外科 2005;60(9)
※2 問山裕二,楠正人:患者目線のがん医療:概論(インフォームドコンセントについて).日本臨床 2011;69(増刊号3)
※3 阪真,笹子三津留ほか:がん告知とインフォームド・コンセントにおける一般的留意点.臨床外科 2005;60(9)
※4 大腸癌研究会(編):大腸癌治療ガイドラインの解説(2009年版)
※5 藤田伸,島田安博ほか(監修):国立がん研究センターのがんの本-大腸がん:治療・検査・療養.小学館クリエイティブ.2011年
※6 国立がん研究センターがん対策情報センター(編著):患者必携-がんになったら手にとるガイド,第1版.学研メディカル秀潤社. 2011年
※7 稲荷均,熊本吉一ほか:術前に診断しえた虫垂癌の1例.臨床外科 2005;60(4)
治療 / 病院・医師・治療法の選択 記事数: 13
病気になったとき、どの病院に行くか、いい医師に出会えるか、治療法をどのように選ぶか、ということは重要な問題だと思われます。ここでは、病院や医師、および治療法をどのように選択したかについて、インタビューで語られた体験をご紹介します。
病院・医師の選択
今回のインタビューでは、複数の方が、最初にかかりつけ医や近所の病院を受診し、その後、総合病院やがん専門病院などを紹介されて転院したことを語っていました。
・はじめに受診した病院で大きい病院を紹介された。はじめの病院で検査を受け、検査結果を持たせてくれたのが、負担がなくてよかった。(60歳代後半・男性)
治療のための抗がん剤が国で使用が認められた病院でしか使えないため、転院したという方もいました。また、最初に受診した病院で、2つの総合病院を紹介されたという方もいました。どちらの病院にするか選ぶとき、この方は、受診したことがあってなじみがある病院の方を選んだそうです。
大きな病院である程度の治療が進んだ後、経過観察のために個人病院を紹介されたという方もいらっしゃいました。この方は、ご自分で転院を希望したわけではありませんでしたが、個人病院は土日もやっていて待ち時間が短くなったことなど、転院したメリットを感じていることを話されていました。
治療法の選択
大腸がんの治療は外科手術が中心といわれています。がんが外科手術で切除しきれないときや、あるいは、再発や転移の予防のために、抗がん剤や放射線の治療が行われる場合もあります。
今回のインタビューにご協力くださった方たちは、全員外科手術を受けておられました。ある方は、医師から手術について説明を受け、不安を感じましたが、どうしようもない、やるしかないと思って手術を受けることに決めたと語っておられました。
・手術中の容態悪化や転移の可能性をきいた。手術は避けられないし、やった方がいいと思った。(50歳代後半・男性)
ある方は、内視鏡で切り取ったポリープが、がんと診断されましたが、その後のPET(陽電子断層検査法)などの検査では、がんはみつからなかったそうです。ご本人は手術を受けたくないことを訴えましたが、医師に将来体が衰弱してから手術をするより体力のある今手術をするように説明され、親族にも手術を勧められて、手術を受けることを決めたと語っておられました。
外科手術の後、抗がん剤治療を受けていた方も複数いらっしゃいました。進行がんなので抗がん剤をやった方がいいと勧められ、どうしようかと迷った末、結局、医師と家族の会話を聞いて、抗がん剤治療をやることに決めたという方がいました。この方は、あとから本を読んで他の治療法があることを知ったそうですが、実際に治療を受けたときは、そうするしかないと思って応じたという心情を語っていました。
・進行がんは抗がん剤をやった方がいいと言われた。やったほうがいいのであればしなければならないな、死ぬよりはいいかなと思った。(60歳代前半・女性)
他に治療法がないために、抗がん剤治療を受けることを決めたという方もいました。大腸がんと同時に肝臓への転移を発見されたという方は、大腸がんを手術で切除した後、肝臓の腫瘍への治療として、抗がん剤治療を行う決断をしていました。
・延命はやってみなければ分からないと言われ、抗がん剤治療に応じた。(60歳代後半・女性)
また、再発や転移の予防のために抗がん剤治療を勧められ、粉薬か点滴にするかを選んだという方もいらっしゃいました。この方は、薬だと一生飲まなければならないという説明を受け、半年間、月2回抗がん剤を点滴で行う治療の方を選んだそうです。
治療法を選択することについて、医師に任せるほかないという思いを語っておられた方もいました。
・医師に任せるよりない。予算さえ合えば治療をしたい。(60歳代後半・男性)
一方、医師から勧められた治療でも、説明を聞いて応じなかったという体験も語られていました。医師に新薬を提案されたが選択しなかったという方がいらっしゃいました。
・新薬による治療を勧められたが、100人に1人は死ぬ可能性があるといわれ怖いのでやめた。(50歳代後半・男性)
セカンドオピニオン
セカンドオピニオンとは、患者が納得のいく治療法を選択することができるように、現在診療を受けている担当医とは別に、ちがう医療機関の医師に「第2の意見」を求めることです。国立がん研究センターがん対策情報センターでは、セカンドオピニオンとは担当医を替えたり、転院したり、治療を受けたりすることだと思っている方もいますが、そうではなく、ほかの医師に意見を聞くことがセカンドオピニオンであると説明しています。(国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報サービス「がんに関する用語集」より)
今回のインタビューでは、セカンドオピニオンという言葉を、転院することや医師を替えることだと捉えている方も中にはいらっしゃいました。ここでは、インタビューにご協力くださった方が「セカンドオピニオン」と捉えておられる体験を、そのままご紹介したいと思います。
虫垂がんと診断された方は、インターネットや家族の知り合いの医師を通して治療法を調べた結果、まだ治療法が確立されていないということが分かったそうです。東京に行けば症例があるのではないかと考え、東京の病院でセカンドオピニオンを受けていました。また中には、最初に受診した病院で、抗がん剤か人工肛門かと言われましたが、紹介状を書いてもらい受診した病院で、一時的ストーマ(人工肛門)と言われた人もいらっしゃいました。
・播種で、手術で全部切除できなかった。紹介状を持って東京の病院に行ったが、結局、化学療法しかなかった。(60歳代後半・女性)
セカンドオピニオンを求めなかった方からは、いくつかの理由が語られていました。
発見が遅れたため、セカンドオピニオンを受ける時間の余裕がなかったという方がいました。
・病院に行くのが遅過ぎた。セカンドオピニオンは考えたが、もう暇がなかった。(60歳代前半・女性)
一方、医師と相談したり自分なりに考えた上で、セカンドオピニオンを受けないと決めたという方もいらっしゃいました。受診した病院を全面的に信頼していたという方や、どこに行っても受けられる標準的な治療だと聞いて今の病院に決めたという方がいました。
・受診した病院を全面的に信頼していた。(60歳代前半・男性)
・医師と相談して、「どこにいっても同じですよ。」といわれたので今の病院に決めた。(50歳代前半・男性)
また、セカンドオピニオンを受けても、結局最初の医師に戻る可能性があるからセカンドオピニオンは考えなかったという方もいらっしゃいました。
・どこに行っても受けられる治療だから、結局最初の医師のところに戻る可能性が高いのでセカンドオピニオンは考えなかった。(60歳代後半・女性)
セカンドオピニオンを受けなかったという方の中には、主治医が自ら、他の医師に治療について意見を聞いてくれているという方がいました。医師同士でやりとりしてもらう方が、自分でセカンドオピニオンを求めるよりも効率がよいと感じているそうです。
・素人の私が聞き回るよりも、医師に任せていろいろ聞いてもらったほうが効率がいいと思った。(50歳代前半・女性)
セカンドオピニオンを受けることを考えなかった方の中には、機会があれば受けたかもしれないと語る方もいました。行きやすい病院が増えたり、セカンドオピニオンを受けることがより一般的になれば、希望する人がさらに受けやすくなるのかもしれません。
・セカンドオピニオンは全然考えなかった。そういう説明があったら行ったかもしれない。(60歳代後半・男性)
治療 / 術後の定期検査 記事数: 4
大腸がん治療の外科手術の後におこなわれる定期検査は、手術後の経過を見るためや再発や転移の有無を調べるために行われるものです。
今回インタビューに応じてくださった方も、定期検査を受ける中で、再発・転移が見つかった方がいました。ここでは、術後の定期検査を受ける前の気持ちと結果を聞いた時の気持ちも併せてご紹介します。
手術を終わって、経過を見るために、定期検査を受けられている人の中には、手術後5年たっても再発・転移がなく、その時の気持ちを、「喜びはひとしおだった」と語られていました。
・検査を受けて、合格するたびに「万歳」といっていた。最後に5年たってもういいですよと言われた。(60歳代前半・女性)
術後の定期検査は、はじめは1ヶ月、3ヶ月と、次第に間隔が空き、6ヶ月毎といった具合になっていくようです。そんな中で、一年半後の定期検査で肺への転移が発見された方もいました。
・術後の検診で、1年半後にPETを撮った時には転移がはっきりしなかった。しかし、その後のCT検査で両方の肺転移がわかった。(60歳代前半・男性)
また、定期検査は、安心感につながったと語られ、定期検査の結果肺への転移がわかった時も「人生のプラスになった。」と、肯定的に捉えていらっしゃる方もいました。
・年2回の定期検査で、生活の安心感が持てる。そして、定期検診で肝臓への転移がわかった。(60歳代前半・男性)
術後の定期検査は、がんの再発や転移の有無の確認のほかに、術後の経過を見るためにも行われます。今回インタビューに応じてくださった方の中にも、2年以上病状の変化(CT検査で転移を疑われている影の大きさの変化)を定期的に見て経過を追っていらっしゃる方がいました。
・本当に影かわからない。取りあえず定期検査は続けましょうと言われている。(50歳代後半・男性)
この他にも、定期検査を受けるために病院に行く場合の、通院時間や通院手段について語られた人もいました。
例えば、医師が患者への負担を考えて通常2回の検査日を設定されるところを、腸と胃の内視鏡を一度に予約をしてくれたので通院回数が少なくなったという方もいました。
また病院までの距離が近いことや車での通院ができるなどの通院のしやすさを語られる方もいました。
一方定期受診の楽しみを見出して、「病院に行った帰りには、ちょっと寄り道をし、病院の食堂で食事をする。」など語られた人もいました。
治療 / 抗がん剤治療 記事数: 10
抗がん剤治療は、化学療法、薬物療法とも呼ばれ、点滴や飲み薬などによって、抗がん剤を体内に入れる治療です。
抗がん剤治療は、外科手術の補助的治療法として再発・転移を予防するために行われる場合と、手術が不可能ながんや再発・転移のがんの進行を抑えるために行われる場合があります。がんの場所や性質によって、抗がん剤の種類や使い方は異なります。大腸がんで使われる抗がん剤の種類や使い方などの詳しい情報については、国立がんセンターがん対策情報センターがん情報サービス「各種がんの解説」などをご覧ください。
今回のインタビューでは、11人の方が、抗がん剤治療を受けていました。ここでは、抗がん剤治療を受けた経験を、「抗がん剤治療の流れ」、「抗がん剤治療を受けるときの気持ち」、「抗がん剤治療に伴う苦労」の順にまとめてご紹介します。多くの方が悩まされる副作用については、別に「抗がん剤治療による副作用」というトピックを設けましたので、そちらをご覧ください。
抗がん剤治療の流れ
ここでは、抗がん剤治療を受けることが決まってから、実際に治療を受け、終了するまでの間の流れをご紹介します。もちろん、抗がん剤治療の流れは人によって違いますが、治療の過程のおおまかな流れを追いたいと思います。
抗がん剤治療を開始する際には、医師からの説明を受けたという方が複数いました。また、手術を受けた外科から、内科に転科して抗がん剤治療を始めた方もいました。
・医師の勧めに従うような形で、抗がん剤治療を始めた。(60歳代前半・女性)
外科手術と抗がん剤治療を両方とも受ける場合、従来は外科手術を先に受ける場合が多かったようですが、今回インタビューに協力してくださった人の中には、外科手術の前にも抗がん剤治療を受けた方もおられました。
・手術を待つ間に抗がん剤治療を受け、手術の後にまた抗がん剤治療を再開した。(50歳代前半・女性)
抗がん剤治療は、週に1回、2週間に1回、また、何週間か受けたら1回休みなど、抗がん剤の種類や病状によって、治療を受ける頻度やペースが異なります。また、入院して抗がん剤治療を始め、その後は自宅から通院して外来で治療を受けるということもありました。
・抗がん剤は週に1回ぐらいだった。最初は入院で、後は通院で受けた。(60歳代前半・男性)
最初は看護師などから教えてもらっていましが、通院して外来で抗がん剤治療を受けるようになると、およそ2日間の抗がん剤の注入が終わったら、針を抜くなどの処理を自分でされていました。
・最初の入院でポートの針の抜き方を教わった。最初は不安だったが、すんなりできて不安は消えた。(60歳代後半・女性)
抗がん剤治療中、治療の効果を調べるための検査を受けることになります。検査の結果で抗がん剤の効果が認められない場合、その抗がん剤は中止となり、他の抗がん剤を開始していました。また、副作用が強すぎる場合にも、抗がん剤が中止されることがありました。
・副作用のために中断したり、効果がなくなって終了したりして、4種類ほどの抗がん剤を使ってきた。(50歳代前半・女性)
抗がん剤治療にまつわる気持ち
ここでは、抗がん剤治療を受けるときや終了するときの気持ちについてまとめました。事前に抗がん剤について耳にした知識から様々な不安をいだく方もいれば、前向きに闘病しようと決心する方もいて、いろいろなお気持ちを抱えて抗がん剤治療に臨まれる様子がうかがわれました。
苦しい抗がん剤治療がいつまで続くのか、先が見えないことがつらいというお話もありました。また、抗がん剤治療が終わったからといって、手放しで喜べるわけでもないという、がん経験者の複雑な気持ちも語られました。
・何かわからないものを3日間も入れる怖さや、副作用のことなど、最初は色々な不安があった。(60歳代後半・男性)
・抗がん剤治療がいつまで続くのか、わからない。早く終わってほしい。(50歳代後半・男性)
・副作用で死の不安を感じたが、残りの回数を数えながら頑張った。抗がん剤が終わったときは嬉しかったが、再発の不安は残っている。(60歳代前半・女性)
抗がん剤治療に伴う苦労と工夫
抗がん剤治療は、時間的にも体力的にも、大きな負担を伴います。ここでは、インタビューに答えてくださった方たちが、抗がん剤治療を受ける中で、どのようなことが大変だと感じたか、またそれに対してどのような工夫をして対処してきたかといったことについてご紹介します。
・抗がん剤治療の日は、9時から4時までかかるので、1日病院と仲良くするつもりで行く。(60歳代後半・男性)
抗がん剤治療を受ける中で最も悩まされるのは、副作用でした。副作用そのものについては、種類も多く、様々なことが語られたので、別のトピックでまとめてご紹介します。ここでは、副作用によって生じた日常生活の様々な不便に対処する工夫をご紹介します。
・副作用で冷たいものを触れなくなったが、手袋を使うなどの工夫をして、家事をこなしている。(60歳代後半・女性)
治療 / 抗がん剤の副作用 記事数: 12
このトピックでは、抗がん剤治療の中で特に悩まされる人が多い、副作用に関わるお話をご紹介します。
抗がん剤治療を受けると、多くの場合、何らかの副作用があらわれます。最近は、比較的副作用の軽い抗がん剤が開発されるとともに、副作用の症状を抑える方法も進歩しています。とはいえ、軽い副作用であっても日常生活に支障が出ることもありますし、重い副作用に悩まされる方もまだまだいます。抗がん剤治療を受ける中で、副作用とどのように付き合っていくかということは、多くの人にとって関心のある課題と思われます。
副作用の種類や重さは、使用する薬によって異なり、個人差も大きいようです。今回、インタビューに協力してくださった方は、血液の変化、末梢神経の障害、脱毛、味覚障害・嗅覚障害、だるさ・疲労感、爪・皮膚の変化などの副作用を経験されていました。また、初めは何ともなかったのに、だんだん副作用が強くなったり、症状が続く期間が長くなったりするという場合もあるようでした。
・抗がん剤の治療を続けるうちに、副作用の症状がおさまるまでの日数が長くなってきた。(50歳代前半・女性)
・はじめは副作用を感じなかったのに、3クール目から体のつらさや白血球の減少が出てきた。(60歳代前半・女性)
この後は、抗がん剤の副作用に関するお話を、症状ごとにご紹介していきます。ただし、実際は、同時にいくつかの副作用が出る場合が多いようです。次にご紹介する例の中でも、同時に複数の副作用に悩まされた経験が語られていました。
血液の変化──白血球の減少・貧血
抗がん剤治療を受けると、貧血、白血球や血小板の減少など、血液への影響があらわれることがあります。特に、白血球の減少は、頻繁に見られる副作用です。白血球が減ると、感染症の危険が高くなるため、白血球が減りすぎた時は、抗がん剤の治療を一旦お休みすることになります。
インタビューに参加してくださった方たちも、抗がん剤治療の前に受ける血液検査で白血球が減少していたために、治療を延期したことがあると話されていました。他にも、血小板が減少して出血がとまりにくい状態になっているため、怪我をしないように注意された方や、鼻血や歯茎からの出血を経験された方もいました。
・抗がん剤治療の前に血液検査をして白血球が減っていたりすると延期になる。2回ほど治療を受けられないことがあった。(60歳代前半・男性)
末梢神経の障害──指先・足先のしびれ・ほてり
抗がん剤の副作用として、指先や足先など、体の末端の末梢神経に影響が出ることがあります。手足の感覚が鈍くなるため、日常生活の中で手先を使う動きが不便になったり、常にしびれがあるなどの不快感がつきまとったりします。
今回のインタビューでは、しびれを訴えた方が多くいましたが、他に、「足の裏に水ぶくれができている感じ」、「足の裏がほてってくる」という症状が出た方もおり、副作用の出方は人によって違いがみられました。また、「(抗がん剤治療の終了後)半年ぐらいたつんだけど、また残ってる」というように、抗がん剤を中止した後も症状が続いているというお話がありました。末梢神経の障害は、温度と関係することが多く、冷たいものを触るとひどくなったりするようです。下に最初にご紹介するお話では、青森は寒さが厳しいので、冬になると症状が悪化するのではないかという心配をされていました。
・冷蔵庫から出した大根の冷たさが一番最初にピリッと来た。(60歳代前半・女性)
・冷蔵庫に物を取るために手を入れるだけで、手がしびれてくる。(60歳代後半・男性)
脱毛
今回インタビューに協力してくださった11人の方の中で4人の方が、脱毛について語られました。4人とも、髪はいったん抜けたけれども、抗がん剤をやめた後で、また生えてきたということでした。
・薬剤師はこの薬は「髪は抜けない」といっていたが、起きるたびにベッタリ抜けた。今は自毛になった。(60歳代後半・女性)
吐き気・食欲低下
抗がん剤治療の副作用として、吐き気や食欲低下も頻繁に起こります。今回インタビューに協力してくださった方たちの中には、強い吐き気で苦しんだ方もいれば、まったく吐き気を感じなかった方もいました。また、吐き気を抑える薬を併用しているというお話もありました。
・あまり一般的でない副作用があらわれたが、吐き気は一回もこなかった。(60歳代後半・女性)
味覚障害・嗅覚障害
副作用で味覚や嗅覚が変わってしまうこともあります。具体的には、味覚や嗅覚が麻痺して味やニオイを感じない、違う味・食感やニオイがする、好きな食べ物やニオイが変わるといったことがあるようです。
今回のインタビューでも、味覚や嗅覚の変化を感じたという方が複数いました。周囲の人から「これはおいしいよと言われても、何も味ないじゃないかって感じだった」というように、味を感じなくなることがあるようでした。また、味覚はある場合でも、治療前と変わってしまって、「食べたいものも違ってくる」、「砂糖が苦く感じる」という症状も経験されていました。
・抗がん剤の後1週間は、味覚がだめだったり、舌がピリピリ痛かったりが続いた。(50歳代前半・男性)
だるさ・疲労感
だるさや疲労感は、抗がん剤の副作用として頻繁に経験されるものです。
今回のインタビューでは、3人の方が、抗がん剤の副作用による、だるさや疲労感について語ってくださいました。これらの方たちは、だるさや疲労感だけでなく、同時に他の副作用にも苦しめられていました。また、手術で体力が落ちているところに、さらに抗がん剤治療を受けることによって、しんどさをより強く感じたというお話もありました。
・吐き気とだるさがあり、抗がん剤を注入している3日間もきついが、針を抜いた後の2日間は何もできないほどきつかった。(50歳代後半・男性)
爪・皮膚の変化
抗がん剤の種類によっては、爪や皮膚に様々な症状があらわれることがあります。多くの場合、命に関わるようなものではありませんが、痛みやかゆみなどの不快感があったり、外見が変化してしまったりして、本人にとっては非常に気になる症状だと思われます。
今回のインタビューでは、4人の方が爪や皮膚にあらわれた副作用についてお話されていました。片方の膝から下に、びっしりと湿疹が出てしまった方や、色素沈着で手指が黒ずんでしまった方がおられました。指先に出た副作用を治療するために、がんの治療とは別に皮膚科にも通っているというお話もありました。
・抗がん剤の種類によって、皮膚のただれの色素沈着があったり、爪が欠けやすくなったりした。皮膚科も並行して受診している。(50歳代前半・女性)
その他の副作用
抗がん剤の副作用は、人によって症状の種類や重さに違いがあります。ここまでご紹介した副作用以外にも、インタビューの中では、酷い口内炎や、便秘・軟便・下痢などの便の問題、全身の痛みなどを感じた人もいました。すべてはご紹介しきれませんが、ここでは2人のお話をご覧ください。
・口内炎ができて、歯磨きが少ししかできないほど痛かった。(60歳代後半・男性)
・医師が男性だったので言えなかったが、色々な副作用が出る中で、後産のような膣の痛みもあった。(60歳代後半・女性)
治療 / 外科手術 記事数: 16
大腸がんの手術は、出来る限り排便、排尿、性機能などを保ちつつ、がんが治ることを目指して行なわれます(「がんとどう付き合うか(大腸がん)」:がん研究振興財団 監修/国立がんセンター)。
結腸や直腸といった、がんが出来ている位置によっても、切り取る範囲が違ってきます。また、病状や手術の方法によっては、ストーマ(人工肛門)と呼ばれる便の排出口をお腹に造ることもあります。外科手術の詳しい内容については、当サイトの「がんを学ぶ」をご覧ください。
国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報サービスによると、大腸がんの治療は、手術による切除が基本であるといわれています。
今回のインタビューでは、11人全員の方が外科手術を受けられていました。ここでは、診断されてから手術を受けるまでにどの位の時間を、どのような気持ちで過ごされていたのか、そして、手術の内容、術後の経過、更には退院に向けての準備について、外科手術にかかわるお話をご紹介します。
手術までの待機時間
今回のインタビューでは、受診してから手術を受けるまでの期間に、即日から約2カ月といった開きがありました。待機入院をしていたり、検査や抗がん剤の治療を受けながら手術の日を待っていた方がおられる一方で、受診した当日に緊急手術を受けることになった方もいました。
・手術が決まるまで別の病院で1カ月待ち、手術を受ける病院で、更に約1カ月の間、検査を受けながら待っていた。(60歳代前半・男性)
・麻酔科医が不足していたため、一ヶ月間、待機していた。その間に、抗がん剤治療を受けた。(50歳代前半・女性)
中には、手術の日が予定よりも早まった方もいました。
・250番目と言われて、まだまだと思っていたら、急に手術日が早まった。心の準備ができていなかったが、今思えば、早まって良かったと思う。(60歳代後半・男性)
受診した日に、すぐに手術を受けていた方もいました。走るような痛みを感じて受診したところ、検査後の点滴を受けている最中に緊急手術をすることになった方や、救急外来を受診した時点で思ったより病状が進んでおり、そのまま入院して手術を受けた方もいました。
・救急外来を受診した時には、腹膜炎の状態になっており、そのまま入院して手術を受けた。(50歳代前半・男性)
手術を受ける前の気持ち
手術を受ける前には、不安と同時に覚悟や期待などといった、さまざまな思いを抱かれていました。
「体力的には乗り切れるだろう」という、手術前に医師からの説明を受けた時の気持ちをはじめ、手術の朝や手術室に向かっている時に湧き上がってきた思いが語られていました。
・悪いところを取れば回復するんだからという気持ちでいたので、恐くはなかった。(60歳代前半・男性)
・不安はあったが、やるしかない、うまくいけばいいなと思って手術室に向かった。(50歳代後半・男性)
手術の実際
ここでは、どのような手術を受けたのか、そして、手術が終わった後の気持ちも併せてご紹介します。
手術時間に関しては、早く終わったほうだといわれた2時間の方から、4~5時間、そして、早朝から夕方6時頃までかかった方とさまざまでした。
手術の様子については、複数の方が、まず手術直後にご家族だけが呼ばれて摘出したものを見せられ、ご本人より前に医師からの説明を受けたと語っておられました。
ご本人は麻酔で眠っていたため、後日、医師に説明してもらっていました。切り取った範囲や、つなぎ合わせた場所などを、レントゲン写真を見ながら説明してもらっている方もいました。
目で見た限りのがんは全て取ったことを説明され、後は、血液やリンパの中に入っている可能性があるかもしれないがんについての抗がん剤治療を勧められていた方もいました。
・やぶれた腸から汚物が散らばるのを盲腸が食い止めていたことが、手術後にわかった。(50歳代前半・男性)
大腸がんの発見と同時に肝臓への転移と胆石がみつかった方がいました。手術では、数が多いので難しいといわれた肝臓には触れずに、大腸がんと胆のうを切除されていました。
・大腸の手術の時に、医師に頼んで胆石の治療もしてもらった。(60歳代後半・女性)
今回のインタビューでは、11人中2人の方がストーマ(人工肛門)を造られていました。大腸がんの切除に加えて、ストーマの着脱に関する手術も受けられており、中には、合併症の治療や転移したがんの切除も含めると、4回の手術を経験されていた方もいました。
・大腸がんの手術、3日後に再手術、更に合併症のための手術、そして約1年後にストーマ閉鎖と転移したがんの治療で4度目の手術を行った。(50歳代前半・男性)
ご自分の手術後の状態を知った時のお気持ちも語られていました。手術前には、ストーマ(人工肛門)をつける可能性があることを説明されていたため、麻酔から覚めた時に、一番先に手をやって確かめたら付いていなかったので、ホッとしたという方もいました。一方で、歩けるようになった頃に医師から受けた、がんの進行度についての説明を聴いて、ショックを受けられていた方もいました。
・がんを取ったから、もう治ったと思っていたのに、残念ながら進行がんだったといわれてショックだった。(60歳代前半・女性)
大腸内視鏡で切り取ったポリープが、病理検査の結果、がんと診断された方がいました。
温泉に行った後、再度、PET(陽電子断層検査法)などの検査を受けたところ、その時はがんは見つかりませんでした。がんがないなら手術は受けたくないと訴えましたが、医師に説得されて手術を受け、人工肛門も造りました。結局、摘出した臓器からも、がんはみつかりませんでした。
ご本人は温泉ががんに効いたと考えておられるようですが、温泉のせいなのか、内視鏡で採りきってしまったからなのか、がんが見つからない明確な理由はわかりません。しかし、病理検査の結果ががんではなかったということに対しては、喜んでおられました。
手術後の経過
手術後の回復の状態には個人差があり、さまざまな経過をたどられていました。
順調に回復されたと語られる方がいる一方で、合併症などの症状が現れた方もいました。
抗がん剤の治療もなく、手術してから1カ月後に退院し、自分では完全に治ったという気持ちでいたけれど、普通の生活に戻るまでに約6カ月かかったという方もいました。
また、手術後、吐き気以外は特にトラブルもなく、1カ月後には大腸がんが発見された時に既に転移が見つかっていた肝臓の治療のために消化器科へ移ったという方もいました。
・手術後は貧血もなくなり、体がすごく楽になった。(60歳代前半・女性)
中には、術後に、いろいろな症状が現れた方がいました。ICU(集中治療室)にいる時に合併症が発見され、緊急手術を行った方もいました。
・術後心筋梗塞になり、緊急手術を行なった。人工呼吸器のために話すことができなかった。回復して歩けるようになり話ができるようになった。(50歳代前半・男性)
手術後に、記憶がうすれている中で、幻想のようなものを見た方もいました。
意識がもうろうとする中で思考が乱れたり、幻想といって存在しないものが見えたり、現実的にあり得ないような事柄を事実であると確信してしまう妄想などの症状が出現する、一過性の精神状態で術後せん妄といわれるものがあります。
・合併症の手術の後、幻想みたいなものを感じたが、1週間ぐらいで消えた。(50歳代前半・男性)
退院後、1度だけ緊急で受診したことがあるけれど、それ以外の症状は落ち着いていたという方もいました。
・夜間にお腹が痛くなり、緊急受診をした。腸が詰まり気味だったが腸閉塞にはならなかった。(50歳代前半・男性)
術後の早期離床
手術後、横になっている状態が続くと合併症が起こりやすくなったり、起き上がることが困難になってしまうこともあります。そのような状況を予防して、少しでも早く日常生活に戻ることができるように、手術後の早いうちから座ったり、立ち上がったり、歩いたりする動作を行うことを早期離床といいます。
お腹を切った直後は、体に管がたくさん入っているため、歩くことはおろか、なかなか動くこともできない状態であったことを、数名の方が話されていました。インタビューでは、起き上がって、1回目の便を出す時のご苦労や、歩く練習をしている時のご様子が語られていました。
・開腹手術の直後は、起き上がることができず、1回目の便を出す時は、精神的にも大変だった。(60歳代前半・男性)
今回のインタビューでは、手術後のつらい状態の中でも、早いうちから歩く練習をされていた方が複数いました。術後3~4日で歩き始めて、約2週間で退院された方、また、2回目の手術で段取りがわかっていたこともあり、ご自分の体調に合わせて無理をせずにマイペースで歩かれて、約1カ月後に退院された方もいました。
・歩かないと治らないからといわれて、管を付けたまま、点滴を持って、手術後3~4日目から歩く練習を始め、約2週間後に退院した。(50歳代後半・男性)
治療 / 補完代替医療 記事数: 3
最近は健康志向ブームの中で、日常生活における健康食品の活用や健康維持増進へのさまざまな試みへの関心が高まっています。がん治療を受けている人の間にも、病院での治療に併せて健康を増進し、自然治癒力を高めるために、相補代替療法への関心が高まっています。
相補代替療法には、例えば、鍼灸、気功、免疫療法、健康食品、ハーブ療法、温泉療法、心理療法、食事療法などさまざまなものが含まれます。
今回インタビューに応えてくださった方で、相補代替療法をおこなっている方は3人でした。その中には、漢方薬の処方を受けた人、温泉療法を行った人、食事療法の本を参考にして、健康に良い食品を食べるように心がけたり、避けた方がよい食品を避けたりして、自分のできる範囲の食事療法を取り入れている人がいました。
漢方薬
補完代替医療の最も代表的なものである漢方薬は、がんのみならず多くの病気に用いられます。最近では、保健医療の範囲で使用できる薬も多くあります。家族からの勧めで、健康増進のために、治すためでなく体力をつけるために医師から処方を受けた人もいらっしゃいました。
・乳がんの経験のある妹がずっと使っている漢方薬を処方してもらった。(60歳代後半・女性)
温泉療法
日本には、昔から随所に、「…に効く温泉」と言われる場所が沢山あります。最近は、特に温泉ブームが高まり身近な日帰り温泉にも「…に効く」と効用書きがされているのを目にします。がんになった人も、「…温泉は、がんに効く」と勧められて温泉に行っていらっしゃいます。実際に温泉入浴の後の検査で、がんが見つからなかったと体験を話されている人もいました。
・病気に勝とうと思って、皮膚に効くという熱い風呂や、八甲田の硫黄温泉に行った。(60歳代前半・女性)
食事療法
補完代替療法の一つに食事療法があります。娘の姑さんから贈られた『食事でがんが消える』という本を参考に、控えた方が良いという食品を避けて、良いと言われている食品をとるようにして、自分にできる食事療法を取り入れている人もいました。「食事療法」として意識していない場合もありますが、日常生活のなかで、食事に関して気をつけているという方が他にも複数いらっしゃいました。食事に関して語られたお話は、【生活】の<病気になってからの生活習慣や気晴らし>にもご紹介していますので、そちらも併せてご覧ください。
・食事療法の本に書いてある悪いものは取らないように心がけ、良いといわれている鶏肉と卵とか、大豆食品とかを取るようにした。(60歳代後半・女性)
治療 / 医療者との関わり 記事数: 13
がんの治療を受ける中で、患者は医療者(医師や看護師など)と日常的に関わっていくことになります。ここでは、医療者との関わりについて、インタビューで語られたお話をご紹介します。
治療について説明を聞く
病院で治療を受けるとき、患者は、医師や看護師から治療についての説明を聞き、納得した上で治療を受けることになります。説明を理解するために、患者が自分から質問をして、やりとりをすることが時に必要だと考えられます。インタビューでは、自分の質問に対し、医療者がていねいに答えてくれたことを「ありがたかった」と語っておられた方が複数いました。自分からはなかなか質問しづらいと感じていた方も複数いらっしゃいました。その方々は、医療者が、こちらから聞く前に説明してくれたり、こちらが質問しやすい雰囲気をつくってくれていたことがありがたかったという思いを語っていました。
・何かあったら聞いてと言われてありがたいと思った。無知なので何を聞けばいいんだか分からなかった。(60歳代前半・女性)
一方、インタビューに協力してくださった人の中には、治療の方法や予後に関して十分な説明をしてもらえなかったと感じている方がいらっしゃいました。外科手術を全身麻酔で行うことを聞いておらず、手術の直前に知ってショックを受けたことや、治療についての基礎的な情報を事前に説明してほしかったという思いが語られていました。また、手術後にトイレが近くなり、困って医師に話したら、年齢的に完全に回復することは難しいと、そこで初めて説明された人もいらっしゃいました。
・抗がん剤の期間や副作用などについて、基礎的なことを教えてもらえた方がよかった。全部はじめての体験だった。(50歳代前半・男性)
医療者の説明に対し、不満を感じた体験も語られていました。転移が発見されて受診した呼吸器科の医師の言葉に「ムカムカときた」ことや、医師に質問をしたときの対応に不満を感じたことが語られていました。
・「がんを取ってどうするの?またすぐ出たらどうするの?」などと言われてムカムカときた。(60歳代前半・男性)
・同じ治療をして金額が違うようだったので質問したが、「どうなのかね」と言うだけだった。医療者が足を運んだり聞いてみてほしかった。(60歳代前半・男性)
入院・通院中のやりとり
入院中、医師が顔を見せてくれたことが励みになったと、複数の方が語っていらっしゃいました。1日1回医師が回ってきてくれたという方や、朝・昼・晩と医師が顔を出してくれたという方など、頻度や回数は人によって異なっていましたが、忙しい医師への感謝の気持ちが語られていました。
・執刀医が朝、昼、晩と私のところに来てくれたのが、励みになった。(60歳代後半・男性)
治療中に気になることや症状に関する医療者とのやりとりについても語られていました。入院中、それほど強い痛みでなくても痛み止めを頼むなど、自分の「わがまま」に医療者が応じてくれたことや、ストーマについての相談に看護師が応じてくれたこと、抗がん剤治療の副作用への対処を医師がさりげなく見てくれていたことなどが、感謝の気持ちとともに語られていました。
・みんな良くしてくれて家族に近いようなあんばいで、結構わがままも聞いてくれた。(60歳代後半・男性)
・抗がん剤の副作用への対処の仕方について、医師がさりげなく気をつけて見ていてくれた。(60歳代後半・女性)
治療の経過がよいとき、医師がほめたり喜んでくれることが励みになったという方が複数いらっしゃいました。医師が検査結果を見て「すごくおだてるのでその気になった」と語る方や、結果を見た医師の笑顔が励みになったという方もいました。
・医師も告知をするのはつらかっただろうが、最近、がんが小さくなったことを笑顔で喜んでくれたのを見て、これで良かったと思っている。(60歳代後半・女性)
医師や看護師が声をかけてくれたり、優しく接してくれたことが、「治さなければ」という気力につながっていたと語る方もいました。
・声を掛けてもらうとか、やさしい人たちに接したら、治さなければだめだという気力が沸き起こってくる。(60歳代後半・男性)
がんの治療では、入院や通院などが長期にわたる場合があります。インタビューでは、医師や看護師とのつきあいが長くなってくると、お互いの理解が深まっていくことが語られていました。
・1年も通うと、緊張感がなくなり医師と話がしやすくなった。(60歳代前半・男性)
・最初はとっつき悪かったが、ジョークを言ったり、からかったりできる関係になった。(50歳代前半・女性)
診察について、複数の方が、患者の話をもっと聞いてほしいという思いを語っていらっしゃいました。患者としては、検査の結果に表れない症状や気になっていることを話したいと思っているとのことです。医師が、検査結果だけを診て大丈夫だと言ったり、積極的に治療のことを説明したりするだけで診察が終わってしまうことへの不満の気持ちが語られていました。
また、入院生活の中で、医療者のアドバイス(指導)が一貫しておらず、とまどった体験も語られていました。
・医師と看護師のアドバイスが違っていて、とまどったことがあった。(50歳代前半・女性)
また、入院中の医療者の何気ない言葉に嫌な思いをしたという体験も語られていました。ある方は、携帯電話を使用できるか質問したとき、看護師から「あ、だめだめ」と言われ、看護師の口調や態度がそっけなく感じ、嫌な気持ちになったそうです。言われていることがたとえ正くても、伝える側の口調や態度などが、受けとる側の気持ちに影響を与えてしまうこともあるようです。
医師に対して気を遣うというお話もありました。主治医に何か言うと自分が粗末にされるのではないか、転院したことで気分を害してしまったのではないか、と不安を感じていることが語られていました。
・主治医に何だかんだ言ったら自分が粗末にされるのではないかと不安で、気を遣う。(60歳代前半・男性)
再発・転移 / 再発・転移の発見 記事数: 6
再発とは、「治ったと思われていたがんが、再び出現すること」、転移とは、「がん細胞が血管やリンパ管を介して、身体のあちこちに飛び火すること」です。大腸がんは、肝臓や肺・骨盤内に転移する場合が多いとされています。また、がんをとり除いた部位に再発がおこることもあります。
ここでは、大腸がんと診断されて治療を開始してから、再発や転移をした人の体験談をまとめました。
今回のインタビューでは、再発・転移は症状があらわれてから発見されるより、むしろ大腸がんの手術の後の、定期的な検査を受けるなかで発見されていました。治療のカテゴリーのトピック<術後の定期検査>にも、術後の定期検査の大切さを語ってくださった方の体験談をご紹介していますので、あわせてご覧ください。
再発・転移の診断は、始めからはっきり再発や転移が診断される場合と再発・転移の疑いが説明されて、経過を見られる場合があるようです。今回インタビューに応じてくださった人の中には、転移の疑いがあると説明され、抗がん剤治療を受けながら経過を見ている方が複数いました。
・大腸がんと同時に肝臓に転移が見つかり、その後子宮にも腫瘤が見つかり炎症といわれているが、がんに移行するかもしれない。(60歳代後半・女性)
・手術後約1年経過した。今度はCT検査で肺転移の疑いがあるといわれて、今は抗がん剤を続けて様子を見ている。症状は全くない。(50歳代前半・男性)
手術の1年半後の検査で転移の疑いがあるといわれて、他の病院で詳しい検査を受けた結果「がんは無い」と一度は否定されたにもかかわらず、その後の検査で肺への転移が発見されたた方もいました。
・PETでは、がんはないと言われたが、その2カ月後にCT検査で左と右の肺転移がわかった。(60歳代前半・男性)
その他、はっきり転移と診断はされませんでしたが、手術の時の「がんの取り残し」という説明を受けたと語られる人もいました。
・他の病院にPET検査を受けにいき、リンパ節に影が見つかった。主治医からは転移ではなく、手術の時に取りきれなかったと説明を受けた。(50歳代後半・男性)
更に、外科手術の後の詳しい検査の結果、手術前の診断とは異なる場合もあるようです。手術前には盲腸の手術をすると思い手術を受けましたが、退院後20日目の診察の際に、お腹全体にがんが広がった播種(はしゅ)転移であったことを知らされた方もいました。
・盲腸の手術をうけたつもりだったが、退院後に虫垂がんであったこと、既に「播種(はしゅ)転移」をおこしていることを告げられた。(60歳代前半・女性)
がんの治療は一般的には、5年を目途に治癒と判断されていますが、今回インタビューに応じてくださった方の中には、はじめて大腸がんの手術を受けてから、7年目に肝臓への転移がわかった人もいました。
・初めのがん治療後7年目に、CT検査で肝臓に転移していることがわかった。(60歳代前半・男性)
再発・転移 / 再発・転移を告げられたときの思い 記事数: 4
がん治療を受けている人の多くは、再発や転移の不安のある中で日々を過ごされています。そして、再発や転移がわかったときには、多くの人が「なぜ」と思ったりショックを受けたりすることもあると思われます。ここでは、再発・転移を告げられた時の思いをご紹介します。
なお、大腸がんの診断を初めて受けると同時に、転移を告げられた人の語りは、【発見】<がんと診断された時>の項でご紹介していますので、ご覧ください。また、再発・転移を知らされて、その後どのようにがんと向き合っていくかということに関する語りは、【がんと向き合う姿勢】のトピックでご紹介していますので併せてご覧ください。
がんの転移が疑われても、自覚症状があらわれないこともあります。がんは、目に見えないから、どう対応してよいか誰にも分からないという気持ちを語ってくれる方がいました。
・がんは見えないから、どう対応したらいいか分からないし、色々考えても仕方ない。(50歳代前半・男性)
再発や転移は、いつ発見されるか分からないといった不安があります。そういった中で、再発や転移を知らされて驚いたり、ショックを受けたりしたと話される方が複数いました。
・3か月前にはなかったのに、少しの期間で大きくなっているとビックリした。(60歳代後半・女性)
・再発はないと言われたのに再発があった。これで終わりかなとショックだった。(60歳代前半・男性)
一方、最初の手術後7年目に肝臓への転移が発見された方もいました。その時の気持ちを、大抵の人は再発や転移が発見されることを怖がりますが、早く発見して治療をしようという前向きに生活されて積極的に検査を受けたと語られています。
・転移を告げられたときは、早く発見して治療すれば、早く治るという前向きな気持ちだった。(60歳代前半・男性)
病気との向き合い方 / がん経験者としてのメッセージ 記事数: 8
インタビューの中では、がんの経験者という立場から、医療や青森県に対する要望や期待についてもお話しいただきました。また、現在治療を受けている方や、将来がんになるかもしれない人々に対する助言や励ましなども、聞かせていただきました。今回のインタビューに応じてくださった方たちからのメッセージを、このトピックの中で発信したいと思います。
医学・医療に対する要望
がんになって出会う様々な困難の中には、現在の医学界や医療保健制度に由来する問題も含まれます。インタビューでは、こうした問題点の指摘とともに、要望や期待について語られました。具体的な改善の希望を語られた3人の方のお話をご紹介いたします。
・病気になると不安になるので、気軽に相談できるようなところがあるのはいいと思う。かかりつけ医もいた方がいい。(50歳代後半・男性)
・がんに関する情報をもっと公開してほしい。抗がん剤の認可にかかる時間を短縮してほしい。(50歳代前半・女性)
・小腸の方まで検査をしてくれていたら、もっと早く見つかったはず。今後は小腸も検査の対象に入れてほしいと個人的に思う。(60歳代後半・男性)
県に対する要望・期待
青森県は、人口に対するがんによる死亡者の数が全国で最も多く、がん検診の受診率は全国平均以上ではあるものの、3割にも満たないことがわかっています。(厚生労働省(2008年)「平成18年度地域保健老人保健事業報告の概況」より)
インタビューでは、受診率を上げるために、青森県が積極的なはたらきかけをしてほしいという要望が語られました。また、経済的な対策を頑張ってほしい、ホスピスを増やしてほしいといった期待も聞かれました。がんで亡くなる方を減らすために、がん患者がよりよいケアを受けるために、県に対する期待が大きいようでした。
・がん検診の受診率が上がるように、他県の制度も参考にして県が工夫をしてほしい。(50歳代前半・男性)
・経済的な問題で十分な治療を受けられていない人がいる。県として経済的な問題に取り組んでほしい。(60歳代後半・男性)
・今は、近くにホスピスがない。通っている病院にもホスピスを設置してもらいたい。(60歳代後半・女性)
がん患者へのメッセージ
インタビューでは、他のがん患者の方たちへのメッセージも語られました。ご自分のがん経験を通して、こうした方がいいと自分は思うといった助言や、自分も大丈夫だったからきっと大丈夫といった励ましなどを、ここでご紹介いたします。
・以前は、がんになったら終わりというイメージを持っていたが、今は、再発しても、こうして無事な自分を見なさい、大丈夫、と言いたい。(60歳代前半・男性)
・医師を信じること、早く治したいという気力をもつことが大事。(60歳代後半・男性)